「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められていますか? 厚生労働省『国民生活基礎調査の概況』(2022年)や総務省『家計調査年報』(2022年)とともに、高齢者世帯の支出について見ていきます。

高齢者世帯の所得「年間318万3,000円」…

厚生労働省『国民生活基礎調査の概況』(2022年)によると、65歳以上の者のいる世帯は2,747万4,000世帯。全世帯の50.6%と半分以上を占めており、「高齢化社会ニッポン」を身をもって痛感する数値となっています。

高齢者世帯の所得状況を見てみると、年間平均・318万3,000円。60歳~69歳の1世帯当たりの所得平均は589万4,000円、世帯人員1人当たりの平均は259万7,000円です。70歳以上では、1世帯当たりの所得平均391万2,000円、世帯人員1人当たりの所得平均は194万6,000円となっています。

所得状況の内訳を見ていきましょう。318万3,000円のうち、公的年金・恩給は199万9,000円。全所得の6割以上を占めています。いわゆる働いて得るお金、稼働所得は年間が80万3,000円。そのほか、財産所得が17万2,000円、年金以外の社会保障給付金が1万8,000円、仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得が19万円となっています。

老後も働いてお金を稼いでいる人がいる一方で、「所得が公的年金・恩給だけ」の高齢者世帯は全体で44.0%にも上っています。現在、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、14万4,982円。 国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、5万6,428円(新規裁定者は5万3,615円)ですから、月々20万円をもらっていたら、「御の字」といったところです。

上記はあくまで理想のケース。新卒から定年まで勤め上げ、年金をしっかりと払っていれば受け取れる受給額ではありますが、人生100年時代、働いてない期間があったり、生活の事情により年金を納めていなかったり……といった事態は当然起きています。

実際、満足な生活は送れているのか? 高齢者世帯の消費支出状況を月別に見ていきましょう。

夫婦でも単身でもキツい「赤字生活」…家計圧迫の正体

2人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯について見ると、可処分所得は65歳~69歳が23万7,121円、70歳~74歳が22万4,737円、75歳以上が20万5,544円となっています(2022年 家計調査年報)。65歳~69歳では4万2,889円、70歳~74歳では2万4,852円、75歳以上では1万5,266円の赤字が発生しています。

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)について見ると、可処分所得は12万2,559円となっています。一方で消費支出は14万3,139円となっており、毎月「2万580円」の赤字が発生していることが明らかになっています。

2人以上の世帯、単身者世帯ともに、消費支出のもっとも大きなウエイトを占めているのは食費。2人以上の世帯は6万7,776円、単身者世帯は3万7,485円と、それぞれ3割弱を占めています。

さらに家計を圧迫しているのは、非消費支出。直接税社会保険料といった、節約しようがない負担です。2人以上の世帯では非消費支出が3万1,812円、単身者世帯では1万2,356円となっています。

自助努力の末の「資産形成」…投資信託などが人気だが

国民皆保険制度の日本社会。病気になったり、怪我になったりしたときの手当は厚いものですが、「万が一」に備えた結果、日々の暮らしが厳しくなってしまうのは、なんとも辛いものがあります。

高齢になってからも豊かに過ごそうと、現役世代の間では投資信託をはじめとした資産形成が注目を集めていますが、総じていえるのは「長期勝負」であるということ。FXや暗号資産でリスクを賭けて大儲け……とは基本的に対をなす投資ですから、はじめの数年は「思ったより増えない!?」と驚かないよう注意する必要があります。

「穏やかな老後」。それすらも、危ぶまれている日本社会。高齢化が進むなか、自助努力をするほかない現実は、全世代の人々を苦しめています。

(※写真はイメージです/PIXTA)