韓国の研究機関であるSAND研究所は23日までに、韓流ドラマを隠れて見るなどした十代の若者2人が、公開裁判で懲役12年の刑を言い渡される場面を収めた北朝鮮の映像教育資料を公開した。

これは北朝鮮当局が、国民に恐怖心を植え付けるために作ったものであり、「同国で韓流ドラマを見たら重罪になる」という事実を、最終的に裏付けるものとも言える。

北朝鮮では2020年末に、反動思想文化排撃法が制定された。同法27条は、南朝鮮(韓国)の映画、録画物、編集物、図書、歌、絵、写真などを見たり聞いたり、流入、流布させた者は5年から15年の労働教化刑(懲役刑)に処すと定めている。

同法に基づいた韓流取り締まり自体は、すでに広く知られている事実だ。十代の少年までがその対象になるということも、数年前から情報が出ていた。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市で韓流ドラマや映画などを視聴し、拡散させたとして摘発された高校生ら3人が、一昨年10月に公開処刑されていたと報じた。また、その前年11月には、同市の初級中学校に通っていた14歳の少年が、ウォン・ビン主演の韓国映画「アジョシ」を隠れて見始めてから、たった5分後に逮捕。「見せしめ」のため14年もの労働教化刑という重い判決が下された。

北朝鮮当局も一時期、少年に対する処罰を緩和したこともあった。

朝鮮労働党法務部が2022年4月4日、「反動思想文化排撃法違反少年に対する意見対策案」という提議書を中央に提出。金正恩総書記による批准を受けた上で、韓流コンテンツなどを隠れて視聴していた少年らに対する処罰を緩和するよう全国の司法機関に指示したのだ。

平壌と黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、反動思想文化排撃法に違反したとして摘発される人が急増している中で、大量の未成年を思想犯にするわけにはいかないとの党法務部の判断があったという。

「少年の90%が外部文化に接しているという全国安全機関の調査に基づき、現在の現実を反映した少年対象処理方針を立てる必要があると内部的な結論が下されたことによるものだ」(情報筋)

ところがその後も、十代の少年少女に重罰が下されたとする情報は聞こえ続けている。金正恩氏が韓国に対する憎悪を強める中で、緩和策も撤回されてしまったのかもしれない。

北朝鮮当局に強制的に撮影された20代女性(画像:デイリーNK内部情報筋)