アイドルから俳優へ。静かに、でも着実に、その才能を発揮している森田剛。2023年12月20日より配信中の実写とアニメの2つの世界を舞台としてディズニーが制作した日本発のファンタジードラマ「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」では、後半戦からキーマンとして存在感を放ち出した。今回は見る者の心を捉えて離さない森田の俳優道をたどる。(以下「ワンダーハッチ」ほか出演作のネタバレを含みます)

【写真】もうすぐ45歳!佇まい、雰囲気から大人の色香漂う森田剛

■アイドルデビュー前に俳優デビュー

アイドルグループ・V6のメンバーとして活躍し、圧倒的なセンスが光るダンスとともに多くのファンを魅了してきた森田。

俳優としては、グループ結成前となる15歳の時に「半熟卵」(1994年フジテレビ系)でドラマデビューを果たす。その後、大河ドラマ「八代将軍吉宗」(1995年)に続いて、「毛利元就」(1997年、ともにNHK総合ほか)では主人公の少年時代に抜てきされ、その期待に応えるように熱演した。

V6としての主演作「Vの炎」(1995年フジテレビ系)や、「ひとつ屋根の下2」(1997年フジテレビ系)、V6のメンバーである三宅健、岡田准一との年少組ユニット・Coming Centuryの主演作「PU-PU-PU」(1998年TBS系)など出演を重ねる中で、転機の一つとなったのが「ランチの女王」(2002年、フジテレビ系)だろう。

同作で森田は、ヒロインの元カレ役に扮(ふん)した。麻薬関連で警察に追われている、気が短く暴力的な男を体現して視聴者をゾクッとさせつつ、でも実はヒロインのことを思っていて、最後に人の優しさに触れて涙を流す展開へと至り、終盤からの出演ながら鮮烈な印象を残した。

■舞台出演でも積み上げた演技力

舞台にも活躍の場を広げ、2005年には劇団☆新感線の舞台「荒神~AraJinn~」で主演を務め上げた。その後、2008年に新感線プロデュースのいのうえ歌舞伎☆號「IZO」でタイトルロールである幕末の武士・岡田以蔵を好演し、演出家として鬼才といわれた故・蜷川幸雄氏による「血は立ったまま眠っている」や、2011年には宮本亜門演出の「金閣寺」主演でニューヨーク公演も経験するなど、人気劇団や大物演出家の下で演技を磨き、観客を魅了した。

舞台だから、映像だからと言い切れるものではないが、観客の目の前で演じ、感情を届ける舞台での経験は、きっとその力に大きなものを蓄積したはずだ。

■異彩を放つ闇を抱えた演技

平清盛」(2012年、NHK総合ほか)で3度目の大河ドラマ出演を果たすなど、舞台と映像の両方にコンスタントに出演していった森田。2016年には、ファンに大きな衝撃を与えることになる主演映画が公開された。「ヒメアノ~ル」だ。

古谷実による漫画が原作の同作で、森田は映画では初の単独主演を飾った。その役柄はサイコキラー。カフェ店員を付け狙い、その中でどんどん殺人を犯していく。まるで息をするように、淡々と。その怖さは背筋が凍るどころではない。高校時代にいじめに遭い、正常な精神が崩れていかざるを得なかったという悲しい過去を持つキャラだが、心の奥に潜んでいたサイコパスなところが前面に出たすさまじさに圧倒された。アイドルとして華やかなステージに立つ一方で、俳優としての胆力を備えていたのだから、見る者の驚きもより大きなものとなったのだろう。

2021年11月1日にV6が解散すると同時に森田は事務所を退所。それから間もなく公開された映画「前科者」(2022年)では、有村架純演じる主人公の保護司がサポートする元受刑者役で出演。“闇”の部分に揺れ動く人物で、怪しさを感じさせ、鼻水を隠さない号泣シーンへと、熱のこもった演技を見せている。本作では単なる“闇”ではなく、森田が目の奥に宿す優しさもポイントになっていることを付け加えておきたい。

■新作ドラマでは物語のキーマンの一人を担う

こうして俳優としての道を歩み進めてきた森田の最新作「ワンダーハッチ」は、実写で描く現実世界「横須賀」と、アニメで描くドラゴンが棲む異世界「ウーパナンタ」が舞台のオリジナルファンタジー。現実世界の女子高校生ナギと異世界から来た少年タイムが運命的に出会い、やがて互いに協力しながら世界の危機に立ち向かっていくという物語だ。

ナギ役を清涼飲料水のCMやファッション雑誌などのモデルとして活動する中島セナ、タイム役を2023年7月期のドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ系)などで頭角を現している奥平大兼が務めている。

森田は現実世界の謎のコンビニ店員・柴田という役だったが、1月3日に配信された第5話で、実はウーパナンタの住人、スペースであることが分かった。ある悲しい過去を背負い、現実世界で遂行すべき秘めた目的を持つ。そう、森田が得意とする“闇”が放たれる。

とはいえ闇の演技ばかりではない。太平洋戦争(第二次世界大戦)中のアナウンサーを描いた主演ドラマ「アナウンサーたちの戦争」(2023年、NHK総合)で、森田について共演した橋本愛が「お芝居を間近で感じたときに圧倒されて」と語り、高良健吾も「常に現場で撮影している時からすごいなと思っていて、ドラマとして完成した時に何倍も輝いていて」と称賛するような力があってのことである。

1月17日に配信された第7話では、新田真剣佑が演じるアクタと激しいアクションシーンを披露。CG演出も効果的に使われた本シーンについて、SNSでは視聴者から「戦闘シーン、めちゃカッコ良いです」「アクション最高」「映像がすごい」などと反響が寄せられた。

2023年12月11日に行われた配信記念ワールドプレミアに登壇した森田は、アクションについて「ヒーヒー言いながら頑張っていました」と裏側を明かしつつも「泥臭く、パワフルに」とコメントしていた。

1月24日に配信される最終回・第8話では、森田が物語のキーマンを担う力をどう見せてくれるのか楽しみだ。「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」は、ディズニープラスのスターで独占配信中。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

森田剛 /※2023年ザテレビジョン撮影