現役アイドルであるNMB48安部若菜によるデビュー小説「アイドル失格」(KADOKAWA)を実写化したドラマ。「ガチ恋オタク」と「アイドル」という出会ってはいけない二人の恋と成長の物語。原作者である安部若菜、ドラマの中の人気アイドルグループ・テトラのセンターを務める主人公・小野寺実々花を演じる山本望叶、テトラのメンバー一ノ瀬萌を演じる川上千尋、空野あかりを演じる上西怜、川嶋サヤを演じる泉綾乃の5人にドラマ化についての話を聞いた。

【写真】NMB48安部若菜、山本望叶、川上千尋、上西怜、泉綾乃にドラマ「アイドル失格」について話を聞いた

■「ドラマ化することはもちろん、NMB48のメンバーに出てもらえることがうれしい」安部若菜

――作家である安部先生、ドラマ化おめでとうございます。ドラマ化が決まったときはどんな気持ちでしたか。

【安部若菜】ははは(笑)。ありがとうございます。もう夢かと思うくらいめちゃくちゃびっくりしました。小説が発売してから1年ぐらい経つときにドラマ化が決まったので、それだけ時間が経っても、作品がこうやって広がっているというのが本当にうれしかったです。

――コミカライズもありましたし、さらにドラマ化という素晴らしい展開になってますね。

【安部若菜】いいことが起こりすぎて、ちょっと心配になっているくらいです。怪我などしないように気をつけて過ごしています(笑)。

――安部さんも活躍されているNMB48のメンバーが演じることについてはどう思いますか。

【安部若菜】ドラマ化することはもちろん、NMB48のメンバーに出てもらえることがうれしいです。ずっとNMB48に恩返しできたらいいなって思ってたので、こういう形で、みんなによりNMB48を知ってもらうためのきっかけにもなって、本当にうれしいです。

――そうですね。ドラマを通じてまたNMB48に興味を持つ人も多そうですね。

【安部若菜】NMB48のことを知らない人にも見てもらいたいです。

――NMB48のメンバーが演じている姿を見てどう思いましたか。

【安部若菜】(山本)望叶は、出演が決まってから本を読んでくれて、実々花にすごい共感するって言ってくれたりしたので、そういう普段あんまり表に出ないちょっと弱い部分とかが、実々花として出てるんじゃないかなって思います。

ちっひー(川上千尋)さんには、萌をぜひ演じて欲しいとお願いしにいきました。個人的にもすごい好きなキャラクターだったので、アイドル大好きで、もう空回っちゃうぐらいの感じでお願いしますと言った気がします。

(上西)怜さんにはそのままいってくださいと言いました。明るいところとか、何かちょっと天然なところとかが、めちゃくちゃはまり役やなってずっと思ってます。

あーのん(泉綾乃)は一番演じるのが難しかったんじゃないかなって。普段のあーのんとサヤが一番離れてたりするので、でも新しい一面を見られるのも楽しみですし、このドラマを通して、ちょっとリーダーっぽくなったって聞いたので、もしかしたらそういう隠された部分が、実は出てなかっただけでリーダーの素質があったのかなと思います。

――ドラマの中で活躍するアイドルグループ・テトラを改めて見てどう思いますか。

【安部若菜】普段、NMB48のメンバーとして接してるんですけど、ドラマでは本当に知らない人を見てるみたいな気持ちになって、今も横にいて改めて会ってちょっと緊張してます。ドラマに出ている「あっ、テトラ」だという感じです(笑)。

――原作は、実々花とケイタのそれぞれの視点から作品が展開されていますが、ドラマは実々花視点ですね。どう感じていますか。

【安部若菜】私も1話を見て、小説の中で出てきたSNSを映像ではこうやって表現するんだとか、映像ならではの部分というのがすごくあるなと思いました。ケイタのバイト先とかも変わってたりするんですが、ドラマとして見るとこっちの方が絶対いいなって思うところはたくさんありますね。

映像の部分は全然わかりませんのでおまかせしつつも、「アイドル失格」のストーリーとしてここは変えてほしくないっていうところはしっかり伝えていて、すごく素敵にドラマ化してくださったなって思います。

――安部さんも出演したかったのでは?

