(左から)ヤングマシン・松田大樹編集長、司会・青木タカオ、バイクのニュース・千葉大編集長
(左から)ヤングマシン・松田大樹編集長、司会・青木タカオ、バイクのニュース・千葉大編集長

チョー魅力的な新型バイクが続々と登場し、売れに売れているニッポン市場! 今年の二輪業界の注目はどこ? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が二大編集長に話を聞いたぞ!

【写真】両編集長が注目した推しのバイク!

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■クルマの免許で125㏄のバイクに乗れる!?

カワサキ ニンジャZX-4R/4RR 価格:112万2000円/115万5000円 完全新作となった珠玉の4気筒エンジン。男心を刺激する甲高いサウンドと、クラス史上最高となる80馬力のパワーは快感。爆売れも納得
カワサキ ニンジャZX-4R/4RR 価格:112万2000円/115万5000円 完全新作となった珠玉の4気筒エンジン。男心を刺激する甲高いサウンドと、クラス史上最高となる80馬力のパワーは快感。爆売れも納得

――2023年も活況だったバイク業界ですが、両編集長が注目した推しのバイクは?

松田 カワサキニンジャZX-4Rにしびれましたね。ホンダCB400SFが生産終了し、消滅してしまった日本の〝ヨンヒャク4気筒〟を復活させ、史上最高の80馬力を達成! スペック至上主義で育った自分にとっては、ここ20年くらい忘れかけていた強いインパクトがありました。

レーサーレプリカ全盛を知る読者は歓喜し、誌面はもちろん、おかげさまでウェブ版でも大好評でした。

ホンダ EM1e: 価格:29万9200円 青木氏が手にする交換式バッテリーはカワサキ、ヤマハ、スズキと共通化。エネオスの交換ステーションなどでシェアリングできる
ホンダ EM1e: 価格:29万9200円 青木氏が手にする交換式バッテリーはカワサキ、ヤマハ、スズキと共通化。エネオスの交換ステーションなどでシェアリングできる

――千葉編集長は?

千葉 ホンダのEVスクーターEM1e:ですね。読者の電動モデルへの関心度の高さもあり記事のPVは非常に伸びました。個人的にもバッテリーを国産4社(ホンダカワサキヤマハスズキ)が共通化し、シェアリングサービスを始めたという点に将来性を感じましたね。

――補足すると、この4社の輪にエネオスも加わっています。今後、バッテリーステーションが全国展開されると普及が加速しそうですね。

千葉 国が補助金を使って電動アシスト自転車より実質安く買えるようにするなどして、普及に本腰を入れればEV原付ブームもあると思う。

松田 それで言うと、23年秋のJMSジャパンモビリティショー)でスズキが発表したeチョイノリは航続距離を短く割り切った見事な提案でした。チョイ乗りなら「EVでOK!」という、ひとつの解答を示しました。

スズキ eチョイノリ 2003年に5万9800円というチャリのようなお値段で発売された原付スクーターが、近距離移動に特化したEVへと魔改造され爆誕!!
スズキ eチョイノリ 2003年に5万9800円というチャリのようなお値段で発売された原付スクーターが、近距離移動に特化したEVへと魔改造され爆誕!!

――EVの普及はまず距離が決まっているコミューター(通勤・通学者)からでしょうね。ちなみに今、松田編集長の話に出たJMSカワサキニンジャ7ハイブリッドを発表しました。このバイクは世界初となるストロンハイブリッド搭載車です! さらに水素エンジンも公開されるなど、いよいよ〝脱炭素〟への動きがバイク業界でも加速してきたなという印象です。

千葉 一方でカーボンニュートラル燃料の存在も忘れてはいけない。レースの技術が市販車にフィードバックされれば、内燃エンジンが生き残る可能性は大いにある。

カワサキ ニンジャ7ハイブリッド JMSでカワサキが国内初披露した世界初となるストロングハイブリッドシステムを搭載。優れた走行性能と燃費を両立する二刀流マシン
カワサキ ニンジャ7ハイブリッド JMSでカワサキが国内初披露した世界初となるストロングハイブリッドシステムを搭載。優れた走行性能と燃費を両立する二刀流マシン

