日本人の海外留学者数が再び増加しています。ますますグローバル化する社会に対応するためには、やはり語学、とくに英語力は将来の選択肢を広げる重要なスキルといえるでしょう。現地に留学をするのか、国内で英語を学習するのかは悩ましいところであり、子どもと親で意見が分かれることもよくあります。本稿ではファイナンシャルプランナーの阿部瞳氏が、帰国後の就職活動に直結しやすい大学生の留学を例に、現地留学とオンライン留学のメリット・デメリットについて解説します。

“オンライン留学”はどの程度費用を抑えられるか

まずは現地留学にかかる費用からみていきましょう。2021年度の日本学生支援機構による国(地域)別日本人留学生数の上位5ヵ国はアメリカ合衆国、韓国、カナダ、英国、フランスとなっています。留学スタイルに応じて留学にかかる総費用も変わりますが、平成30年度版の「海外留学経験者追跡調査」では、留学の総費用は平均217万円と報告されています。

全留学期間を通じて実際にかかった総費用(学費・生活費・渡航費その他すべての経費)は以下の通り。

50万円未満:16.0% 100万円未満:26.4% 200万円未満:30.3% 500万円未満:16.7% 750万円未満:4.0% 1,000万円未満:3.1% 1,000万円以上:3.3%

また、同じ調査で留学時の1ヵ月の支出についてみてみると、宿舎費(食費除く)は平均で4.4万円、生活費(食費含む)は平均4.3万円、学費は平均6.8万円で、合計の支出の平均は15.5万円となっています。

この金額からは、どんな印象を受けるでしょうか。

子どもの関心は「留学するならやっぱり英語が母国語の国。留学生の数も多い欧米が安心かな」と、留学先の国に向いていますが、親は「希望する先に行かせてあげたい気持ちもあるが、想像以上に費用がかかりそう……最近はコスパの良いオンライン留学っていう方法もあるみたいだし」と、コストが気になるのが本音ではないでしょうか。

オンライン留学では、自宅から海外の学校の授業を受けられます。実際の海外留学と同じ勉強時間を確保し、同じ効果を得られるといわれています。短時間で語学力を向上させたいが留学費用は抑えたいというニーズを満たせる選択肢の1つです。

オンライン留学の場合、現地留学と授業時間は同じでも、費用は約3分の1~6分の1に抑えられることがあります。オンライン留学なら現地での滞在費がかからない分、留学の勉強量を保ちながら費用を大幅に抑えることができるのです。

親としては「現地留学と同じレベルの授業を受けられて、慣れない環境でのストレスや心配もないし、治安の面でも安心!」と大きなメリットを感じるでしょうが、子どもとしては「授業時間外に現地の人とコミュニケーションは取れないよね? 現地の授業時間だったら、時差も大変そう……」と不安になるケースもあるようです。

そもそも留学で得られる効果とは?

留学先の国やプログラム、学校などによって差はありますが、留学には相当な費用がかかります。

そもそも留学を通じ、どのような力を身につけられるのでしょか。代表的なものを3つ挙げてみます。

語学力

現地留学、オンライン留学ともに英語で授業を受けますが、現地留学では普段の生活そのものがすべて語学の勉強で、実践の機会となります。一方、オンライン留学では、授業以外の日常生活で、家族や友人とは日本語で会話をします。

コミュニケーション力

外国から日本に来る人は、日本に興味があり、日本語もある程度話せるケースも多いため、コミュニケーションを取るのは比較的容易です。一方、相手が日本や日本人に興味があるとは限らない相手とのコミュニケーションには一筋縄にはいかない場面も。現地への留学でもオンライン留学でも、授業内でさまざまな国の人たちと交流するなかで、バックグラウンドの違いを乗り越え、意思を通わせる力を身につけられるでしょう。

行動力

どんな方法で留学するにしても、自ら調べて手配をする……といった準備が必要です。さらに現地では、留学先の学校や宿舎の学生たち、ホームステイ先の家族や近隣住民との交流など、積極的に外出や交流の機会を持つことが大切です。この過程で、自ら行動を起こしていく力が身につきます。

語学を身につけることだけが目的であれば、日本国内でのオンライン留学でも十分かもしれません。ただし、海外での生活や文化に触れることで得られる経験値は、実際にその国に滞在しなければ得られないものであり、将来の目標に大きな影響を与え、大学生にとっては就職活動でのアピールにもなるはず。

子どもはやはり、現地への留学を希望するかもしれません。

留学のためには家計の準備が不可欠

留学には大きなコストがかかりますが、実際に留学をした人は、どのように資金を調達しているのでしょうか。平成30年度版の「海外留学経験者追跡調査」をみると、留学の資金調達方法について、「家族の援助」がもっとも多く54.1%。次に「すべて自費」(29.2%)、「日本の在籍校の奨学金」(11.3%)が続きます。

子どもの教育プランのなかに留学の選択肢があるならば、家計の準備が必要不可欠です。ポイントは早めに準備を始めること。奨学金制度の活用など、具体的な対策についての情報収集をしておくことも重要です。具体的な留学準備をする前に、留学費用を組み込んだライフプランを立ててみましょう。そうすることで、どんな準備や対策が必要なのかをより明確にすることができます。

子どもの将来の選択肢を広げる意味でも、留学を考える親は多いでしょう。現地留学とオンライン留学、それぞれにメリット・デメリットはありますが、いずれにしてもお金がかかるのは事実です。

せっかく留学するなら事前に情報収集と計画をしっかり行い、費用対効果を最大にしたいものです。

(※写真はイメージです/PIXTA)