最近のガジェット界隈ではアメリカに居ないと得られないメリットってけっこう少なくなってしまっていますが、久々にこれは!?という大きいのがやってきました。Appleの「Vision Pro」です。

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●米国先行発売はiPad以来、14年ぶり!



 今のところアメリカでのみ2024年2月2日に発売されるということだけが発表されていて、日本を含む他の国では現時点(1月24日現在)で正式なアナウンスはありません。

 Apple製品で米国先行発売というのは昔は割とあったのですが、ここしばらくは全世界同時発売が普通になっていましたね。最後の米国先行発売が10年のiPadなので、かれこれ14年ぶりのできごと。あのときはまだ日本に住んでいて悔しい思いをしたものですが、今回は僕、アメリカ住んでます!買いますよ、もちろん住人の権利としてw

 というわけでVision Proプレオーダーが米国時間の1月19日午前5時(カリフォルニア時間)から始まりまして、僕も無事に予約することができました。最大の懸念はそんな早い時間に起きられるのか?ということでしたが、1週間前から5時起きを実践して体を作り、前日は酒も控えて夜9時に寝るという徹底した準備をして備えました。


●なんで朝5時から?



 ちなみにこの受付開始時刻、なんで朝5時だったんでしょうかね?僕が住んでいるのはAppleのお膝元のクパチーノを抱えるカリフォルニアVision Proを買おうとしている人も多いはず。ニューヨークなど東海岸でも朝8時。ハワイに至っては午前3時です。

 金曜日とはいえ平日ですから、さすがのアメリカ人でも多くの人は仕事をちゃんとしています。発売がアメリカのみということを考えると、もっと予約しやすい時間帯を選んでも良かったのではないかと思うのですが。まぁ、僕ら熱狂的なユーザーからするとその方が倍率が少しでも下がって良かったんでしょうが。

 ともあれ、無事に2月2日の発売日に入手できることが決まりました。これで安心して作っているアプリの仕上げに入れます。そう、僕はプログラマでして、Vision Proの発表があった23年6月のWWDCから、ずっと趣味でアプリの開発を続けていました。

 Vision Proの初日にApp Storeに自分のアプリが並んでいることを目標に半年間頑張ってきました。もう残り時間は少ないのですが、なんとか公開できる体裁を整えてサブミットできるように、いま必死にラストスパート中です。このアプリを作る過程はYouTubeでも「目指せvisionOS Developer!」として、シリーズで公開していますので、興味がある方は是非ご覧ください。


●Developer Labを一般に公開!



 実はAppleは今回のVision Proの登場において、これまでになかったサービスを開発者向けに提供しています。その一つがDeveloper Lab、開発者をAppleのオフィスに招き実際のデバイス使って開発を行わせるものです。

 もちろんこれまでも大手のサードパーティベンダなどに向けては新しいデバイスが出る機会でこういうイベントは開催されていたのでしょうが、その存在は非公開で、Apple側からお声がかからなければそもそも実現できないものでした。

 それが今回は、広く一般に公開されて開発者登録している人なら誰でも申し込めるようになったのです。僕みたいな、たいした実績もない野良プログラマでも受け付けてくれる太っ腹。これまでとは違う雰囲気を感じます。

 ラボは本社のあるクパチーノだけで開催しているわけではありません。東京、シンガポール、上海、ロンドンミュンヘンニューヨークシドニーなど、世界各地にAppleのエンジニアが出向いてデバイスを持っていき直接質問に答えてくれる機会を用意しています。


●「空間コンピューティング」から伝わるAppleの本気度



 これはどういうことを意味するのか?僕はこれをAppleの意気込みと取ります。Vision Proがそれだけ新しいことを生み出そうということなんだと。

 それは一つの新登場のデバイスとしてだけではなく、空間コンピューティングという新しいカテゴリ、これまでちゃんと定義できていなかったものを作り出そうとしている意気込みなんだと感じてます。

