古美術の優れたコレクションをもつ東京・南青山の根津美術館では、2月10日(土)から3月26日(火)まで、所蔵品を中心として朝鮮陶磁の魅力を紹介する企画展と、その朝鮮陶磁の高麗茶碗を日本で写した「奥高麗茶碗」の謎に迫る特別企画の展示を同時開催する。日本における朝鮮陶磁の受容の歴史に目を向けた興味深い展観だ。

朝鮮半島日本列島との交流は古く、約2万数千年前の旧石器時代にははじまっていたとか。5世紀には、陶質土器の技術が朝鮮半島から日本に入って、須恵器(すえき)が誕生している。以来、朝鮮陶磁は日本の陶磁器の制作に強い影響を与えるとともに、日本人から愛好され、蒐集されてきた。16・17 世紀には高麗茶碗が茶人たちの人気を集め、また18世紀にかけては、白土を施し灰釉をかけて焼成した「粉青(ふんせい)」や白磁、また深い灰青色が優美な「翡色(ひしょく)」と呼ばれる12世紀の高麗青磁をはじめとした青磁も愛好家たちから熱心に求められた。

同展は、美しい色彩とともに蓮華唐草文(れんげからくさもん)の精緻さも見事な重要文化財の《青磁蓮華唐草文浄瓶》をはじめとした館蔵の名品によって、日本における朝鮮陶磁の愛好の歴史を概観し、その魅力を見つめ直すもの。圧倒的な美を誇る中国の陶磁器とも、また日本人の美意識が反映された日本の陶磁器とも異なる朝鮮陶磁は、その美しさと清らかさ、そして素朴な強さが大きな魅力だという。

一方、特別企画でとりあげる「奥高麗茶碗」は、実は朝鮮ではなく、九州肥前地方(現在の佐賀県唐津市周辺)で焼かれたものだ。高麗茶碗が茶人の人気を集めた16・17世紀頃には、朝鮮半島の陶工が唐津に磁器の焼成技術をもたらしていたが、その唐津で高麗茶碗を写して生み出された茶碗が「奥高麗茶碗」なのだ。この名称は、江戸時代後期には茶会記などに登場しているが、ではなぜ「奥高麗」と称されたのか、唐津のどの窯でいつ頃焼かれたのか、さらにどのような茶碗が「奥高麗」なのかなど、謎が多く、これまで様々に論じられてきたそうだ。同展は、館蔵品のみならず、他館や個人蔵の奥高麗茶碗を集めて、その謎の解明に果敢にとりくむもの。知的好奇心を大いに誘う見逃せない展示となっている。

<開催概要>
『企画展 魅惑の朝鮮陶磁/特別企画 謎解き奥高麗茶碗』

会期:2月10日(土)~3月26日(火)
会場:根津美術館
時間:10:00~17:00
休館日:月曜(2月12日は開館)、2月13日(火)
料金:一般1,300円、大高1,000円 ※日時指定予約制
※同時開催:『ひな人形と百椿図』『春の茶の湯 -釣り釜-』 公式サイト:
https://www.nezu-muse.or.jp/

重要文化財《青磁蓮華唐草文浄瓶》朝鮮・高麗時代 12世紀 根津美術館蔵