人間関係と検索すると「疲れた」「めんどくさい」など、ネガティブな関連ワードが次々と出てくる。さらに、検索結果のブログなどを見ると切実な思いを吐露するものが多々あり、程度にもよるが、じつに多くの人々が悩んでいるテーマなのだと気が付く。
書籍『人間関係のモヤモヤは3日で片付く -忘れられない嫌なヤツも、毎日顔を合わせる夫も-』(田房永子/竹書房)は、そんなテーマを取り扱いながらも、ほのぼのとした絵柄で展開するコミックエッセイだ。著者自身が経験してきた対人関係の悩みとその都度の対策は、同様の悩みを抱える人たちの助けになる。
本書の物語は、著者をモデルにした主人公を中心に展開していく。両親との関係に悩み、訪れたセラピストから主人公がアドバイスを受けるシーンでは、「人間関係のモヤモヤが片付く方法」の基礎を学べる。
対人関係の悩みを吐露する著者に、セラピストは「感情にいいも悪いもない」と伝えた。本来、自然と込み上げる感情は「単なる生理現象」でしかない。しかし、人は感情が「美しい」か「汚い」かなど、「社会的価値観」を重視して評価してしまう。
そうすると、何が起きるか。結果、感情のよしあしを評価することに目を奪われ、本来、悩みの根本であったはずの感情に目を向けることなく、心にずっと「モヤモヤ」を抱え続けたままになってしまうのだ。
そこでセラピストは、苦手な相手に対する意識として、自身の「社会的価値観」ではなく「感情」そのものと、落ち着いて向き合うための方法を提案した。
まず、イスか座布団、クッションのように座れるものを2つ用意して向かい合うように置く。そして、片方のイスに自分が座り、もう片方には苦手意識ある相手が座っていると想像して、相手への本音を感情のままに吐き出す。
著者がその場でイメージしたのは、21歳のアルバイト時代に出会った男子学生の同僚だった。彼は、著者が「東京出身だから嫌い」という理由だけで驚くことに、職場で著者だけを避けていた。
その「モヤモヤ」を抱えたまま29歳となった著者は、イスに座って当時から抱いていた同僚への本音を吐き出し、自身の中にあった気持ちを昇華した。
当時は自分の本音を押し殺しながら、相手から「無視されて苦しかった…」と感覚を思い出す著者は、「おまえってめっちゃ変なヤツ!!」「東京の女全員 無視すんのかよっ」とつぶやき、その場にはいないかつての同僚への愚痴をこぼす。すると、不思議と相手の存在が心の中でかすれていき、やがて、消えていったという。
この方法はのちに、自身が「モヤモヤ」を抱える別の相手と向き合う際にも、著者を救っていく。無理に相手を変えるでもなく、自分を変えるでもない。「ただ自分の中にあるモヤモヤにやさしくするだけ」という著者の話は、いたく心に響く。先述のほか「攻撃してくる人へのモヤモヤ」「親に対してのモヤモヤ」など、数々の人間関係の悩みを自主的に乗り越えてきた著者のエピソードは、私たちの心も必ずや救ってくれるはずだ。
文=カネコシュウヘイ
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