カーボンニュートラル燃料 23年9月に「モビリティリゾートもてぎ」(栃木県茂木町)で、ホンダはエキシビション走行を敢行。右がカーボンニュートラル燃料
カーボンニュートラル燃料 23年9月に「モビリティリゾートもてぎ」(栃木県茂木町)で、ホンダはエキシビション走行を敢行。右がカーボンニュートラル燃料

――続いては〝シン・原付免許〟について。ザックリ言うと、速度が出ないように改良した排気量125㏄のバイクを今後は原付免許、あるいは普通自動車の免許で運転できるようになる。この背景には差し迫った排ガス規制の問題がある。50㏄以下のバイクで規制を満たすには新たな技術開発が必要で、それには膨大な時間とお金が必要だとメーカーは頭を痛めていました。

松田 メーカーが言うとおり、生産コストを考えれば国内向けに50㏄を生産するには限界がきている。ただ、50㏄がなくなってしまえば公共交通機関のない地域の通学などに支障が出る可能性もあり、妥当な判断だと思います。

千葉 物申すッ! 安全面を考えたら従来どおりのままでいい。50㏄がなくなって困る人には免許を取得するための助成金を出せばいいだけの話です。

メーカーが馬力を抑える加工を施すコストを考えたら、そのほうがよっぽど安く済む。学生も免許を取得するため、しっかり運転技術を学んだほうが安全! 二輪業界にとっての未来も明るい。

松田 しかし、すでに警察庁が最高出力を4kWに抑えた125㏄を「新基準原付」として認め、原付免許で運転OKへと動き出したわけですし。

千葉 だからといって、「ハイ、そうですか」とそのまんま伝えるのがメディアの仕事でいいのでしょうかッ!? 

――スッ、ストップ。シン・原付についてはひと晩かかっても結論が出ないと思うのでまた機会を改めます!

■24年大注目のふたりのバイク女子

――ちなみに爆売れが続く125㏄クラスですが、24年もこの勢いは続きそうですか?

千葉 125㏄クラスの記事は、ウチではイチバン人気がある。

松田 超充実装備のヤマハYZF-R125MT-125、そしてXSR125は注目ですね。

ヤマハ XSR125(左) 価格:50万6000円 ヤマハ MT-125(中央) 価格:49万5000円 ヤマハ YZF-R125(右) 価格:51万7000円~ 昨年発売となったヤマハ自慢の3兄弟。エンジンと基本骨格を共通させることで、若者やビギナーにも手が届く手頃なお値段を実現した
ヤマハ XSR125(左) 価格:50万6000円 ヤマハ MT-125(中央) 価格:49万5000円 ヤマハ YZF-R125(右) 価格:51万7000円~ 昨年発売となったヤマハ自慢の3兄弟。エンジンと基本骨格を共通させることで、若者やビギナーにも手が届く手頃なお値段を実現した

――なるほど。一方、23年はハーレーアンダー400㏄モデルやアドベンチャーを発売し、BMWがアメリカンクルーザーを発売するなど、カテゴリーやクラスを超えた、まさに戦国時代に突入した感がありました。この世界的な動きをどう分析されている?

千葉 それぞれのジャンルに〝絶対王者〟がいる。当然、長年にわたって培ってきた技術やノウハウがあり、その強さは時間をかけて築き上げてきたもので揺るぎない。

さまざまなメーカーが新しいジャンルに手を出して挑んだとしても、そう簡単に絶対王者は倒せませんから、結果的にそれぞれのカテゴリーの横綱モデルのスゴさが際立つと思う。

松田 そもそもひと昔前なら各モデルが専用設計で造られ、メーカーもいろいろなカテゴリーに幅広く手を出すなんてことは難しかった。それが今できるのは、フレームとエンジンを共通化して、ロードスポーツからダートもいけるデュアルパーパスも造れてしまう解析技術の進歩がある。

