a flood of circleが格別な夜を提示する『A FLOOD OF CIRCUS 2024』の2日目が1月19日恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催された。これまでは1日に3~6バンドを招くイベント形式で行われてきた“A FLOOD OF CIRCUS”だったが、今回はツーマンを4公演という試み。

この日はフラッドが2013年に発表したフルアルバム『I'M FREE』に虜になったと公言し、佐々木がそのラブコールに応え「シャンプーソング」を提供したLiSAと対峙するという刺激的な組み合わせ。LiSAはフラッドへの愛とリスペクトを伝えながらエネルギッシュなパフォーマンスを見せ、フラッドもその気持ちを受け止めながらすべてを惹き込む大熱演。多幸感に満ちた空間が広がっていた。

開口一番、「楽しむ準備いい? 最高に楽しんでいきましょう、ピース!」と満員のフロアへ呼びかけたLiSAは「best day, best way」から完全にフルスロットル。オールスタンディングに2マンという普段とは異なる環境であろうが、まったく躊躇がない。華やかな歌声を響かせ、会場の奥まで視線を飛ばし、手を振り、まるでワンマンライブかのような熱気を生み出していくのだ。

大きなハンズクラップを背に駆け出し、中盤からヘヴィに覚醒する「Rising Hope」で軽やかに舞うだけじゃない、培ってきた強さを見せつけつつ、「ROCK-mode」ではまさしく自由自在なパフォーマンス。リズムの取り方も声色も多彩で、モニターに足をかけながらグッと力を込めて歌い上げていく。

暗転しても止まない歓声の中、『I'M FREE』に衝撃を受けて以来、何度もフラッドのライブへ足を運んできたと語ってからの勢いもまた凄かった。「ANTIHERO」ではステージを端から端まで動きながらフロアから発せられるエネルギーを受け止め、それをまた跳ね返す。この日の喜びを爆発させるように届けた「リスキー」のドライブ感も抜群だ。

そして、妖艶な「GL」の後に続けた「炎」はLiSAの多面的な魅力を見せつけた1曲。厳かなピアノの調べから、ステージ中央で凛とした姿で雄大に歌い出す。すべてを歌に込めるためか、一歩も動かず、感情の機微も繊細に表現していくのだ。観客も聴き入り、ロックで熱くしてきたこれまでの流れとはまた違う魅力が本当に素晴らしかった。

ヒートアップし続けるフロアへ向けて、「みなさん、おめかししてきたのにあっという間にグチャグチャですね(笑)」とおどけつつ、佐々木を「いつもいつも力強く連れて行ってくれるロックンロールヒーロー」「ウソがない男」と評してから披露したのが「シャンプーソング」だった。思わずサポートメンバーにギターのコードを確認するほどの緊張感も漂っていたが、「全部全部、洗い流す準備はいいかー?」という言葉から爽快に響かせていく。そのムードに引っ張られた観客も拳を突き上げ、会場の盛り上がりはまさに天井知らずだ。

終盤に入ってさらにアクセルを踏み出していき、ポップでアッパーな「say my nameの片想い」、コールの量が尋常ではなかった「だってアタシのヒーロー。」と続き、締めくくりには説明不要の名曲「紅蓮華」をセレクト。真紅の照明を浴びながら激しくステップを踏み、会場全体を覆い尽くすような声量を轟かせていき、大汗を滴らせながら「この後もおもいっきり楽しんでいってね!」とステージを後にした。

対するフラッドは、「おはようございますa flood of circleです」と佐々木の恒例の挨拶から、LiSAの愛に応えるように『I'M FREE』のタイトル曲「I'M FREE」でライブをスタートさせていくが、初っ端からロックンロールの旨味が本当に濃い。鋭いアオキテツ(Gt)のフレーズ、HISAYO(Ba)と渡邊一丘(Ds)のリズム隊もうねりを上げ、色っぽい佐々木のヴォーカルが絡み合う。ロックバンドたるもの、いつでも臨戦態勢ではあろうが、その強靭さをガツンと見せつけるのだ。

「かかってこい!」という佐々木の挑発に観客も負けてなるものかといきり立って拳と声を上げた「Dancing Zombiez」から攻め手は緩めないと言わんばかりに「ゴールド・ディガーズ」という流れもド迫力。空間を切り裂くようなサウンド、その合間から流れ出るグルーヴ。そんな空気の中で放たれた「如何様師のバラード」は佐々木が「ロックンロールやるぞ!」と客席へ飛び込んでフロアを練り歩きながら歌い叫んだこともあって、呆気にとられた人もいたはずだが、そんなことは関係ない。すべてを巻き込んでこそ、求めている光景が広がっていくのだろう。

