『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』(どちらもTBS系)などエッジの効いた作品を世に送り出してきた宮藤官九郎&磯山晶プロデューサーとのタッグで送るTBS系新金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(毎週金曜22時)。本作で主演を務めるのが、宮藤と同じ大人計画に所属し、これまでも数々の宮藤脚本ドラマに出演してきた阿部サダヲ。阿部にとって宮藤脚本で民放ドラマ主演を務めるのは初となる。オファーを受けたときは「これは頑張らないと」と気合が入ったという阿部が、盟友とも言える宮藤や、コンプライアンス重視の時代に「ぶっこんできた」という奇想天外なストーリーの見どころを語った。

【写真】「これは頑張らないと」宮藤脚本に気合十分の阿部サダヲ、撮りおろしショット

■宮藤脚本で民放ドラマ初主演!「これは頑張らないと……」

 阿部演じる小川市郎は、1986年昭和61年)に中学校で体育を教える教師。野球部の顧問を務め、今の時代では考えられないような不適切な言動で「地獄のオガワ」と恐れられている人物。そんな市郎が令和の時代にタイムスリップしてしまい、コンプライアンス重視の時代で大暴れをする……という物語だ。

 物語のスタートにはある告知が入る。コンプライアンスを逆手に取った手法だ。阿部も「このフォーマットを考えつくというのがすごい。さすが宮藤さんと磯山さんだなと。いまはテレビ番組を作るのも、いろいろ規制が多くストレスもたまっていると思うんです。そんなたまったものをどうやったら吐き出せるか……まさに素晴らしいアイデアだなと」と笑う。

 宮藤の脚本を読んだ際、阿部は「ぶっこんできましたよね。なかなか最近ではこういう役をやっていませんでしたから」と笑うと「宮藤さんの脚本で磯山さんがプロデュース、金子文紀さん演出のTBSドラマで主演ですからね。これは頑張らないと……」と意気込んだという。

 前述した『池袋ウエストゲートパーク』では問題行動の多い交番巡査・浜口、『木更津キャッツアイ』では、岡田准一演じるぶっさんの先輩・猫田を演じ、作品をかき回すキャラを演じたが、本作では主演を務める。

 阿部は「これまで宮藤さんの脚本で演じてきた役って、結構作品をぶっ壊していい役だったのですが、今回は主演ということで、そのさじ加減が難しいかなと思ったのですが、意外と主演でもぶっ壊せそうなところがあるんですよね」とニヤリ。一方で笑いのなかに垣間見せるセンチメンタルな部分も市郎は担う。「壊しながら刺さる言葉を発するなど、メリハリもあって。宮藤さんの描くダメおやじって、ただダメではなくかわいげがあるので、そこはしっかり演じていきたいです」とプランを明かしていた。

■盟友・宮藤官九郎との関係性 作品についての話は「全くしない」

 「大人計画」では何度も同じ舞台を踏み、宮藤脚本作品への出演も枚挙にいとまがない。年齢が同じなど、阿部と宮藤の共通点は多い。今回も作品についてなにか話をしたのか聞くと「そういう話は全くしないんですよ」と苦笑い。

 それでも阿部は「同い年ですし、だいたい言わんとしていることは分かるんですけれどね」と照れくさくて面と向かって話はしないが、相手が考えていることはなんとなく伝わるという。「最近ではLINEみたいなツールもあるので、たまにやり取りはするようになりましたが」と笑うと「今回も直接言われていませんが『よろしく』というのは、脚本を読んでいると感じ取れる部分はありますね」と語る。

 脚本家であり、俳優として同じ舞台に立つこともある。さらにバンドメンバーという側面も持つ宮藤だが、阿部にとっては「あまり役者として絡んだことがないので、やっぱり作家とか作り手というイメージの方が強いですかね」と関係性について述べると「僕らの知らないことをたくさん知っていますからね」と笑う。

 その一例として大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合ほか)のエピソードを挙げた阿部。「宮藤さんが急にリオオリンピックに行くと聞いたんです。僕らは『宮藤さん、なにか東京オリンピック関係の仕事をするのかな』と話していたんです。そうしたら大河ドラマで……。あの作品で僕も出演させていただきましたが、宮藤さんからしてみれば、僕がお話をいただくずっと前から知っていたわけですよね。作家なんだし。そういうところを考えても、やっぱり作り手側というイメージが強いんですよね」。

■撮影現場で子どもに言われた「誰ですか?」に奮起! 「もっと頑張らなければ」

 「最近ではこういう役をやっていなかった」と本作の市郎について語った阿部。以前は、キレキレなキャラで作品に勢いをつける人物を演じることも多かったというが、久々だけに「キレッキレで行きたい」と意気込む。

 それでも令和のゴールデンタイム連続ドラマ。「僕的には全部笑いに変えていきたいと思い切りやっていますが、そこはちゃんと金子監督がさじ加減を見てくれていると思います」と演出陣には絶大な信頼を寄せる。

 ギリギリを攻めながら、しっかりとファミリー層にもリーチしたい……という思いもあるという。「この間、撮影現場の近くに子どもたちがいて。僕のところにやってきて『誰ですか?』って聞いたんです」と切り出すと「『阿部サダヲという俳優です』と答えたら『へー』って。そのとき『よし、もっと頑張らなければ』と思いました」。

 そのために率先して子どもたちにも楽しんでもらえるような芝居もしているという。演出を務める金子監督からも「『木更津キャッツアイ』の猫田や『タイガー&ドラゴン』(TBS系)のどん太でできなかった全部をやってほしい」と言われているという。

 とにかくフルスピードでぶっ飛ばす痛快なドラマになっているという阿部。共演者も仲里依紗(犬島渚役)、磯村勇斗(ムッチ先輩こと秋津睦実役)、吉田羊(向坂サカエ役)、山本耕史(栗田一也役)、古田新太(ある男役)など実力派がそろった。「とにかく楽しいです」と充実した撮影であることを明かすと「まだどんな役かはお話できませんが、古田さんは注目です。『なるほどこう来たか!』と思っていただけると思います」と期待を煽る。

 劇中には1986年当時はやっていた風俗や文化が多数登場する。阿部は「監督やプロデューサー陣は分かるのですが、若いスタッフだと知らない事も多いんですよね。『毎度おさわがせします』(TBS系)とか出てきますが、助監督さんとかポカンとしていたり……」とジェネレーションギャップも見どころに挙げると「当時の衣装へのこだわりなどを含めて令和と昭和の違いもぜひ楽しんでください」とアピールした。(取材・文:磯部正和 写真:上野留加)

 ドラマ『不適切にもほどがある!』は、TBS系にて毎週金曜22時放送。

阿部サダヲ  クランクイン! 撮影:上野ルカ