リフォームを行う際、「なるべくお金をかけたくない」と考え、コストを抑えるためにさまざまな手段を講じるケースは少なくありません。しかし、そうした手段を選択した結果、「多くの時間とコストを費やしてしまう人が実は多い」と、リフォーム投資のプロである株式会社ピカいちの代表取締役・柳田将禎氏は言います。柳田氏の著書『ピカいちのリフォーム投資』より、やってはいけないリフォーム方法とその理由について見ていきましょう。

大家自身が部材を手配する「施主支給」は要注意0

セルフリフォームの他にもやってはいけないリフォームがあります。それは「施主支給」と「分離発注」です。ご存知ない方に向けて用語の解説と、なぜやってはいけないのかを説明しましょう。

「施主支給」のメリット・デメリット

リフォームの種類に「施主支給」というものがあります。これは、大家さん自らがインターネットやホームセンターなどで部材の手配をして、職人さんに取り付けの工事だけ依頼するものです。

メーカー製設備の型落ち品をオークションで購入する、外国製の安価な設備をネット通販購入するなど、大家さん自らが格安な部材を用意することでコストダウンができるとあって人気を集めています。

「施主支給」ではコストが安くなるというメリットがある一方で、部材の購入という手間がかかるというデメリットもあります。また、現地調査を行ってしっかり下調べをすることが重要です。

また、モニター付きインターフォンなどの部材は、たしかにネットで買ったほうが安く済みますが、それはあくまで1つ、2つといった少ない単位で購入したときの話です。これが、10個、20個など施工業者が大量に購入するものであれば割引がきくため、「施主支給」のほうが高くつくケースもあるので注意が必要です。

そもそも業者としては部材の仕入れから工事までを仕事と考えているので、施主支給はよく思われないケースも多々あります。

■手配ミスによるトラブル

施主支給において、ありがちなトラブルには「手配ミス」があります。

たとえばキッチンならサイズはもちろんのこと、水道管の位置、取付けに必要な部品などを把握したうえで部材を発注しないと、そもそも取り付けられません。

事例としては、換気扇を施主支給で取り付けてもらおうとしたら、サイズを間違えて取り付けられなかった……ということはよくありがちです。その場合は、換気扇の返品交換後に再度取付するため、職人さんの手間が増え、工期が伸びてしまいます。

そもそも換気扇自体はものによって、数千円で売られているものですが、取り付けのために再度職人を手配する結果になれば、最初から工事と合わせて部材も発注したほうがリーズナブルに行えたでしょう。目先の数千円を惜しむあまり、結果的に余計な出費がかかるケースです。

■安価な海外製品でのトラブル

海外の低価格の家具や生産国が不明な家電は、金具が合わないなどの手間がかかる可能性があるため、一般の業者には嫌がられる傾向があります。たとえ安く部材を仕入れても、結果として高くなることは珍しくないのです。

キッチンの場合、見本の写真には付属品がついているのに、実際には足りない部品があったがゆえに工事が進まないケースです。中国系のサイトでは商品そのものが到着しないなどといった詐欺のリスクもあります。値段の安さだけを重視すると、トラブルに巻き込まれる可能性が高まるので注意が必要です。

また、一般的に施工業者は国内メーカーのもので、自社が仕入れたものでなければ施工保証をしてくれません。たとえば、新調したキッチンから水が漏れたとしても、その責任は取り付け側なのか商品なのかが判断できないからです。

特に水回りに関しては、メーカー側と取り付けた業者側とで責任の押し付け合いをすることが少なくありません。

■部材の受け渡しのトラブル

くわえて、これは施主支給の意外なデメリットですが、部材の受け取りが難しいという側面があります。工事中で職人がいれば、宅配が届いたときに受け取ってもらえますが、そもそもこれをやると職人の手が止まり、仕事が進まなくなるので嫌がられるケースもあります。

厳密に言うと荷受けまでが部材支給の仕事です。現場に人が不在の場合、宅配業者が商品を持ち帰ってしまうこともあり得ます。よくある失敗事例としては、「〇日に職人さんが作業するから〇日の午前中に荷物が届くように指定したものの、職人さんが到着する前に宅配が届き持ち帰られてしまった」。または、「午前中の配達が遅配となって届いたのが午後になってしまった」。そんなことはわりとよくあります。