人気セグメントに新型が攻め込むのは当然ですから、僕は横綱を倒すというよりも、マーケットを拡大すべくセグメント全体を盛り上げていこうというのがメーカー側の狙いではないかと。

ハーレーダビッドソン X350 価格:69万9800円 23年10月に中免(普通二輪免許)で乗れるハーレーとしてニッポン市場に登場。大きな話題を呼び、注文が殺到。どこまで売れるか見もの
ハーレーダビッドソン X350 価格:69万9800円 23年10月に中免(普通二輪免許)で乗れるハーレーとしてニッポン市場に登場。大きな話題を呼び、注文が殺到。どこまで売れるか見もの

――実はホビーユース(趣味や娯楽)向けのスポーツバイク市場が急拡大する中国やインドには成熟したニッポン市場のような、いわゆる骨格などへの強いこだわりがない。

千葉 これまでメディア側がエンジンの型式など、スペックにこだわりすぎた面はある。エントリー層にもわかりやすく噛み砕いたコンテンツを発信すれば、バイクの魅力はもっと広く伝わるはず。

小野木里奈 大型自動二輪車免許のほかに、ボクシングのプロライセンスも持つ彼女。2月9日公開予定の映画『レディ加賀』に七尾桜子役として出演
小野木里奈 大型自動二輪車免許のほかに、ボクシングのプロライセンスも持つ彼女。2月9日公開予定の映画『レディ加賀』に七尾桜子役として出演

――そういう意味で注目は「バイク女子」ですよ! 彼女たちの活躍は目覚ましい。バイクのニュースが誇る今年イチオシの秘蔵っ娘は?

千葉 小野木里奈(おのぎ・りな)ちゃんです。連載コラム執筆のために、車両のライドフィールを自分なりにしっかり確かめ、疑問があればメーカーの開発者たちに取材します。

虹 16歳で普通二輪免許を取得。スーパーカブ(75㏄)などに乗り、18歳で大型二輪免許を取得。現在の愛車は母親から譲り受けたハーレー
虹 16歳で普通二輪免許を取得。スーパーカブ(75㏄)などに乗り、18歳で大型二輪免許を取得。現在の愛車は母親から譲り受けたハーレー

――隠し玉は?

千葉 24年は虹(こう)ちゃんがバイクのニュースにリポーターとして本格デビューします。高校を卒業後に自動車整備の専門学校に入り23年春に卒業。現在バイクスクールでライディングを猛特訓中です。ふたりとも女性ライダーならではの切り口で記事を発信していきます。

――うおー、ぜひ「週プレバイク女子」を結成したいッ! 両編集長、そのときはご協力オナシャス

1973年に創刊した老舗バイク専門誌『ヤングマシン』(内外出版社)。毎月24日に発売。公称発行部数10万部。ウェブ版は月間1300万PV以上。熱きバイク乗りのバイブル
1973年に創刊した老舗バイク専門誌『ヤングマシン』(内外出版社)。毎月24日に発売。公称発行部数10万部。ウェブ版は月間1300万PV以上。熱きバイク乗りのバイブル

2019年に創刊されたハーレーダビッドソン専門誌『WITH HARLEY/ウィズハーレー』(内外出版社)。編集長の青木タカオ氏は、ハーレー女子ブームの仕掛け人でもある
2019年に創刊されたハーレーダビッドソン専門誌『WITH HARLEY/ウィズハーレー』(内外出版社)。編集長の青木タカオ氏は、ハーレー女子ブームの仕掛け人でもある

月間1280万PVを誇る日本最大級のバイク情報ウェブメディア『バイクのニュース』。バイクに関わる情報を毎日速攻で無料配信中。「バイク女子」の虎の穴としても有名な媒体
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撮影/宮下豊史 長谷川 徹 柴田直行 中野英幸 写真提供/バイクのニュース編集部

(左から)ヤングマシン・松田大樹編集長、司会・青木タカオ、バイクのニュース・千葉大編集長