BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)の放送枠「よる8銀座シネマ」では、1月30日(火)に「回路」、1月31日(水)に「CURE」、2月1日(木)に「ドッペルゲンガー」のラインナップで、黒沢清監督による3作品を放送する。

【写真】パソコンの画面に釘付けになる加藤晴彦“川島亮介”

■1シーン1カット撮影を取り入れた「CURE」

2020年の第77回ベネチア国際映画祭において、「スパイの妻」で銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢監督。1983年公開の「神田川淫乱戦争」で長編監督デビューを果たすと、1997年公開の「CURE」で世界的に注目を集める。その後2001年公開の「回路」、2003年公開の「アカルイミライ」は共にカンヌ国際映画祭に出品。ホラー作品を多く制作してきた黒沢監督だが、ホームドラマという新境地に挑戦した2008年の「トウキョウソナタ」では、カンヌ映画祭の「ある視点」部門で審査員賞を受賞している。

そんな黒沢監督が世界的に注目されるきっかけとなった作品「CURE」は、猟奇的な殺人事件を追う刑事と記憶障害を持つ青年の対決を軸にしたサイコサスペンスだ。本作では、主演の役所広司が第10回東京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。「1カットの中で正気から狂気に変わっていく、普通からちょっとおかしな状態になるのを流れの中で捉えたいと意識した」と語る黒沢監督は、ほとんどのシーンを1カットで撮影。“1シーン1カット”ならではの臨場感は、本作の見どころの一つとなっている。

また麻生久美子と加藤晴彦が共演した「回路」は、インターネットの世界を舞台に、ひたひたと忍び寄る恐怖を描くネット・スリラーだ。黒沢監督はトークイベントで本作について、“存在そのものを消滅させようとするのを幽霊の目的にさせよう”という思いと、“宇宙人が侵略してくる映画を作りたいという欲望”を組み合わせた結果、妙な映画になったと語っている。人の心に巣食う恐怖や絶望、終末感が漂う、まさに黒沢ワールドと言える1作だ。

そして「ドッペルゲンガー」は、“ドッペルゲンガー現象”にまつわる恐ろしさの裏側にコミカルさが潜む作品。自らの分身に遭遇した主人公の行く先は…。ホラーかと思いきやコメディ要素あふれる展開には、ネット上で「恐怖と笑いの要素が混ざった異色の映画」「二人の役所広司同士の掛け合いが楽しい」などの声が寄せられている。主人公とドッペルゲンガー1人2役を演じ分ける役所の好演に注目だ。

■「幽霊に会いたいですか」…インターネットに表示された不気味なメッセージ

1月30日(火)夜8時より放送の「回路」では、一人暮しの平凡なOL生活を送るミチ(麻生久美子)の周りで、同僚の自殺や勤め先の社長の失踪など無気味な事件が続いていた。一方、大学生の亮介(加藤晴彦)が始めたインターネットの画面には、アクセスしていないのに「幽霊に会いたいですか」という不気味なメッセージが現れる。同じ大学で、その奇妙なサイトを研究している春江(小雪)に相談をもちかけるが、続発する異変の中で、春江も、研究仲間も、学生達も次々と消えていく――。

1月31日(水)夜8時より放送の「CURE」では、1人の娼婦が惨殺される事件が発生。現場に駆けつけた刑事の高部(役所)は、近頃連続している殺人事件で被害者の胸をX字に切り裂くという手口が共通していることに気付く。しかし特異な手口を共通して使うのは、まったく無関係な複数の犯人たちで、彼らはそのことを認識していない様子だった。そんな中、記憶障害を持つ男・間宮(萩原聖人)と出会った人物が、その話術に引きずり込まれ、魔が差したように妻をX字に切り裂いてしまう――。

そして、2月1日(木)夜8時からは「ドッペルゲンガー」を放送。エリート研究者として人工人体の開発に取り組む早崎道夫(役所)は、上手くいかずストレスを募らせていた。早崎だったが、ある日、自分とそっくりの外見を持つ分身“ドッペルゲンガー”と出会う。内向的で真面目な早崎とは対照的に、社交的で欲望に忠実なドッペルゲンガー。そんな彼は、早崎の研究を成功するためにあらゆる手を使って協力し始める。そのお陰で人工人体は完成するのだが、早埼は次第にドッペルゲンガーの存在が疎ましくなってくるのだった――。

「ドッペルゲンガー」より/(C)2002「ドッペルゲンガー」製作委員会