正体不明の犯人を推察しながら、ハラハラ&ドキドキの展開も楽しめるクライムサスペンスドラマ。日本ではこれまで「ガリレオ」や「古畑任三郎」などの名作が世に輩出されてきたが、視聴者を魅了するのは海外作品も例外ではない。その一つが、オンライン動画配信サービスHulu」にて全話独占配信中の「プレイ・フォー・ブラッド」だ。本作は、国際エミー賞受賞のプロデューサーが手掛けるメキシコ発のクライムサスペンス。タブロイド紙の記者や警部補らが、奇妙な連続殺人犯を追って、徐々に真相を明らかにしていく様子が描かれる。本記事では、全10話のストーリーを見どころと共に振り返る。(一部作品のネタバレを含みます)

【写真】不気味な存在感…怪しい儀式を行う霊媒師

メキシコで発生した奇妙な連続殺人事件…被害者の共通点が明らかに

メキシコ独立記念日の前夜祭では、首が切り落とされているだけでなく身体中がバラバラにされ、挙句の果てに心臓がえぐり取られるという衝撃の殺人事件が発生。そこで事件を担当することになったメキシコ警察のモンドラゴン警部補(アナ・ブレンダ・コントレラス)と、大手新聞紙からタブロイド紙に異動になった記者のカサソラ(アーロンディアス)は事件を追うことに。

そんな中、学芸員のエリサ(ヨシラ・エスカレガ)は博物館に展示されていた“古代アステカ文明の祭壇”に、遺体の一部が祀られているのを発見する。この事件をきっかけにその後数々の殺人事件が起こるのだが、不思議なことにどの遺体も身体の一部が切断されていたり、まるで祭壇を作られているかのように供えられていたのだった…。

その後、古代アステカ文明に詳しいエリサは、文明の“予言の印”通りに遺体が置かれていたことから、一連の殺人は古代アステカ文明の“生贄の儀式”になぞらえているのではないかと仮説を立てる。カサソラも“儀式殺人”の線を信じるのだが、一方のモンドラゴン警部補らメキシコ警察は“現実的ではない”と否定。

なかなか捜査が進まない中、警察たちをあざ笑うかのように次々と犠牲者が現れたことで、次第に被害者たちの共通点が浮き彫りになってくる。実は被害者たちは、金で不正をはたらいたり売春に加担していたりなど、罪を犯した者ばかりだったのだ――。

■物語の鍵を握る怪しい霊媒師の存在

本作でキーパーソンとなるのは、“国の巫女”と呼ばれる霊媒師の存在。その霊媒師はメキシコの実質トップと呼ばれている大臣を始め、様々な客に儀式をおこなうことで教えを説いたり、不思議な力で心を操ったりしていた。そして文明に詳しいエリサにも近づき、彼女にも怪しい儀式を施すようになる。

実は霊媒師がエリサに近づくのには“ある理由”があるのだが、この霊媒師の登場で事件は思わぬ方向へと展開していく。そして事件が終焉を迎えるとき、霊媒師の一声によってこれまでの“儀式殺人”と古代アステカ文明の“予言の印”が1本の線となって繋がることとなる。

■考え方が違う記者と警部補…相反する2人がタッグを組んで捜査を進めていく

本作の主人公であるカサソラは生粋の記者で、一度はタブロイド紙に異動になったものの、事件の取材の実績が認められ大手新聞紙に戻るよう打診される。しかし“自分が追い求めたいこと”を重視するカサソラは誘いを断るのだった。あまり現実的ではない“儀式殺人”というエリサからの仮説も柔軟に受け入れ、ひたすら捜査を重ね続けるカサソラ。地位よりもジャーナリスト魂を燃やす姿には心を打たれる。

一方のモンドラゴン警部補を始めとするメキシコ警察は、物語の終盤まで“儀式殺人”を受け入れることはなく、犯人逮捕に苦戦を強いられる。そして警察の上層部から圧力をかけられた結果、なんとカサソラを誤認逮捕してしまうのだ。

それでもめげないカサソラの姿には脱帽だが、警察の“儀式殺人”への理解のなさが事件解決の大幅なタイムロスにつながり、さらに多くの被害者を生んでしまう姿は非常にもどかしいものだった。ネット上でも、「あんなに事件に真っすぐなカサソラを逮捕するなんて」「警察は誰でも逮捕しちゃうの?」といった意見が多く見られた。

そんなモンドラゴン警部補も、最終的にはカサソラとタッグを組み事件を捜査するようになる。相反する2人の間にいつしか友情なようなものが芽生え、互いに協力し合っていく様子は、本作の見どころの一つと言えるだろう。

■ダークな連続殺人事件の中に描かれる“リアルな人間ドラマ”

物語はこの不可解な連続殺人事件を主軸に進められるのだが、中には様々な人間ドラマも描かれている。

例えば、昇進の話が来ていたモンドラゴン警部補に妊娠が発覚し、ハードな警部補の仕事をさせたくない夫が幾度となく休暇を促すようになる。それでも犯人を突き止めようと奔走するモンドラゴン警部補。終いには夫が職場までやって来たことで、一度夫婦は仲違いしてしまう。仕事と家庭の両立に悩むモンドラゴン警部補の姿は、事件を捜査する姿とはまた違った一面を見せ、アナ・ブレンダ・コントレラスも見事に演じ分けていた。

また、カサソラもエリサと出会い惹かれ合ったことで、2人は恋仲になる。そして恋人として過ごす多幸感あふれるシーンなど、本作では登場人物たちのプライベートな描写も丁寧に映し出される。

突然起こる猟奇的な殺人事件と、怪しい霊媒師の存在…。“クライムサスペンス”というだけあって、全編を通して不穏な音楽や空気感が流れ、緊迫感あふれるシーンも満載となっている。

「プレイ・フォー・ブラッド」より/(C)2022 Pray for Blood Holdings, LLC