今シーズン最強の猛烈な寒気に見舞われた日本では、24日現在、日本海に面した各地で、大雪による鉄道への影響などが報じられているが、アメリカでは炎の上を走る列車が目撃された。
今月半ば、致命的な大寒波に震えたシカゴでは、極度の寒さによる機械的問題から、列車の遅延や立ち往生が次々発生。
そこで遅延を案じた通勤列車の鉄道会社が、急きょ線路の氷をとかす作業を始めた。それがこの燃える線路のような光景だったのだ。
Chicago train tracks lit on fire amid extreme cold
今月15日深刻な寒波に襲われたシカゴでは、鉄道がもろに影響を受けた。寒さによる線路の凍結などの問題が次々と噴出し、多くの路線で遅延が発生した。
長距離列車の発着駅であるユニオン駅では、列車が立ち往生。結果、45分の遅延が生じたたことから、他の路線の列車も駅に入れず立ち往生するなど、シカゴ発の列車が軒並み運行困難になってしまった。
通勤鉄道会社がガスヒーターの火で線路を暖める
そこでシカゴの通勤鉄道会社 メトラ(Mrtra)が急きょ行ったのが、線路を炎で暖めて氷を取り除く作業だった。
[もっと知りたい!→]いいから外出せや。氷点下30度の日、猫の要求に応じて外に出したらこうなった。
それはレールに沿いに設置されたガスヒーター(スイッチヒーター)を点火して、列車を他の線路上に分岐させる装置、分岐器(スイッチ)を暖める作業だ。
おかげで列車は止まらずに済み、運行を続けられた。
線路が燃えてるように見えるメトラのスイッチヒーター
Switch Heaters at A-2 | Metra Rail
冬も列車を遅らせないよう徹底した対策を講じるメトラ
車社会のアメリカの中でも指折りの利用客で知られるメトラでは、乗務員が24時間体制で夜間運行に備えている。
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メトラの列車を頼りにする大勢のお客のため、決して遅延させまいとする対策が功を奏した形だ。
またメトラには冷えた線路を加熱するチューブヒーターシステムと熱風送風機もあるが、これらの設備はメトラだけでなく、北米の他の鉄道にもあり、同様に使用しているという。
2022年冬、-15℃のシカゴでも同様の光景が話題に
#BREAKING #USA #IL
— LoveWorld World News (@LoveWorld_Peopl) January 26, 2022
🔴 CHICAGO: RAILWAY TRACKS ON FIRE! 🔥
It is -15 Celsius (10.5 Fahrenheit) in Chicago, and the city's Rail Network sets the tracks on fire to prevent frost and snow from blocking the switches. #Flash #Video #Illinois #Chicago #Railway #Fire #Incendio pic.twitter.com/jcMVvZNgVD
こうした対策についてメトラの広報はこうコメントしている。
鋼鉄は寒波に影響を受けます。寒さだけでなく、雪、風、氷、そのすべてが重なり、線路の破損や、スイッチの問題を引き起こします。寒さで自動車が動かなくなるのと同じで列車にも同じことが起こります。氷点下のときはいつでも、これらのシステムを使用しています。
極度の低温がレールや分岐器に及ぼす影響
みんなも知ってる通り、線路のレールはその材質から猛暑では膨張、極寒では収縮する性質がある。なのであらかじめ、ある程度の隙間を設けている。
だが、極度の低温にさらされると想定以上に収縮し、その隙間が離れすぎてしまうことがある。そのためガスヒーターなどで暖めて、元に戻す必要がある。
また分岐器も、氷点下に氷雪が詰まって作動しない場合があるため、スイッチヒーターのような専用の暖房を使用する。
メトラでは職員が12時間交替で勤務しているため、これらの暖房に手動で点火し、ガスを制御するだけでなく、炎の監視を行う体制が整っている。
実際に枕木を灯油で燃やしていた時代も
知らなければ線路燃えてる!と空目するが、実際は直火じゃなかったんだね。
と思いきや、メトラのエンジニアによると、かつてアメリカでは線路の枕木に灯油を差して、本当に燃やして暖めた時代もあったそうだ。
2ガロン(9リットル)の灯油缶の中身を使いきってマッチを放り込むと、全部の線路に沿って火がつくんです。70年代半ばの話ですけどね。今なら大変なことになる。
なお、メトラによると、列車のディーゼル燃料は、直火ではなく、圧力と熱により燃焼するため炎が上がる線路を走らせても安全とのこと。
日本でも凍結対策に燃焼器具を使用していた
実は日本の鉄道会社でも、かつては線路のレールを分ける装置「ポイント」(分岐器の一部)の凍結防止策として、燃料を点火して暖めるタイプの「ポイント融雪器」通称「カンテラ」なる燃焼器具が使われていたそう。
以下は参考動画だが、2014年撮影されたものだ。
線路のポイント凍結防止作業を踏切で眺める・・・京急
それは昔ながらの対策で、現代は一部の鉄道のみのものになっているもよう。
というかめったに見かけないものなため、これを使用する兵庫県の山陽電車公式によると、火事と間違われることもあるようだ。
画像は『ポイント融雪器』の炎です🔥これからの時期、降雪・凍結でポイントが転換できなくなることを防ぐため、炎を焚く機械を線路の下に置いています。使用する際は事前に消防に連絡しております。かなり火が出ますが、火事ではありませんので、119番などされず、ご心配の時は駅員にお尋ねください。 pic.twitter.com/owMzARXCBS
— 山陽電車【公式】 (@sanyo_cs) January 31, 2023
一方、雪と極寒対策のプロともいえるJR北海道では、専用の除雪装置による線路のこまめな除雪やレールヒーターのほか、ポイントの下にマットヒーターを敷いたり、ポイントの下に空間を開けて雪が着かずに落ちるようにしたり、圧縮空気で氷を吹き飛ばすなどさまざまな対策を講じてるそうだ。
2022年度冬期の取り組み【JR北海道】
References:fox32chicago / LoveWorld_Peopl/status/X / youtube / edition / youtubeなど /written by D/ edited by parumo
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