「ほぼ完成」と「まだまだ工事中」に分かれています。

堺市側が工事最盛期

大阪府南部を縦断する南海本線で、堺市から高石市にかけて高架化事業が行われています。

南海本線は、ターミナル駅なんば駅から、堺市中心部の堺駅を越えて、石津川駅まで高架済み。そこから地上区間となります。諏訪ノ森・浜寺公園・羽衣・高石の4駅を高架化します。

開始と進行が早いのが高石市のほうで、1997年に事業認可し2005年に着工。すでに2021年に完成しており、あとは羽衣駅から分岐する短い「高師浜支線」の分岐部を仕上げる作業くらいです。それも4月上旬には一段落し、高師浜支線は2年間のバス代行から復帰します。

いっぽう、工事が最盛期となっているのが、堺市側。営業中の線路を脇にどんどん移設していき、空いたスペースを更地にして、そこに橋脚を立てています。諏訪ノ森駅の南側から、今まさにニョキニョキと橋脚が天へ伸びている途中です。高架駅の形が見えてくるのは、まだ先になりそうです。

工事の今は

ところで、堺市側で高架化される諏訪ノ森・浜寺公園の両駅とも、ちょっと変わった特徴を持っていました。高架化でそれが「普通の駅」になってしまいます。

まず諏訪ノ森駅ですが、上下線のホームが踏切を挟んで、互いに反対側の位置にあります。一見すると、片方にしかホームが無いように見える不思議な駅です。奥羽本線の上飯島駅や、名鉄名古屋本線島氏永駅えちごトキめき鉄道筒石駅など数えるほどしかありません。諏訪ノ森駅の場合、1966年までは普通に向かい合った形でしたが、ホームを拡幅する際にスペースが確保できず、しかたなく互い違いにしたといいます。

その不思議なホーム配置も、高架化工事に伴って、まもなく見納めになりそうです。高架を建造するため、線路をいったん西側へ移設していきますが、なんば方面のホームは同じ位置で後にバック済み。いっぽうの和歌山方面のホームは、そろそろ工事用地のために明け渡さなければなりません。なんば方面と同じ位置に仮ホームが既に用意されていて、まもなく切り替えられる手はずとなっています。その時点で「千鳥配置」の歴史は終わります。

浜寺公園駅は待避線があって、各駅停車が優等列車の通過待ちをする構造でした。しかし、なんば方面は特殊な形をしており、本線ホームの端部が奥にへこんで、そこで線路が分岐して待避線のりばとなっているのです。似たような構造は京急蒲田駅などくらいしかなく、レアな風景です。

こちらは残念ながら、2022年5月に諏訪ノ森駅と同じく、なんば方面ホームは背中側の仮ホームへ移設。旧ホームは消滅してしまいました。ごく普通に「島式ホーム」形状で本線と待避線を持っていた和歌山方面のホームも、新ホームへまもなく移設されます。

工事中の諏訪ノ森駅を発車する電車(乗りものニュース編集部撮影)。