フェラーリ「デイトナ」が6億円弱で落札! スパイダーがクーペより5倍も高値になる理由とは?

生産台数121台のデイトナ スパイダー

100年前には鉄道車両の点検・修理に使われていた施設を改装した、自動車エンスージアストの楽園「モーターワールド・ミュンヘン」において、2023年11月25日、RMサザビーズ欧州本社が開催した「Munich 2023」オークションでは、素晴らしい施設に相応しいクラシックカーやコレクターズカーが数多く出品された。今回はその中から、最高額のハンマープライスを叩き出したフェラーリ365GTS/4デイトナ スパイダー」をご紹介しよう。

フェラーリの伝統を継承した、世界最速のオープンスポーツカーとは?

フェラーリの原点は、伝説的なV型12気筒エンジンをフロントに搭載したオープンスポーツカーにこそある。フェラーリの名を持つ最初のモデル「125S」から365GTまで26年にわたり、跳ね馬の名を冠したV12でFRのオープンモデルが用意されていた。

1968年に登場した「365GTB/4」も当初はベルリネッタのみの体制だったが、とくに北米市場からの熱心なリクエストに応えるかたちで、1969年フランクフルト・ショーにてオープンバージョンの「365GTS/4」、いわゆる「デイトナ スパイダー」をデビューさせることになる。

デイトナ スパイダーは、フェラーリ・マラネッロ本社の有名なゲートを出た史上最高のクルマのひとつとして、多くのティフォージから評価されている。ただし、ベルリネッタボディの365GTB/4とメカニズム的には同一であり、さらにドライブトレインの多くは伝説的な275GTB/4から継承していた。

ベルリネッタと同じくモデナの「スカリエッティ」が正規で製作する365GTS/4は、単にベルリネッタのルーフを切り取っただけではなく、ボディ補強を含めて新たに後半部を作り直したものだった。

いっぽう、レオナルド・フィオラヴァンティの主導でデザインされたグラマラスなボディの下には、古典的なチューブラーフレームが敷かれており、理想的な重量バランスを保つためにトランスアクスルが後輪にパワーを伝達した。

パワーユニットは、4391ccのV型12気筒クワッドカム。352psをマークし、この時代としては世界最速のオープンスポーツとして認知されることになった。

ミュンヘンオークション2023に出品されたフェラーリ「365 GTS/4デイトナ スパイダー」は、いくらで落札された?

そして、この圧倒的なまでの華やかさとカリスマ性は、この時代の映画人たちも大いに刺激したのだろう。1976年に公開されたアメリカ映画「激走!5000キロ(原題:The Gumball Rally)」や、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」を原作とし、鬼才ロバートアルトマンの監督で映画化した「ロング・グッドバイ(1973年公開)」などの作品で、主役であるハリウッドスターたちと互角の存在感を披露していた。

こうしてデイトナ スパイダーは、生来の目論みどおり北米を中心に人気を得ながらも、少数しか生産されなかったため、市井のボディショップがスタンダードベルリネッタの屋根を切断してしまった「即席の」スパイダー・コンバージョンも少なからず存在している。

1969年の春頃から1973年までに、コンペティションモデルを含めた365GTB/4ベルリネッタが1383台に達したのに対して、365GTS/4スパイダーは121台(ほかに127台説などもあり)に過ぎないといわれている。

そしてフェラーリは、デイトナ スパイダーに代わる真の後継モデルをシリーズ生産することはなく、その精神的後継車である「550バルケッタ」の登場は20世紀最後の年、2000年になってからのことだった。

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309万8750ユーロ(邦貨換算約5億510万円)で落札されたフェラーリ「365 GTS/4デイトナ スパイダー」(C)Courtesy of RM Sotheby's