【安部若菜】自分の書いた話に、役として出るのはちょっと恥ずかしいです。でも実はどっかに隠れて出ているかもしれないので、全12話の中で探してもらえたらなと思います(笑)。

――もし演じるとしたら、実々花を演じたかったですか。

【安部若菜】いやあ、全然本当に自分が演じたいっていうのがまったくなくて、はい。作家としてドラマに携われることが一番幸せです。

――アイドルである安部さんが小説を実際書いてるときに、実々花の視点というのを自分と重ねて書く部分というのはありましたか。

【安部若菜】書いてるときはアイドルとして、仕事の場面とかは自分の体験を生かしたりしてたんですけど、実々花の感情は自分の進路に悩んでるときの気持ちを思い出したり、実々花になりきって、頑張って恋愛してるつもりになって書いてました。

――主題歌では、劇中のアイドルグループ「テトラ」の「青春テトラポット」「おとめのアイス」の作詞を担当されましたね。初めて作詞に挑戦されたと聞きましたが、どんな気持ちで歌詞を書いたのでしょうか。

【安部若菜】歌詞は「アイドル失格」のストーリーに沿って書いたので、書きやすかったです。主題歌の「青春テトラポット」は実々花目線からも、ケイタ目線からも、見られる歌詞にしようっていうのをすごく意識して書いたので、たくさんの方に聴いてほしいなと思います。

■「主演っていうのが、まさかのまさかすぎて、すごくびっくりしました」山本望叶

――ありがとうございます。では、テトラのメンバーにお話しを聞きたいと思います。まずは、出演が決まったときの気持ちを教えてください。

【山本望叶】ずっと演技の仕事をしてみたいと思ってたので、すごくうれしかったですし、もう主演っていうのが、まさかのまさかすぎて、すごくびっくりしました。

川上千尋】私は「ピノキオ〜絵本の中の僕〜」という舞台が終わった後、石田優美ちゃんと一緒の帰り道で、わかぽん(安部若菜)から「今ちょっといいですか」みたいな電話が23時ぐらいに来て、何やろみたいな、わかぽんから電話が来たことなんてなかったので驚きました。

ちっひーさんにお願いがあるんですけど、私が作った『アイドル失格』のドラマに出てもらえませんか」みたいな、決定ではなくて出てもらえませんかというお願いをされたっていうのがすごいうれしかったし、舞台を終えたばかりで、お芝居したい欲が高まっているときにオファーをくれたので、ぜひお願いしますみたいな感じで明るく答えました。うれしかったです。

上西怜】私は「アイドル失格」の小説がめっちゃ好きで、わかぽんにもめっちゃいいって言ってたんで、ドラマが決まったってことも、自分のことのようにすごいうれしかったんですけど、さらに役として出るっていうことで本当に幸せだなって思って。

あと自分も演技をやってみたいなって思ってたので、まさかメンバーからチャンスをもらえるっていうのがうれしくて。わかぽんが1人ひとり選んでくれたっていう想いにも応えて頑張ろうって思いました。

【泉綾乃】私は舞台でお芝居の経験があって、ドラマにも出たいなっていうのが最近の夢だったので、こうやってメンバーに選んでもらって、出演できるってなったときは本当にうれしかったです。

■「萌ちゃんが話す言葉って、『確かに』みたいなことがたくさん詰め込まれていると思います」川上千尋

――現役アイドルがアイドルを演じることについて、意識していることはありましたか。また、演じる役柄と似ている点、違う点は。

【山本望叶】実々花はセンターで王道アイドルなので、普段より王道っぽい表情をしようと思って。ちょっとフレッシュな笑顔を練習したりしてました。家でのシーンとかもすっぴんで出たので、ちょっとやばいなと思いながら演じてました(笑)。

役柄と自分はどこもかしこも似てるというか、もう本当にほぼ全部の台詞に共感できて、なんかすごい考えすぎちゃうところとか、あんまり人に素を見せられないというか、本音を話せないところとかも似てるなって思います。オタクと繋がるところは違います。繋がるのは共感できなかったです(笑)。

