アメリカが本腰入れて軍用飛行艇を開発するか?

徐々にオーソドックスな形へ変化

アメリカの航空機メーカー、ボーイング傘下のAFS(オーロラ・フライト・サイエンス)は2024年1月23日DARPA(国防高等研究計画局)が進める超大型水上飛行機「リバティー・リフター(Liberty Lifter)」プログラムに関して、自社の大型輸送飛行艇プランが予備テストを無事通過したと発表しました。

「リバティー・リフター」は、長距離飛行が可能で、かつ生産・運用コストを抑えた輸送用水上機の開発を目指すものです。なお、特徴のひとつとして、翼状の物体が地面や水面近くを移動する際、それらのあいだに生じる空気流の変化に物体が影響を受ける「地面効果」を用いて、水面から100フィート(約30m)未満の超低空で飛行することができる仕様も盛り込まれています。

AFSの設計プランは、単胴型で主翼を上部に装着した高翼配置の、オーソドックスな飛行艇形状です。エンジンはプロペラ駆動のターボプロップ8発で、6500海里(約1万2000km)以上の航続距離(フェリー時)を持ち、最大13フィート(約3.97m)の波が立つ海面状況下での地面効果による飛行性能を持つとしています。

胴体内には、DARPAの要求設定である、アメリカ海兵隊の水陸両用戦闘車(ACV)2両、もしくは20フィートコンテナ6つを収容可能です。

すでにAFSの設計プランは、最初の関門といえる航続距離や貨物の積載量などについて審査を行ったフェーズ1をクリアしており、その次の段階として設けられている予備設計レビュー(フェーズ1B)を控えた状態です。

なお、AFSの設計プランは今回クリアした予備テストの前に小変更が加えられており、尾翼は水平翼が上端に付くT字型から、ふたつのT字をつなげたΠ(パイ)字といえる形状に改められています。AFSの説明では、これにより胴体後部のカーゴドアを2枚の垂直尾翼のあいだに収めることができるようになり、効率のよい構造になったそう。また主翼両端のフロートは、日本のUS-2救難飛行艇などと同様のオーソドックスな吊下げ型に換装され、これにより費用対効果が向上したといいます。

フェーズ1Bは2025年1月までに終わる予定で、スケジュールが滞りなく進めば、2028年には実機を用いての飛行試験が行われる計画です。

オーロラ・フライト・サイエンスが公開した「リバティー・リフター」飛行艇の新たなイメージCG(画像:AFS)。