声優界随一のサイクリスト・野島裕史がパーソナリティをつとめ、自転車をテーマにお届けするTOKYO FMのラジオ番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。1月21日(日)の放送は、前回に引き続き、トライアスロンコーチの孫崎虹奈(まごさき・にじな)さんを迎えてお届けしました。


(左から)パーソナリティの野島裕史、孫崎虹奈さん



◆野島の悩みをまごちゃんが解決!

野島:先週に引き続き、素敵なゲストをお迎えしています。

孫崎:はい! 皆さん、おは・こんにち・こんばん・レインボートライアスロンコーチの“まごちゃん”こと孫崎虹奈です。

野島:今週もこれが聞きたかった(笑)。まごちゃん、今週もよろしくお願いします。

孫崎:よろしくお願いします!

野島:先週はトライアスリートになった経緯を伺いましたが、改めてプロフィールに目を通してみると“スポーツアロマトレーナー”の資格もお持ちだそうで。これはどういった資格なんですか?

孫崎:(自転車ロードレース)「ツール・ド・フランス」とかでバックヤードで(選手を)マッサージしている姿を見かけると思いますが、まさしくあれがスポーツアロママッサージです。アロマ、精油の香りとオイルを使って筋肉をほぐして流していくマッサージです。

野島:なるほど~。スポーツ選手、アスリートの方々は皆さんそういった技術を学んだりするんですか?

孫崎:私は独立するときに「手に職が欲しい!」「自分につながる資格が取りたい!」と思って、ちょうど師匠的な人が九州学院高校のサポートに入っている方で、自転車競技にも詳しく、いろいろと教えてもらいながら資格を取りました。

野島:もう全てがトライアスロンに通じる人生を送っているわけですね。そんなまごちゃんに、今回は具体的にトライアスロンのトレーニング方法を伺っていきたいと思います。

僕は2022年に初めて「石垣島トライアスロン」に挑戦したんですが、本番3ヵ月前まで100m以上泳いだことがなかったんです。

孫崎:それはすごいチャレンジですね!

野島トライアスロンオリンピックディスタンスでは、スイムは1.5km。僕は100mは泳げるので、それを15回やればいいんだって思っていたんです(笑)。

孫崎:すごいポジティブ(笑)。でもそれはトライアスロンに向いていると思います。

野島:ただ、いざやってみると大変で。しかも、海で泳いだことがなく、足がつかないところでも泳いだことがなくて。そもそも「ウェットスーツを着たら浮くよ!」って言われていたんですけど、実際に挑戦したら意外と沈みました(笑)。

孫崎:それは間違いではないんですけど、多分、(体は)沈んでいないのに気持ち的に沈んでいる感覚になってしまったんだと思います。プレッシャーを感じちゃって。

野島:そうなんですね……。正直な話、(「石垣島トライアスロン」は)スイムはビリだったんです。(泳いでいる間は)救助の方、さらにはトライアスロンオリンピック選手・庭田清美さんがずっと横についてコーチをしてくださって、めちゃくちゃラッキーなビリでした(笑)。

孫崎:贅沢(笑)。

野島:そこで庭田さんが「スーツを着ているのにこんなに泳げない人は初めて見た」「まるでタツノオトシゴのよう」とおっしゃっていて。つまり、足が下がっちゃって(体が)縦になって泳いでいたみたいなんです。これはなぜなんでしょう?

孫崎:多分、頭の位置が上がっちゃっていたんですね。頭は水面よりも上がってしまうとただの重石になってしまい、足が下がってしまうんです。だから、まずは焦らずに頭を(水の中に)入れるのがポイントですね。

野島:なるほど~。あとはスマートウォッチで測っていたんですけど、1.5kmのはずが1.8km泳いでいたんですよ。

孫崎:300mも得したんですね!

野島:得!? そうですね(苦笑)。これは蛇行していたからだと思うのですが、どうやって真っ直ぐに泳ぐんですか?

孫崎:“ヘッドアップ”という(水面に頭を出す)方法があって、これはやりすぎると遅くなってしまうんですけど、私が海で泳ぐレッスンをするときは「まずは潮の流れをしっかりと見てください」と伝えています。例えば、泳ぐコースが右回りで、右に潮が流れているとどうなると思いますか?