川上千尋】萌ちゃんが話す言葉って、アイドルをされている方であれば、一度は感じる気持ちだったり、人には絶対に言えないけど、悔しい気持ちとか、1回はこういうことあったよなみたいな、「確かに」みたいなことがたくさん詰め込まれていると思います。

その気持ちって、多分みんな心の中に秘めることが多いんですけど、萌ちゃんは人前で言っちゃうタイプなので、それを口にすることで強がってる感じだったりをどんな表情をして言ったらいいのかな、と考えながらお芝居しました。

本当に難しかったポイントとしては、まず私はピンクが似合うのかなっていう。あと、萌ちゃんはキャピキャピして本当にアイドルに人生かけているので、NMB48の卒業生で言えば、れなぴょん(川上礼奈)さんだったり、みおりん(市川美織)さんのようにキャラが立ってるメンバーを若干意識しながら演じてた部分もあります。

私はファンの人にも素を見せるタイプなので、こんなブリブリしちゃうこととかはないなと思いながらやってました。もうとにかく負けず嫌いなところは萌ちゃんと似ていると思います。テトラのセンターを虎視眈々と狙っているところも似てるかもって思ったことはあります。

上西怜あかりはほんまにわかぽんが言ってくれた通り、ほぼ素で演じてる感じだったので、あんまり難しいなって思ったことはなくて。ずっと何も考えずに、とりあえず笑ってる感じとか、ふざけてる感じとかは似てるなって思います。あかりと違うところはないです(笑)。

【泉綾乃】人をまとめることだったりとか、リーダーという役割をやったことがなかったので、私は逆に違うところだらけでした。普段あんまり周りの人のことを気にするタイプではないので、こうやってサヤを演じるにあたって、テトラのメンバー1人ひとりを見ようって。最年少だけど自分なりにみんなのことを引っ張ろうっていう思いでやりました。普段の私はサヤと似ている部分はあまりないですね。

あまりにも違っていてずっと悩みながら撮影してたので、撮影が終わって変わりすぎてないかちょっと不安な部分もあるんですけど、そういうところも成長として見ていただけたらと思いました。

■「アイドルも寄り添える場所がちゃんとないと駄目なんだなっていうのを感じました」上西怜

――恋とアイドルの狭間で揺れる実々花についてどう思いますか。

【山本望叶】実々花は素を出せる人があんまり周りにいない中で、ケイタというすべて見透かされてるような人に出会って惹かれてただけで、あんまり恋っていう感じは私はしなくて。だからそんなに悪いことでもないと思うんですけどでも、オタクと繋がるという絶対に駄目なことをしたので、そこは理解できないです。

川上千尋】アイドルってきっと、みんな表の表情と、見せられない表情があると思うんですよ。誰にも見せられない表情を受け止めてくれたり、察してくれたりする人の存在ってすごく大きいなと思うので、実々花がケイタに惹かれることに対しては、そんな悪いことじゃないなと思うんですけども、萌から見たらすごい悪いことだと思いながら演じてました。

上西怜】私は実々花には夢を追いかけてほしいなっていう感じなんですけど、このドラマでアイドル1人ひとりも人間で、寄り添える場所がちゃんとないと駄目なんだなっていうのを感じました。

【泉綾乃】素を出せる相手とか、悩みごとを相談できる存在はやっぱり大事だし、そういう意味ではすごいケイタっていう存在は大きかったなって思います。サヤも過去にそういう存在がいたってことに関しては、実々花に納得する気持ちもあれば、でもしっかりと活動に集中してほしいっていう気持ちもあるんだろうなっていう。なんか複雑な思いだったのかなって思います。

■「メンバーだったからこそ言いやすかったりだとか、やりやすいなっていうのはずっと思ってました」泉綾乃

――共演するNMB48メンバーとの裏話はありますか。

【山本望叶】本当にみんながいたからすごいやりやすかったというか、気が楽でしたね。多分、初めましての方とかだったらここまではっちゃけてないと思うので、本当に助けられました。1人で演じていてみんなが来たときは、なんか無意識にめちゃくちゃ喋っちゃいました。