もし職人さんが現場に行くときに商品が届いていないと、職人さんの仕事がないわけですが、そうなった場合でも職人さんの人件費は発生します。もちろん、日程を改めてまた来てもらったとしても料金は発生します。理由はその職人の仕事を止めた原因が、部材の段取りミスであるからです。

つまり、商品の注文から発送・到着まですべて予定どおり進むのであれば問題ないのですが、一つでも想定外のことがあると、普通に業者に頼んでいたほうが安かったという結果になりかねないのです。

投資家自身が現場監督となる「分離発注」

分離発注は、自分が施工管理する担当となって、たとえば大工工事と水道工事を別々の業者に発注することを指します。

一般的に工務店には、現場監督としてスケジュールや人材を調整する人がいて、それ以外には各施工のスペシャリストがいます。

分離発注を行う場合は現場監督を投資家自身で行い、実際の工事はプロに依頼するイメージです。本来であれば一つの工務店に頼むところを個別で業種ごとに発注するので、現場監督分のコストを抑えることができます。

ただ残念なのは、現場監督がやらなければならないことを理解しないまま分離発注する人が多くいます。そうした人たちは、曖昧な指示を繰り返して現場を混乱させてしまうことが往々にして起こりますから、良い結果にはなりません。

■キッチン設置のトラブル

キッチンを設置するとき、大工さんと水道屋さんに手配したとします。このとき、事前に水道屋さんが給排水をキッチンの合うところに移設させなければなりません。そして、その給排水のある場所で、大工さんはキッチンを組み立てて設置します。

しかし分離発注では、水道屋さんに「水道をつなげてください」と伝え、大工さんには「キッチンを組み立ててください」と伝えるわけですが、先にキッチンが設置されてしまっていた場合、水道屋さんはその仕事ができなくなってしまいます。

つまり本来は、最初に給排水を準備してからキッチンを設置しなければならないのに、準備なしでキッチンを置いてしまうと、後から水道屋さんに依頼しても難しく、トラブルにつながる恐れもあるのです。

■内装のトラブル

また、内装に関していうと、「どこまでをどの業者が行うのか」をしっかり采配する必要があります。たとえば、壁紙とフローリングの間にある「巾木」は、クロスを張る内装屋さんで「ソフト巾木」を施工するケース、大工さんに「木製巾木」を施工するケースの両方があります。

このリフォームにおける「どこをどう分担するか」を事前に考えておかなければ、必要な工事ができていなかったり、逆に同じ工事内容を重複して発注してしまったり、二重に金額がかかってしまう結果となりかねません。

私からみると、業者がどこまで作業できるのかを十分把握しないまま分離発注しているケースが多いように感じます。

よくあるミスでいえば、内装屋さんには壁紙は頼めても、フローリングの張り替えまでお願いできる場合は少ないです。フローリングの張り替えは大工さんが行うからです。

たとえば、内装屋さんにクロスの張り替えを発注しており、そのソフト巾木の施工までが込みになっていたとします。しかしフローリングの張り替えを発注した大工さんも木製巾木の設置が込みになっていました。

すると、巾木の施工が二重で発注されており、この見積りで依頼してしまえば、両方に対して支払いが発生する可能性もあります。

逆に、どちらの業者も巾木の施工を行わないケースもあり、工事が足りない場合は追加工事として、もう一度業者を稼働させなくてはいけません。もちろん、そこにも料金が発生します。ですから、工事の内容はすべてきちんと把握しなくてはならないのです。

■エアコン設置のトラブル

これは、エアコン交換とクロス張り替えを同じタイミングで行った際に起こりがちなトラブル事例です。前提としてクロス交換を業者に発注して、エアコンは家電量販店で購入して設置を依頼したとします。

まず、内装業者がやってきてクロスを先に張り替えました。その際に、エアコンを取り付けたまま張り替えます。なお、このときに取り付けられているエアコンは昔の機種でサイズが大きいものでした。

家電量販店と契約しているエアコンの取付業者が古い大きなエアコンから、最新のスマートなタイプのエアコンに交換します。するとエアコンの後ろにあったクロスを張り替えていない部分が出てきてしまいました。

こうしたトラブルはスイッチコンセントの交換時にも起こりがちです。業者によってはクロスを張り替える際に、一度スイッチコンセントを外して付け直しますが、なかにはスイッチコンセントを外さずにクロスを張る業者もいます。

