ジャパンモビリティショーは成功したが欧米の「オートショー」は衰退気味! 如何ともしがたいメーカーの推しと消費者の推しのズレ

この記事をまとめると

■欧米でのモーターショーの衰退ぶりはコロナ禍以降さらに進んでいる

■日本や欧米では展示会が主体、アジアなどの新興国ではセールス現場ともなっている

■メーカーが推したいクルマと実際に街を走っているクルマとの温度差が激しい

欧米各国のモーターショーから華やかさが消えている

 新型コロナウイルス感染拡大とタイミングを合わせての開催中止も影響しただろうが、欧米モーターショーの衰退傾向に歯止めがきかない状況が続いている。

 アメリカを例に取れば、コロナ禍となり開催中止が続いていた北米国際自動車ショー(通称:デトロイトショー)は、2022年に久しぶりに開催となったものの(1月から9月へ開催時期を変更)、以前のような規模に近い出展をしたのはアメリカンブランドのみとなり、ほかにはトヨタスバルがブースを構えるのみ。国際的にも華々しかった以前の面影を完全に失うものとなった。ニューヨーク国際オートショーもコロナ禍となってからはショーにてワールドプレミアされる新型車がほんのわずかという状況となった。

いま世界中のオートショーで閑古鳥が鳴いていた

 欧州はもともとコロナ禍前から環境保護団体がショーの開催に強く抗議するようになっていた。オートショーは地球環境に良くないICE(内燃機関)車の販売促進を目的としているとして、開催に合わせてメーカーへ、より環境負荷の重いとされる「SUVの開発及び生産禁止」を要求したり、会場内外で開催についての妨害工作ともとれる活動なども行われた。

 そのような流れもあり、「最新モデルの祭典」といった趣では開催できなくなってきたこともあり、「フランクフルトショー」ともいわれていた「IAA」は2021年開催より会場をミュンヘンに移し、BEVなどNEV(自然エネルギー車)中心のショーへと性格を変えて開催されるようになった。

いま世界中のオートショーで閑古鳥が鳴いていた

 いずれにしろ欧米のオートショーは縮小開催や情報発信力の低下傾向が否定できないようになっている。そんななか、2023年秋に開催された「東京モーターショー」改め「ジャパンモビリティショー」は、さまざまな新しい試みを取り込み、なんとか踏ん張ったというか、少なくとも欧米ほどの地盤沈下傾向もなくにぎやかに開催されたものと筆者は感じている。

いま世界中のオートショーで閑古鳥が鳴いていた

 そもそも欧米や日本のオートショーは、会場内での新車販売というものには重きを置いていない。日本では主催が日本自動車工業会ということもあるので、「日本の自動車産業をアピールする場(つまり産業博覧会的)」という印象がかなり強い。

 新車を販売するディーラーの業界団体が主催する欧米のオートショーでは、新車購入検討の参考として展示車を見て触ってもらい、試乗してもらうことぐらいになっている。

会場での主役はNEV! しかし現実はICE

 一方で、アジアなど新興国のオートショーは、会場内での新車販売を積極的に行っている。そのため各メーカーブースにはセールスマンが多く配置され、各セールスマンが担当顧客を積極的に会場に呼び込むこともあり、来場者も多くにぎやかなものとなっている。そしてショーのホームページには、開催期間中のブランド別販売台数が公表されることもある。

いま世界中のオートショーで閑古鳥が鳴いていた

 このようなショーの性格が新興国と日本や欧米で異なることに加え、NEVの扱い方で苦慮している様子もうかがえる。たいていのショーでは正式開幕に先立ち、メディアの取材のためにメディア関係者しか会場に入ることのできない「プレスデー」のようなものを設定するのだが、そのようなプレスデーではいまどきなら主役は完全にNEVとなる。

いま世界中のオートショーで閑古鳥が鳴いていた

 しかし、いくらNEVが世界的に注目されているとはいえ、まだまだICE車の販売がメインとなる地域ばかりなので、そのまま一般公開日を迎えると一般来場者としては違和感を覚える展示内容になってしまう。当然プレスデーとは異なり、一般公開日にはICE車の展示を増やすなど、手間が増えていることなどもあり、時間とお金がかかるわりにはメリットが薄いとして、欧米では出展を辞退するブランドも相次いでいる。

 欧州のショーではとくにNEVに偏ったショー内容になるケースが多く、HEV(ハイブリッド車)を得意とする日系ブランドなどは出展メリットが薄いと判断しているのか、最近では出展しないブランドも目立っている。

 つまり、自動車業界の最新トレンドはNEVなのだが、実際の販売現場ではHEVが注目されている。まだまだICE車が存在感を示しているので、その辺りの乖離状況がオートショーの魅力を減退させているように見える。

いま世界中のオートショーで閑古鳥が鳴いていた

 政治レベルではどこでも「ゼロエミッション」とか、「カーボンニュートラル」などを声高に叫んでいるので、欧米や新興国の主催者ではNEVを得意とするブランドを優先させる傾向も散見できるが、そうなると会場内ではBEVを得意とする中国メーカーの存在感が大きくなる。しかし、実際に会場の外、つまり街なかへ出るとそこまで中国メーカー車が走っているわけでもない。

「NEV普及の過渡期ならでは」とも表現できるのだが、会場内と街なかとの乖離のようなものもが、オートショーのプレゼンスを下げてしまっているようにも見える。

ジャパンモビリティショーは成功したが欧米の「オートショー」は衰退気味! 如何ともしがたいメーカーの推しと消費者の推しのズレ