1月26日(金)の公開が間近に迫る『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。メディアなどで同作の話題を目にし、その原点である『機動戦士ガンダムSEED』の物語が気になっている方も多いのではないだろうか。今からおよそ20年前に放送された作品ながら、なぜ今なお人々を魅了し続け、不動の地位を確立するに至ったのか。その理由の1つに、『SEED』の物語が様々な魅力を兼ね備えている点がある。今回は『SEED』の物語のロードムービーとしての一面にフォーカス。やや珍しい角度から、その魅力へと迫っていく。

【写真】キラたちが見せるロードムービーの輝き。『機動戦士ガンダムSEED』PHASE-7より

■ヘリオポリスから始まるキラと仲間たちの旅

敵軍であるザフトの侵攻によって穏やかな日常を追われ、戦艦アークエンジェル、さらにはストライクガンダムに乗ることとなった主人公のキラ・ヤマト(CV.保志総一朗)。『SEED』には、敵の追撃から逃れるため、様々な地を目指すキラとその仲間たちの物語が描かれている。

中立国オーブのコロニー・ヘリオポリスから宇宙に飛び出した彼らの最初の目的地となったのは、地球連合軍の軍事要塞アルテミスが設けられている月。しかし、その道中でもアークエンジェルザフトのさらなる追撃や、フレイとの再会など様々な出来事に遭遇していく。特にフレイとの再会は『SEED』とキラにとって、とても重要なイベントの1つだ。孤独との向き合い方、救いたい人を救えなかった後悔、心の隙間を埋めるために求めた人のぬくもり、友人との確執。キラと彼女の周辺には、多くのドラマが存在している。

目標までの過程にある紆余曲折を経て、ときに運命を左右されながらも、1つずつ困難を乗り越えていくこと。それこそが『SEED』をロードムービーに分類できる根拠であり、同作の見どころでもある。当初はガンダムに乗ることに後ろめたさを感じていたキラも、幾つもの場面で起こる出来事の中で仲間たちとの絆を強め、地球連合軍の一員としてザフトに立ち向かっていくことを決意する。こうした展開をロードムービーと呼ばずして、何に分類することができようか。

■「カガリとの再会」はロードムービーの王道的展開?

ついに地球連合軍第8艦隊とも合流し、地球連合軍本部のあるアラスカを目指すこととなったアークエンジェル。しかし、ザフトの猛攻を受け、第8艦隊を犠牲にして地球・アフリカ北部へと不時着するのだった。そこでキラたちはザフトと対立する現地のレジスタンス「明けの砂漠」に遭遇する。その面々の中には、ヘリオポリスで出会った少女カガリの姿があった。

かつて出会った人との邂逅もまた、良質なロードムービーには欠かせない要素だ。彼女がなぜヘリオポリスに滞在し、なぜヘリオポリスからの避難の列を飛び出していったのか。レジスタンスのメンバーとしてザフトと対立する理由は? そうしたバックグラウンドを知ることで、キラたちの物語はさらに深みを増していく。

地球上でもザフトの追撃を受け続けるアークエンジェルだったが、やがてカガリの仲立ちにより、中立国・オーブの庇護を受けることに。そのことがきっかけとなり、キラは少しずつ「地球連合軍の一員としてザフトに対抗する」という考えを変えていくのだった。その過程では、キラとカガリにまつわる衝撃の秘密も明かされる。

何気なく登場し、シーンの変化にあわせてフレームアウトしていったカガリのような存在が、実は物語の行方に大きな影響力を持つ。これはロードムービーにおける王道的な展開でもある。『SEED』は、「長い旅路の中での人との出会いによって、考え方や彼らとの間にある関係性を変化させていく」という、キラと仲間たちの成長の物語なのだ。その点もまた、同作におけるロードムービーらしさであると言える。

■ロードムービー的展開を見せるのは『SEED』だけじゃない。劇場版の物語にも期待

『SEED』にはたくさんの魅力的なキャラクターたちが登場する。中でも特徴的なのは、キラを含むそのほとんどがまだ10代の少年少女である点だ。成熟した大人であれば、その道中で人や困難と出会ったとしても、それほど大きく心境が変化することはないのかもしれない。物語の中心にいる彼らがまだ心身ともに成長過程にある年齢だからこそ、『SEED』は、ロードムービーとして稀有な輝きを放っている面もある。

「ロードムービー」という単語について調べると、その性質には「追求型」と「逃亡型」の2種類があるとされている。前者は「登場人物が何か大切なものを発見することでストーリーが動いていく点」を、後者は「特定の組織などから追跡される登場人物たちが、その手を逃れる中で様々な出来事に遭遇していく点」を特徴とするようだ。その観点に立つと、『SEED』には両方の性質が含まれていると言える。たとえば、キラはザフトの追跡から逃れる過程で、自身が存在する意味、アスランとの友情、本当の家族、仲間たちの大切さを発見し、その生き方を見つめ直していく。

一方で、こうした個性はなにも『SEED』にのみ当てはまるものではない。実はほぼ全ての「ガンダムシリーズ」の作品が、ロードムービーとしての特徴を抱えているのだ。もちろん、『SEED FREEDOM』も例外ではない。12月13日に公開された同作の本予告の中には、何か大きな出来事に遭遇し、平和への想いを爆発させるキラ・ヤマトの姿が収められている。

『SEED FREEDOM』は、いったいどのようなロードムービー的展開を私たちに見せてくれるのか。公開まではあとわずか。この期間をワクワク感とともに過ごせるのも、今ならではの楽しみ方なのかもしれない。

『機動戦士ガンダム SEED FREEDOMが』1月26日に公開 (C)創通・サンライズ