修羅たちによる「最強」vs「最強」を描いた壮絶なバトルファンタジー「異修羅」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほか/ディズニープラスで見放題独占配信・YouTube・ABEMAで見逃し配信)。迫力のバトル描写はもちろんのこと、豪華キャスト陣が演じる個性溢れるキャラクターたちが織りなす重厚な人間ドラマも見どころの本作。1月24日に放送された「第四話」は、黄都の切り札である濫回凌轢ニヒロ(CV:高橋李依)と、チート級の詞術を操る世界詞のキア(CV:悠木碧)がお目見えとなった「濫回凌轢ニヒロと世界詞のキア」。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】大人の色気漂う赤い紙箋のエレア(CV:能登麻美子)

■“最悪の生体兵器”ニヒロの登場、意外と苦労人なヒドウに同情の声

リチア新公国との全面戦争を避けるため、リチアを統治する警めのタレン(CV:朴ロ美)の暗殺を企てる鎹のヒドウ(CV:岡本信彦)。ヒドウはタレン暗殺の切り札として、かつて黄都の一方面軍を単機で壊滅させ、現在は幽閉されている濫回凌轢ニヒロを釈放する。ヒドウはニヒロに、リチアに潜伏していた精鋭の諜報部隊10名が全滅したことを告げ、「お前なら何人でやれる?」と問いかける。するとニヒロは、うっすら笑みを浮かべながら「ひとりと一体かな」と答えるのだった。

「現存する記録上の 最悪の生体兵器だ」という触れ込みで登場したニヒロは、一見すると涼しげで落ち着いた雰囲気ながらも、セリフや表情の端々から危険な香りを漂わせていて、その実力は計り知れないことが伺える。ちなみに「生体兵器」とは、人間以外の生物を兵器に改造したり、あるいはその生物そのものが兵器の役割を果たす場合を指すのが一般的だ。その意味でニヒロはレヴナントと呼ばれる魔族であり、人間ではないために「生体兵器」と呼ばれているのだろう。もしくは彼女が「一体」と呼ぶ巨大な蜘蛛型の相棒こそが「生体兵器」の主役なのかもしれないが、今回は詳しい戦闘スタイルまでは明かされなかったため、そこは次話以降に期待しよう。またこのニヒロの釈放シーンでは、ヒドウも大きな注目を集めた気がする。ヒドウは黄都二十九官のひとりではあるが、いつの間にかリチアとの戦争に関わるさまざまな案件の責任者にされてしまったようなのだ。ヒドウ自身も「どいつもこいつも好き勝手動きやがって」と不満タラタラながら、それでも部下に的確な指示を出し、さらには「明日にでも築城に詳しいヤツを何人か送ってやる」と、有能っぷりを発揮。これにはSNS上でも「ヒドウって悪役じゃなくて単に苦労人なのか……?」、「ヒドウくんは愚痴っても許されるよ」など、同情票が集まっていた。

■大人の色気満載なエレアと無邪気で可愛いヤウィカに夢中

一方、黄都から遠く離れた辺境の地。黄都二十九官の第十七卿である赤い紙箋のエレア(CV:能登麻美子)は、エルフの村に教師として潜伏していた。明日には村を発つ予定のエレアは、お風呂場で教え子のヤウィカ(CV:日高里菜)に詞術を教える。無邪気で心優しいヤウィカとのひとときに、エレアは「私は少しの間だけ 自分がこの村に来た理由を忘れることができた」とこぼすのだった。

お風呂場でエレアが詞術の説明をする長尺パートは、最初から最後までサービスショットが満載。妖艶なエレアに見とれてしまってなかなか説明が入ってこなかった人もいたかもしれないが、詞術はこの作品世界の根幹をなす設定のひとつだけに、しっかり説明されたのは嬉しいところだ。またヤウィカのとことん無邪気なキャラクター性もあいまって、純粋に癒された人も多いだろう。スパイ行為が本業のエレアは、冷静で冷徹なモノローグの声と、ヤウィカに見せるフワッとした癒しボイスのギャップが際立っていて、表と裏の顔を巧妙に使い分けていることが声と芝居からも伝わってくる。しかし同時に、ヤウィカとのコミュニケーションを楽しんでいるようすもあり、なかなか複雑なキャラクターであることを感じさせる。