そして後からサイズの小さなスイッチコンセントを交換したところ、昔のクロスが見えている状態になったという失敗もあります。

前提として、工事には段取りがあります。エアコンの交換とクロスを張り替えるのは別工事でありながら、同じ部屋で行う工事です。本来であれば、エアコンを外したところでクロス屋さんを呼ぶのが正しいのです。

ただし、エアコンの取付業者からすると二度手間になるので、2回にわけて行うことはまずありません。しかし、リフォーム業者の手配であれば、それは可能です。なぜなら自社でエアコン取付けもクロス張り替えもできるからです。電気工事を担当する職人が常にいろんな現場をまわっていますから、そこで2回にわけて取外し、取付けという作業ができます。

こうした段取りは一般の投資家では難しいでしょう。その結果、工事の収まりが悪くなっている物件をよく見かけます。また、それは自分のせいなのに、それがわかっていない投資家も多いです。

たしかに壁紙を張り替える、コンセントを付け替えるなど一つひとつの作業を依頼することは難しくないように感じるかもしれませんが、誰かに依頼する以上、そこまでスムーズにはいきません。

不動産投資関連の書籍には、非常に安い価格でリフォームした事例が載っていることがあります。それを参考に、実際に見積りを出したら高い価格を提示されてしまい、何社も何社も理想的な価格を追い求めて見積りを依頼する人がいます。

しかし、こうした人の場合、ようやく安いところを見つけても、いざ作業が終わったら追加請求がきて、他の業者よりも高くついたという残念な結果に陥るパターンが珍しくありません。そして結局のところ、最初に見つけた業者が安かった……ということもあります。

このように、相見積りをとって交渉するという過程で多くの時間を費やしてしまう人が実は多いものなのです。

最悪なケースでは工事ストップもありえる

最近は不動産投資において、DIY関連だけではなく分離発注を推奨する本も出版されています。しかし、そこには「タウンページで職人さんを探しなさい。地元の土建組合に電話して、一人親方に依頼しなさい」などと書かれています。

そういった職人さんで、質の良い方を見つけるのは簡単ではありません。私の会社にしても、たくさん仕事をやってきたからこそ、そこに付いてきてくれる職人さんがいて、彼らをまとめあげることができるわけです。

職人さんのほうもその仕事を「継続して発注してくれる取引先なのか」「1回限りの発注なのか」で対応が変わります。1回限りの仕事であれば、手を抜く人も出てきます。職人さんをまとめるのは、初心者の方が一朝一夕でできるものではないのです。

また分離発注の場合、職人さんに逃げられる可能性があるのもデメリットの一つです。途中で職人さんが来なくなって工事がストップしてしまった……こうしたケースは、安い価格で工事を依頼した場合にありがちなことです。単純にもっと単価の良い仕事が入れば、そちらを優先します。

分離発注のリスクとして、「誰がやったかわからない」という点もあげられます。

たとえば、大工さんに床の補修、クロス屋さんに壁紙の張り替えを分離発注しました。

本来であれば、大工さん(床)が終わってから、内装屋さんがクロスを張りに来ます。その過程で、どちらかの職人さんがカッターを落として床に傷をつけてしまいました。

こうしたことは職人さんが気づくこともあれば、気づいても言わない場合があります。これを分離発注ではなく1社に全部お願いしていれば、施工会社に責任を追及できますが、分離発注ではどちらの責任かを問う必要性が出てきます。

とはいえ、大工さんと内装屋さん、どちらの責任なのかは、その都度、現場に行って確認していない限りわかりません。

結果、責任の所在が不明のまま、自身で再発注しなければならなくなります。そうなると、時間もコストもかかるので分離発注した意味がまったくないことになります。傷を新たに直したい場合でも、単純に「傷の補修」だけで済むことはなく、何かしらの工程が発生してしまうのです。

このように、プロフェッショナルな人をマネジメントしようとすればするほど、対価が発生する可能性が高まり、人間同士のトラブルにつながってしまいます。

そうしたマネジメントに自信がなければ、施工管理のプロに発注したほうがコストを抑え、現場の満足度を上げられるでしょう。

柳田 将禎

株式会社ピカいち

代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)