今春の侍ジャパン入りが確実視される宗山。そのポテンシャルに対する評価はプロスカウトの間でも上々だ。写真:西尾典文

 昨年10月に井端弘和監督が就任し、新たなスタートを切った侍ジャパンのトップチーム。3月には欧州代表との強化試合が予定されているが、その“初陣”に宗山塁(明治大/遊撃手)、西川史礁(青山学院大/外野手)、中村優斗(愛知工業大/投手)、金丸夢斗(関西大/投手)の大学生4人が招集される見込みであると明らかになった。

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 井端監督は昨年12月に松山で行われた大学日本代表候補合宿を視察に訪れるなど、これまでも精力的にプロ以外の選手に目を配っており、代表はもちろん、選手自身の将来を考えても非常に有益な試みと言えるだろう。

 とりわけプロのスカウト陣から最も注目を集めているのが、宗山だ。昨秋までに東京六大学ベストナインを3度も受賞。リーグ戦通算94安打を放っており、大学球界の遊撃手としては鳥谷敬早稲田大→阪神、ロッテ)以来の大物。1月にスカウト会議を行っている球団も多いが、どの球団も1位候補として真っ先に宗山の名前を挙げている。

 ではそんな宗山の凄さはどこにあるのか。これまでのプレーぶりや、関係者の証言などから掘り下げていきたい。

 まず、筆者が初めて宗山のプレーを現場で見たのは、広陵高校時代の1年秋に出場した明治神宮大会の対星稜戦だった。この試合で圧巻のプレーを見せたのは、星稜の先発マウンドに立った奥川恭伸(当時2年・現ヤクルト)で、7回を投げて被安打3、11奪三振で完封勝利を飾っている(試合は7回コールド、9対0で星稜が勝利)。広陵とすれば、完敗という内容だったが、その中でマルチヒットを放って一人、気を吐いたのが「3番・セカンド」で出場した宗山だったのだ。

 特に初回の第1打席で奥川の149キロのストレートをしっかり芯でとらえてライト前に弾き返したミート力に驚かされたのをよく覚えている。当時と比べて現在は身体つきも大きくなり、ヘッドスピードやパワーもアップした印象を受けるが、一貫して変わらないのはスイングに無駄な動きがない点だ。

 構えた際に上半身の力みがなく、トップの形を作る動きもシンプルで、バットが極端に傾いたりすることもない。打撃時に少し右足を上げるスタイルの下半身も、慎重にステップして踏み出しも強く、バランスの良さも目立つ。リーグ戦通算打率は.348と鳥谷の.333を上回っており、8本塁打を放っているようにパンチ力も備えている。プロでも安定して打率3割が狙える素材と言えそうだ。

井端監督も評価する技術とは?

 そんな打撃以上に評価が高いのがショートの守備である。自身も現役時代に名手として知られた侍ジャパンの井端監督も昨年6月に大学日本代表で臨時コーチを務めた際に間近でプレーを目の当たりにし、「悪いところが見当たらなかった」と話している。特筆すべきポイントは、打球に対して力まず、常に余裕を持ってアプローチできているところ。そのため難しいバウンドにもグラブがスムーズに出て、悠々と処理するケースが多い。

 また、フットワークに関しても細かいステップが光る。井端監督も「二の足だけでなく三の足くらいまで出て対応できる」と評価する。三遊間の深い位置からも一直線でファーストまで強い送球が投げられる肩の強さも備えており、試合でのプレーだけでなくぜひシートノックから見てもらいたい選手である。

 さらに関係者たちの評価を高くしているのが、常にレベルアップしようという姿勢がみられる精神力だ。

 攻守に高いレベルのプレーを見せている宗山だが、単純な脚力はそこまで突出しておらず、一昨年12月の大学日本代表候補合宿で行われた50メートル走のタイムも24人中15位タイという結果に終わっている。

 しかし、彼はそこから走力強化に着手。約半年後に行われた昨年6月の合宿では、短期間で0.2秒タイムを短縮してみせた。ちなみに2度の合宿に参加していた選手の中で、タイムの伸び率では宗山がトップだった。既に高い評価を得ていながらも、基本的な脚力アップに地道に取り組んで数字として成果を出せるという点は見事という他ない。

 冒頭でも触れたようにプロスカウトからの評価も下級生の時から一貫して高く、よほどの不振や大怪我に見舞われない限りは、複数球団による1位指名の可能性は極めて高いと言える。昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿でも、これまでにない数の報道陣が宗山を目当てに訪れており、すでに“宗山ドラフト”が幕を開けていることを感じさせた。

 宗山にとっては、これからドラフト会議当日まで常に高い注目を集めるとともに、プレッシャーもかかる日々が続く。それを乗り越え、結果を残すのが本当のスターとも言えるのではないか。まずは3月に行われる侍ジャパントップチームの強化試合で、持ち味を存分に発揮し、全国の野球ファンを唸らせるようなプレーを見せてくれることを期待したい。

[取材/文: 西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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