 それだけAppleは本気なんでしょう。どうです、あなたも体験してみませんか?開発者登録をすることで申し込む権利を手に入れられます。発売前に実際のデバイスを体験することができるチャンスがここにはあります。

 Appleが用意しているのはラボだけではありません。発表があった23年6月のWWDCではVision ProのOSであるvisionOSのために多くのセッションが用意されていました。

 その多くはテクニカルなだけの内容ではなく、空間コンピューティングという新しい環境に向けたアプリをデザインするためのポリシーや注意しなくてはいけないことを説明するものでした。

 それと同時に膨大な量のドキュメントと、visionOSの基本的なUI要素を網羅したサンプルコードも公開されました。そして数週間後には実際に開発が始められるXcodeのベータ版とvisionOSのシミュレータが公開され、そして開発は続けられて発売ギリギリの1月までベータ版の数を重ねてついに正式版のSDKになりました。

 ここまで徹底した新製品のローンチはなかなか体験できるものではありません。iPhoneのときだってとてもここまでではなかったです。

 まぁ、そもそも最初はサードパーティが開発できるようにはなっていなかったですから当然といえば当然なんですが、会社が持つモノを開発する力、その上で走るアプリを開発するツールを提供する力、そして開発者を巻き込んでサポートしていく力、そのどれもが当時と比べても比較にならない充実っぷりなことは間違いないでしょう。

 安定した開発環境を作り、新しいプログラミング言語をデザインし普及させ、チップまで設計しプロダクトライン全体を最適化し、生産ラインから流通、リテールまでを自社でこなす会社。90年代の死にかけた会社だったころを知ってる世代には夢のような話です。いや、JobsからTimバトンが渡された13年前から考えても信じられない安定っぷりです。これが今のApple。


●エンジニア寿命が10年は伸びた



 少しエキサイトしすぎなのはご勘弁してください、Appleはすでに僕の人生に欠かせない会社なんです。Appleから新しいカテゴリのものを見せてもらうのは僕はこれで三度目、1984年Macintoshの登場、2007年のiPhone、そして24年のVision Pro。新しいものが出るたびに大きな影響を受けてきました。

 僕がプログラマとしてデビューできたのはMacと新しいもの好きの父のおかげで、どこからか聞いてきたのかMacintosh 512Kを書斎において自慢していたからでした。あまり稼働している気配はなかったのですが、おかげで好きに使わせてもらえてました。自分のMacintosh IIを手に入れてからはInside Macintosh片手にプログラミングを始めることになり、今のプログラマ人生が始まっています。

 iPhoneが出た時には、僕はMacの開発からは遠ざかりウェブ系の開発をやっていたんですが、この面白い世界にもう一度入りたい、仲間入りしたい!という気持ちから趣味でiPhoneアプリの開発を開始、そこからデバイス系のプログラミングを始めるようになり、元Appleエンジニアの友達に誘ってもらって渡米するに至ります。

 そして今回、Vision Pro。どういう出会いになるのかは今のところわかりませんが、すでに空間コンピューティングへの対応で頭の中を引っかき回されています。空間でのプログラミングが当たり前になってくると、覚えなければいけないスキルや勉強しなくてはいけない新しい知識が山ほどあります。ほんとに楽しいです。

 エンジニアとしての寿命が10年ぐらい伸びた気がします。これだからAppleプラットフォームの開発者はやめられません。というわけで次回はVision Proがもたらす何に期待しているのかをお伝えできればなと思います。(ソフトウェア エンジニア・バスケ)

■Profile

バスケ

ソフトウェア・エンジニア。プログラミング3DプリンタDIYなど雑多なYouTubeやってます。観てね。[https://www.youtube.com/@BasukeSuzuki](https://www.youtube.com/@BasukeSuzuki)

筆者がYouTubeで公開しているシリーズ「目指せvisionOS Developer!」