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 動物たちの目に、この世界はどのように見えているのか? 最新のアニマルビュー・カメラを通せば、それを体験することができるという。

 画期的なのは、このカメラが動物たちが見ている世界を、これまでは不可能だった動画で撮影できることだ。

 動物の研究者にとって、彼らが動く世界の色や信号を認識する方法を理解するのはとても大切なことだ。

 学術誌『PLOS Biology』(2024年1月23日付)で発表されたカメラシステムは、それを可能にする強力なツールである。

 それでは、このカメラが撮影したミツバチや鳥たちが見えている世界をまずは体験してみよう。

【画像】 動物たちはどんな世界を見ているのか?

Camera recreates colour vision of different animals

 我々人間が普段目にしている風景は、他の生き物には同じように見えていない。と言うのも、生き物が光を感じるための器官がそれぞれ違うからだ。

 たとえば、人間の目に紫外線はまったく見えないが、ミツバチや鳥の目にははっきり見えている。

・合わせて読みたい→動物と人間の見え方の違い

 人間以外の動物たちにこの世界はどう見えているのか? これはとても興味深い話であるとともに、動物を理解するうえでも大切なことだ。

 なぜなら、色や信号の見え方は、さまざまな動物が周囲の世界とやり取りし、そこを動き回るために大切な要素だからだ。

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鳥ビジョンで見たチョウの色 / image credit: Daniel Hanley / PLOS Biology (Open Access)

動画で動物たちのみている世界を再現できるカメラ

 これまでも動物たちが見ている世界を見るためのカメラはあったが、大きな欠点を抱えていた。それは静止画でしか、動物の世界を映し出せなかったことだ。

 動物にとって動きはとても大切なものだ。エサ探しや求愛のダンスなど、彼らは動いているものを見て、重要な判断をしたりする。

 だから、いくら動物が見ている世界を再現できたとしても、それが止まった状態では重要な部分が抜け落ちてしまっている。

 イギリスのサセックス大学のヴェラ・ヴァサス氏とアメリカのジョージ・メイソン大学のダニエル・ハンリー氏ら研究チームによって開発されたこのアニマルビュー・カメラなら、動物が見ている世界を動画で撮影することができる。

[もっと知りたい!→]犬ビジョン、猫ビジョン、鳥ビジョン。動物たちはどんなふうに世界を見ているのだろう?

 それは既存のマルチスペクトル撮影法に新しいハードウェアとソフトウェアを組み合わせたもので、4つの色(青、緑、赤、紫外線)を同時に記録する。

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image credit: Daniel Hanley / PLOS Biology (Open Access)

動物たちの見ている世界を動画で見てみよう

ミツバチの見ている世界

 以下の動画はミツバチが花の上でエサを集めたり、仲間とやり取りする様子をとらえたものだ。その風景はミツバチの目にはこのように見えている。

・A: 孔雀、B:人間 C:ミツバチ D:犬

 クジャクの羽を写した動画は、さまざまな動物の目から見たクジャクの羽の様子だ(A. 孔雀、B. 人間 C. ミツバチ D. 犬)。同じものを見ていても、動物によって見え方がこんなに違うことがわかる。

日焼け止めを塗った人間の腕のミツバチの見え方

 ハンリー氏が、腕に日焼け止めを塗っている動画も面白い。

 彼の肌の色は、人間の目にもミツバチの目にもさほど変わらないように見える。論文によれば、それは「皮膚の反射率が、波長が長くなるにつれてだんだんと高まるから」であるという。

 だが人間の目には白いはずの日焼け止めを塗った部分は、ミツバチには黄色く見えている。

 ミツバチには紫外線が見えるのだが、日焼け止めはそれを吸収・散乱させる。結果、紫外線の青が弱くなる一方で、緑と赤の光は変わらないので、黄色く見える。

・鳥の目からみたチョウ

 また鳥の目から見たオオアメリカモンキチョウの羽は灰色をしており、ほとんど目立たない。

 ところが、羽の裏側は角度によって紫外線でタマムシ色に輝く。羽の裏側はオスがメスに求愛行動の時に見せるもので、普段は飛んでるときにちらっと見えるぐらいだ。

・鳥の目から見た鳥と空の色

  以下の動画は、木の枝にとまった2羽のスズメマネシツグミ科「マネシツグミ」を映している。その翼には”鳥の白(鳥の目には目立つ白)“の斑点があり、電磁スペクトルの紫外線から可視光線までを反射している。

 だが、それより目立つのは空の色かもしれない。私たちの目に空は青く見える。だが紫外線をとらえる鳥の目に、空は紫外線色に映っているのだ。

ソフトウェアはオープンソースなので自由に利用可能

 ハンリー氏らによれば、このアニマルビュー・カメラは、動物が見ている世界を動画で撮影できる代わりに、静止画に比べて精度が低い可能性があるという。

 だから、静止画で動物の目を再現する技術がすぐに無意味になるわけではない。

 それでも動物が動く世界をどう認識するのか知りたい研究者にとっては、多少精度が低下していたとしても十分使う価値があるようだ。

 なお使用されたカメラは市販のもので、ソフトウェアもオープンソースだ。

 だから、その気になれば誰でも自由にアニマルビュー動画を撮影することが可能だ。次に動物ビジョンで見た不思議と謎の大冒険を公開してくれるのはあなたかもしれない。

References:Novel camera system lets us see the world through eyes of birds and bees | Ars Technica / New animal-eye-view camera allows us to see colours as animals do / written by hiroching / edited by / parumo

 
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動物は世界が何色に見えているのか?視界を再現できるカメラが開発される