野島:右に流されて、折り返すと今度は左に流されて……。

孫崎:そうなんです。だから行きは簡単なんです。(コースに張られた)ロープ沿いに行けばいいので。でも、折り返すと流れが逆になるので自然とロープから離れてしまう。

なので、行きはヘッドアップしなくても道がわかるので、帰りにヘッドアップをたくさん取り入れるとか、海とうまく向き合うと楽に、そして距離が短く泳げます。

野島:まさにトライアスロンは自然と対話する競技なんですね。

孫崎:そうですね。あとは、自分の目を信じて泳ぐこと。顔を水面から上げたときに前の人しか見えていない、目標物が見えていない人が多いので、自分でちゃんと目標物を確認して泳ぐことが大事です。

◆野島、トライアスロンの罠に見事にハマる!?

野島:あと、僕が失敗だったと思うのは、泳ぐのが下手なので後ろのほうから出発すれば良かったのに、中盤の混雑しているところから出発しちゃったんです。それで、抜かされるときに数多くの人に頭を叩かれたんですよね(笑)。

孫崎:(笑)そこは難しいですよね。

野島:めちゃくちゃ頭を叩かれて沈んじゃって。それでちょっとビビって平泳ぎに変更したら、余計に邪魔になっちゃって。これはダメだと思ってロープを掴んで集団が過ぎていくのを待っていたんですけど、それもまたロスタイムになってしまって。

一番後ろからスタートすれば良かったのかなと後悔したんですけど、その後のバイクは得意なので、思い切り走って30人抜き。

孫崎:それはすごい!

野島:まあ楽しかったです、苦手なスイムも終わって(笑)。

孫崎:苦手なものがあっても得意なもので克服、挽回する、トライアスロンのいいところをゲットしましたね。

野島:そうなんです。もうノリノリで自転車に乗って、漕ぎに漕ぎまくった結果、その後に地獄が待っていたんですよね……。バイクの次のランは経験があるので余裕だろうと。スイム、バイクと使う筋肉が違うし大丈夫だろうと思って走っていたんですけど、3 kmぐらいで膝が痛くなってきて。

孫崎:それはトライアスロントリックというか罠ですね。バイクは股関節を使い続けるのでランの最初の2 kmくらいは足が勝手に回るんです。なのでノリノリで走ると3 km過ぎくらいからガクッと落ちてしまうんです。

野島:僕もまさに3 kmくらいから落ちました。

孫崎:バイクは常に上半身を固定しているので、ランに入って上半身を使う動作、腕を振り始めた瞬間に体がチグハグになって、筋肉の至る所が痛み始めるんですよ。バイクの過ごし方でランニングの結果が変わると言われています。

野島:バイクで調子に乗り過ぎたということですね(笑)。バイクはどう乗るのがいいのでしょうか?

孫崎:パワーの量を意味する「FTP(Functional Threshold Power)」があります。例えば自転車競技は90%ぐらいをずっと出し続けると思うんですけど、トライアスロンは75%で続けようというのが一般的で、全力を出さず、力を抑えるトレーニングが必要だと言われています。

野島:僕は見事に初心者の罠、バイク乗りの罠に引っ掛かってしまったんですね。

孫崎:そうですね。あとは、ランができる人は「10 kmぐらいはいける!」と思っちゃうんですよ。

野島:思っていました。

孫崎:そういった差は、コーチに教わるか・教わらないかで出てきますし、楽しくフィニッシュできるかどうかも変わってきます。

野島:僕の場合、完全に初心者の当たって砕けろ的なやり方でいったんですけど、フィニッシュは楽しかったです。

孫崎:それは素晴らしい! よかったです。

トライアスロン独特の練習法を伝授

野島:最後のランがあんなにつらくなるとは思わなかったんですが、そこはランが悪かったわけでなく、バイクの乗り方にかかっているんですね。

孫崎:そうですね。あとはトライアスロン独特の練習法として、必ず2種目続けて練習するというのがあります。例えばバイクで10 km走った後にランニングを2.5km。これを2セット、3セット繰り返し、バイク後のランの走り方を学ぶ、体に覚えさせる練習をしたりします。これは“ブリック練習”っていうんですけど、そうした練習を重ねることで体の使い方は上手くなります。

野島:筋肉の使う位置を分けるんですね。

孫崎:あとは腕振りの仕方や股関節が痛むならお尻をしっかり使うとか、そういったことが自分のなかでわかってくるので、それもトライアスロンの楽しいポイントですね。

野島:スイムに戻っちゃうんですけど、「バタ足はあまりしなくてもいい」と聞いたことがあるのですが、それはどうなんですか?

孫崎:正しくは違います。自転車も上半身を使わないと(ペダルを)踏めないじゃないですか。同じように水泳も手だけではなくキックと連動して前に進むので、バタ足をしなくていいというのは間違いです。

野島:あとは、スイムの練習のときもウェットスーツを着て練習したほうがいいんですか?