そんなイカれた状況から削ぎ落としたアレンジが秀逸だった「オーロラソング」、ミドルテンポな「月面のプール」へと繋いでいったが、ゆったりとしたナンバーになってもテンション感が落ちないのはフラッドの強み。エッジの効いた音作り、鮮烈な歌声にドキドキさせられてしまい、鼓動は常に高まったままなのだ。

また、新たな始まりを告げるようなギターリフが印象的な「New Tribe」を奏でた後にプレイされた、プロデューサーとして後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)を迎えた新曲「キャンドルソング」は強く心に残った人も多いはず。ラストの「ゆらゆらゆら~」と繰り返されるコーラスワークは言わずもがな、心の炎を燃やすように歌う佐々木の姿もとても麗しかった。

そして、その後は一気呵成の畳み掛け。「Boy」で加速して、「シーガル」でより観客のリミッターを外し、痛快すぎるロックンロールサウンドを誇る「月夜の道を俺が行く」から本編ラストとして「ベストライド」を叩き込むというエグさ。「マジになるなら今だぞ!」という佐々木の呼びかけに観客は感情を爆発させ、驚異的な大合唱をステージへと向けていく。最高の一体感が生まれた瞬間でもあった。

アンコールでは「伝説の夜を君と」を披露し、LiSAを呼び込んで「シャンプーソング」をツインヴォーカルで鳴らすという極上のセッション。当然、尋常ではない盛り上がりとなるが、もっと驚いたのはその後。「もう1回やってもいいかな? オレが聴きたいだけなんだけど」と佐々木が提案し、「シャンプーソング」を再びプレイしていく。同じ曲を連続ではあるのだが、さらなる盛況っぷりを見せるフロア。いい曲は何度聴いてもいい。リピートに耐えられるのが名曲の証なのだ。

LiSAがステージを後にし、最後の曲としてセレクトされたのは「GO」。高まりに高まった観客に食らわすには持ってこいな曲だ。客席の照明もつく中、〈止まってなんかいられねえ〉〈走り続けてく〉と叫びまくる佐々木。祭りの締めは寂しさを吹き飛ばすぐらい派手なほうがいいに決まってる。とても輝かしく胸が熱くなるパフォーマンスだった。

この日も互いに持ち味を存分に活かしながら、他にはない熱を生み出してくれた『A FLOOD OF CIRCUS 2024』。3日目となる2月9日は東京キネマ倶楽部にてドミコと、最終日となる2月14日にはZepp DiverCityにてUNISON SQUARE GARDENとぶつかり合うわけで、これもまた激戦になること必至。今から楽しみでならない。

文:ヤコウリュウジ 写真:Viola Kam (V’z Twinkle)

<公演情報>
a flood of circle『A FLOOD OF CIRCUS 2024』

1月19日 恵比寿ザ・ガーデンホール

セットリスト

■LiSA
01 best day, best way
02 Rising Hope
03 ROCK-mode
04 ANTIHERO
05 リスキー
06 GL
07 炎
08 シャンプーソング
09 say my nameの片想い
10 だってアタシのヒーロー。
11 紅蓮華

a flood of circle
01 I'M FREE
02 Dancing Zombiez
03 ゴールド・ディガーズ
04 如何様師のバラード
05 オーロラソング
06 月面のプール
07 New Tribe
08 キャンドルソング
09 Boy
10 シーガル
11 月夜の道を俺が行く
12 ベストライド
EN1 伝説の夜を君と
EN2 シャンプーソング(with LiSA)
EN3 シャンプーソング(with LiSA)
EN4 GO

<イベント情報>
a flood of circle『A FLOOD OF CIRCUS 2024』

※終了公演は割愛

2024年2月9日(金) 東京キネマ倶楽部
ゲスト:ドミコ

2024年2月14日(水) Zepp DiverCity TOKYO
ゲスト:UNISON SQUARE GARDEN

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2338681

公式サイト:
http://www.afloodofcircle.com/

『A FLOOD OF CIRCUS 2024』1月19日 恵比寿ザ・ガーデンホール a flood of circle×LiSA