上西怜】望叶はいつも誰よりも大人しくしてるのに、私たちが入った瞬間に、誰も何も喋ってないのにずっと1人で喋ってました(笑)。

【山本望叶】うれしすぎて、Yeahとか言うんですけど、みんなまだ寝てたりするんですよ(メンバー全員が大爆笑)。ただ、それがすごい寂しくて。

――自分でも気がづかない自分がそこにいるんですね。

【山本望叶】はい。なんかこんなにもメンバーの存在って大きいんだなって気づきました。

――NMB48メンバーと共演してみてどうでしたか。

川上千尋】私は舞台で、あーのんと2人で一緒になったことありますし、普段の私を知っているメンバーの前で演技をする、という恥ずかしさとかもあったりするんですけど、メンバーだからこそ見せられる素の部分が今回は本当によりたくさん出たかな思います。

メンバーがいることの安心感だったり、メンバーがいるからほかの共演者の皆さんともガツガツ話に行けるみたいな、そういうコミュニケーションも取りやすい環境だったなってすごい思いました。楽しさがより増しました。

上西怜】本当に楽しかったですし、普段初めての現場とか行ったらすごい緊張しちゃって、猫かぶってすごいおとなしくしちゃうんですけど、メンバーがいたからこそ最初っから本当にあかりとしてはっちゃけることができました。

メンバーもそうですし、スタッフの皆さんもすごいアットホームな感じで、だからこそ1人ひとりが本当に本気で演じられたっていう感じがするなっていうのと、このドラマの撮影がきっかけで、4人めっちゃ仲良くなれました。

――4人ですか?安部さんは?

上西怜】あっ、5人です(笑)。

【安部若菜】気持ちだけはずっと一緒にいました(笑)。

上西怜】望叶とも本当にこの撮影で一緒になるまであんまり話したことなかったんですけど、ちゃんと会話をするようになって。新しいふざけ仲間ができたと思ってすごい楽しめました。

【泉綾乃】私は実際はこのメンバーの中では一番後輩なんですが、今回の役の中では当然タメ口ですし、リーダー役でみんなのことを引っ張るために、注意するセリフも多くて。そういうのもやっぱりメンバーだったからこそ、言いやすかったですし、普段から信頼している先輩のみなさんなのでやりやすかったです。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

【山本望叶】この作品を通して少しでも何かを届けられたらいいなと思っているので、ただのアイドルが恋愛をしちゃったみたいな話じゃなくて、しっかりと1人ひとりの葛藤みたいなのものも見ていただけたらすごくうれしいです。

川上千尋】私はドラマのお話をわかぽんからいただいて、お芝居をしたいというタイミングでしたので、本当に感謝してます。そのわかぽんの、1人ひとりを選んでくれた気持ちもファンの方には汲み取っていただいて、私たちが演じる1人ひとりの感情の起伏だったり、内面のギスギスした部分も見応えがすごいあると思うので、実際の私たちの裏側とは違うかもしれないんですけど、アイドルの裏側ってこんな感じなんやみたいな楽しみ方でぜひ見てほしいなと思います。

上西怜】アイドルをしてる方もだし、学生の方もみんなこれからの人生で、自分のやりたいことや夢で悩むことはあると思います。そういう悩みを抱えた実々花にも共感していただけるんじゃないかなと思うのでぜひみんなに見てほしいです。

1話からシリアスな感じになってくるんですけど、あかりの空気の読めない発言で、ちょっとでも皆さんにほっこりしてもらえたらいいなって。わかぽんの作品への想いを感じていただけたらうれしいなって思います。

【泉綾乃】テトラ、実々花とケイタのシーンと、明るさと暗さと両方味わえるので、その差を楽しんで見ていただけたらなと思います。

【安部若菜】今、「推しの子」とか「推しが武道館いってくれたら死ぬ」など、アイドル作品もすごく多いんですけど、そういうのとはまた全然違ったアイドルのドラマとして、いろんな方に楽しんでいただけると思いますし、こうやって、本当にみんな現役アイドルが演じて作っているっていうリアルさを楽しんでいただけたらいいなと思います。

――ありがとうございます。

(みんなで元気いっぱいに)ありがとうございました!

撮影・取材・文=野木原晃一

NMB48安部若菜による小説「アイドル失格」を実写化したドラマにNMB48の山本望叶、川上千尋、上西怜、泉綾乃が出演