孫崎:大会の1~2ヵ月くらい前から2週に1回はスーツを着て練習すると体に馴染んでいくので泳ぎやすいですね。あとは(スーツを着ると)圧迫感を感じる人がいると思うのですが。

野島:確かに圧迫感は感じました。あれは結構きついですね。

孫崎:そうなんです。なので、そこも慣れるために2ヵ月前ぐらいから着始めるといいと思います。

野島:先ほど2種目連続で練習するといいとおっしゃっていましたが、スイムの後にバイクに乗るといいんですか?

孫崎:そこは難しいので、バイクの代わりにランニングしたり、水泳から陸の競技をすることで心拍の上げ下げが掴めて、次の種目に楽に移行することができるようになると思います。

野島:その心拍なんですけど、僕は自転車だと高めの心拍でも長時間乗れるんですが、スイムでめちゃくちゃ苦しくても心拍は全然大したことなかったりするんです。これって普通のことなんですか?

孫崎:心理的なものですね。手に汗をかいても意外と心臓は速くなっていない、それと全く同じ心理で、そこは練習で慣れたりとかですね。私も生徒さんにお伝えするんですけど、(トライアスロンの大会前には)海での練習を4回ぐらいは入れるようにして、海に慣れてくださいと伝えています。

野島:前回の「石垣島トライアスロン」は、とりあえず全部ダメなところが出たということですね。ただ、それでも楽しめたというのは、やはりトライアスロンの魅力なんだなと思います。

孫崎:本当にそうだと思います!

野島:今日はバイクの乗り方も教えてもらい勉強になりましたが、自転車にDHバー(ハンドルにつけて肘を乗せたり、空気抵抗を減らすためのアイテム)はやっぱりつけたほうがいいんですか? 平らなところでは有効ですか? あまり慣れていないので悩んでいるんですけど。

孫崎:そうですね。「石垣島トライアスロン」も最後は海沿いをずっと走るので、あそこはDHバーを使ったほうがタイムが上がると思います。とりあえずつけておいて、使うか使わないかはレース時に考えてもいいと思います。

野島:確かにそうですね。あと、ランで他に特殊なことはないですか?

孫崎:トライアスロン選手のランの動きを見ていると、腕振りが特徴的で、肩甲骨からめちゃめちゃ動かすんですよ。

野島:それはなぜですか?

孫崎:バイクで上半身が固まっているので、そのまま動こうとすると足だけの動作で走ろうとしちゃうんですね。うまく前に行かなくてペースが上がりにくいので、腕振りの動作を使って足を前に出すというのが独特なフォームにつながっていると思います。

野島:となると、ランのトレーニングでもそれを試したほうがいい?

孫崎:私は(生徒に)肩甲骨の間にテニスボールを挟んでいるイメージで、そのテニスボールを上手く動かしながら手を振ることを意識して走るように伝えています。腕のリズムで足がついてくるイメージで動かしてあげると、バイク後のランも走りやすくなります。

野島:なるほど。(バイク後は)足も疲れていますもんね。いやいや、こうしてお話をさせていただいて、本当に勉強になりました。機会がありましたら実地トレーニングも。

孫崎:ぜひぜひやりましょう!

野島:残念ながらお別れの時間がきてしまったんですが、石垣島トライアスロンの後、結果報告としてまたゲストに来ていただければと思っています。

孫崎:いつでも飛んできます! ここは憧れの場所だったので、来れてよかったです。

野島:最後に、まごちゃんの今後の予定は?

孫崎:2024年も今のところ12~13のトライアスロン大会のMCを担当させていただく予定なので、心配なことがあればぜひ会場で声をかけていただければと思います。

野島トライアスロン大会の会場でもお会いしたいですし、トレーニングでも。今後ともよろしくお願いします。ぜひ自転車も一緒に!

孫崎:ぜひよろしくお願いします! 弟(KINAN Racing Teamに所属のプロロードレーサー孫崎大樹さん)も自転車競技をやっているので呼んでください!

野島:ぜひぜひ! よろしくお願いします。

1月28日(日)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、6月に開催される「Mt.富士ヒルクライム」に向けて、プロロードレーサーの狩野智也さんとトレーニングを開始した野島。その一部始終をご報告します。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国23局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週日曜 朝5:00~5:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトおよびアプリ「AuDee(オーディー)」でご確認ください)
パーソナリティ:野島裕史
番組Webサイト:http://www.jfn.jp/toj
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