サービスシーン連発! さらに常識破りの詞術にも呆然

風呂から上がったエレアは、帰り道で世界詞のキアから声をかけられる。キアはこの村に住むエルフの少女で、万能の詞術を操る天才。エレアは噂でキアの存在を知り、彼女を黄都へ連れていくためにこの村に潜入していたのだ。そんなキアは、村人たちに愛想を振りまくエレアのことを「腹黒先生」と呼びつつも警戒はしておらず、よく懐いているようだ。

キアの初登場シーンで彼女が見せた詞術は、樹木を操るというもの。それだけならばそこまで驚くことではないかもしれないが、恐るべきはそのあとだ。成長した木を種まで戻し、さらにはその種を果実、花、芽まで逆行させてみせる。まるで時間を巻き戻したかのようで、彼女の詞術がいかに常識はずれか、そのすごさが垣間見える。またキアのキャラクター性でもうひとつ特筆すべきなのは、かなりの世間知らずであり、ゆえに倫理観が欠如しているという点。黄都でイジメに遭うかもと心配するエレアに対し「そんなヤツら もしあたしが死ねって言えば みんな死んじゃうんだから」と、恐ろしいセリフを屈託のない笑顔とともに言い放つなど、その精神は幼く危ういことが分かる。

エレアとキアが村を発つ当日。“見納め”にと、絶景を眺めに高台へ向かうキアたち一行はほどなくして目的の場所に着くも、あいにくの悪天候で景色はほとんど見えない。そこでキアが披露したのは、天候を操る詞術。キアが「晴れて」と呟くと、たちまち雲は消えていき、太陽の日差しが大地を照らし始める。想像をはるかに超えるスケールの詞術を目の当たりにしたエレアは、「これは無敵の力だ」と、思わず涙をこぼすのだった。

キアが「晴れて」と唱えてからのクライマックスシーンでは、美術や作画も力が入っているが、なんといっても音楽の力を感じさせてくれる圧巻のシーンに仕上がっている。オーケストラによって壮大なスケールで奏でられるこのBGMは、幻想的なだけでなく「畏怖」を感じさせてくれるのが特徴だ。世界の理に反するキアの力の異常さがよく表現されており、やや不穏なニュアンスと神々しさを感じるからこそ、エレアが涙を流した心情にも説得力が生まれているのは間違いない。また最後のナレーションに合わせて流れるBGMも素晴らしく、旅立ちと冒険の予感、ドラマを感じさせてくれる。キアの能力についてはSNSでも「キアの性能ぶっ壊れてるって!」、「詞術の設定を懇切丁寧に解説してたのにCM明けで全部無視しちゃうキア」など、常識破りな能力に呆然とするリアクションが多数投稿された。

「第四話」はアクションシーンこそなかったものの、それ以上にそれぞれのキャラクター性がしっかりと伝わってきて、濃密な内容だった。とくにエレアはかなり深くまで心情が描写されており、彼女の本当の目的が上覧試合にキアを出場させることで自身が成り上がることだと判明するとともに、目的のためならエルフの村がどうなっても構わないなど、諜報員として冷徹な姿勢を持っていることが示された。お風呂場でヤウィカとの時間を楽しんでいたエレアのことを思うと少し複雑な気持ちにもなるが、そこはプロ中のプロということなのだろう。もしもキアを完璧にコントロールできるとするなら、「最強」を従えるエレアこそが「最強」と言えるのかもしれない。さて、次回は1月31日(水)放送予定。期待して待とう。

朴ロ美のロは、王へんに路

■文/岡本大介

テレビアニメ「異修羅」第4話が放送/(C)2023 珪素/KADOKAWA/異修羅製作委員会