昨年の『M-1グランプリ』で活躍したナユタのふたり。左はおのはら(22歳、東京大学経済学部3年)、右はホリコシ(20歳、早稲田大学文学部3年)
昨年の『M-1グランプリ』で活躍したナユタのふたり。左はおのはら(22歳、東京大学経済学部3年)、右はホリコシ(20歳、早稲田大学文学部3年)

昨年末、『M-1グランプリ2023』(テレビ朝日系)で、学生お笑い出身の若き漫才師、令和ロマンが、大会史上最多となる8540組の中で頂点に輝いた。

アツかったのはテレビ放送された決勝だけではない。ファイナリストの席を争って火花を散らした予選も、かつてないほどの盛り上がりを見せた。特に今回は、令和ロマンをはじめとした学生お笑い経験者や20代の若手漫才師らが大きな存在感を放った。

その中でもひときわ目立ったのは、現役大学生ながら準々決勝に進出し、ベストアマチュア賞にも輝いたナユタだ。そんな彼らに、今回の『M-1』の感想から、お笑いへのアツい思いを聞いた!

* * *

■最初から狙っていたベストアマチュア賞

――まずはベストアマチュア賞おめでとうございます!

ふたり ありがとうございます!

――『M-1』には2回目の挑戦(一昨年は2回戦敗退)でしたが、準々決勝に進出し、ベストアマチュア賞も獲得。エントリーした際はどこを目指していたんですか?

おのはら(以下、おの) 正直、ベストアマチュア賞を狙っていました。

ホリコシ(以下、ホリ) まさか本当に獲(と)れるとは思ってませんでしたけど......(笑)。

おの ただ、一番やりたかったのは、僕らが一番強いと思っている「右腕」というネタを、『M-1』公式YouTubeに上がる3回戦の動画で出すことでした。

ホリ 自分たちで映像を出すこともできたんですけど、どこにも出さずに3回戦の動画に出せば話題になってくれるんじゃないかと思ったんです。

早稲田大学お笑い工房LUDO所属のナユタ。学生芸人ながら、月に20ステージをこなしている。ネタはふたりで、口頭で作っており、持ちネタは約10本
早稲田大学お笑い工房LUDO所属のナユタ。学生芸人ながら、月に20ステージをこなしている。ネタはふたりで、口頭で作っており、持ちネタは約10本

――実際、3回戦の動画がバズってナユタを知った方が多いと思いますが、あれ、計画どおりだったんですか!

ホリ そのために、1回戦の会場でナイスアマチュア賞(*)は辞退したんです。ナイスアマチュア賞を獲ると動画が上がっちゃうので。 

【*】ナイスアマチュア賞......『M-1』1回戦で、MCが特に印象に残ったアマチュア1組に授与する賞で、ネタ映像がYouTubeで公開される。さらにすべての予選を通して、最も上位に進出したアマチュアが「ベストアマチュア賞」に輝く

おの 「3回戦までどこにも出さないぞ」って決めて。

ホリ 結果、自分たちでもおもしろいと思って作ってやっていましたけど、こんなにおもしろいとは(?)。反響が大きくて驚きました。

■3回戦のネタ「右腕」の作られ方

――ネタはどのように作っているんですか?

ホリ ふたりで話し合いながら作ってますね。どっちかがポロッと言ったことをふたりで広げて、っていうのを繰り返して。

――ふたりで膝を突き合わせて、ノートに書いて?

ホリ いや、口頭で作ることが多いです。

――口頭で!?

ホリ おのはらは覚えるのが早いので、口でやっても覚えられるんですよね。

おの でも本番の直前じゃないと作れないです。

ホリ だからライブの前に1、2時間くらい早く集まって、「今日は新しいネタを作るか」って。

――ええ!?

おの できるときもあるし、諦めるときもあります。

――今日、この後ライブがあるそうですが......。

おの まだ決まってないです。

ホリ 作らなきゃ......。

――ちなみに、3回戦のネタ「右腕」はどのように?

ホリ 僕らがコンビを組んでから3回戦までに作ったいろんなネタのいいボケだけを集めた感じです。1回戦も2回戦も「右腕」で挑んだんですけど、2回戦では思っていたよりもウケなくて......。「このネタでもダメか......」って落ち込んでました。

おの ずっと言っていたんですよ。「絶対落ちた」って。そしたら3回戦に進出できて。

ホリ 当初、現役で学生お笑いやっている組で進出できたのは2組くらいで「すごいじゃん!」って言われてたんですけど、最後のほうの日程にたくさん合格して、結果6組くらいが3回戦に出ました。

――学生お笑いのコンビが勝ち進むのはすごいですね! 今じゃ学生芸人が『M―1』にエントリーするのは当たり前になっているんですか?

ホリ そうですね。エントリーしてなかったら「なんでエントリーしてないの?」って言われる感じはあります。

――ちなみに憧れの芸人は?

おの 僕はずっと真空ジェシカさんが好きですね。

ホリ 僕はオズワルドさんですね。2019年の『M-1』の準決勝を映画館のパブリックビューイングで見てすごくおもしろくて。その後もYouTubeでネタ動画見まくって、大学に入ってからは劇場にも行きました。この間、『オールナイトフジコ』(フジテレビ系)に呼んでいただいたときに初めてお会いして、お伝えできました!

■あっちから『M-1』を見たい

――そもそも、おふたりがお笑いを始めたきっかけは?

ホリ 僕は昔からお笑いが好きで、『M-1』を見て、めちゃくちゃカッコよくて。その憧れから漫才を始めました。最初は高校時代に「ハイスクールマンザイ」という吉本興業が主催している高校生のための漫才の大会に出ました。ただ、一緒に出てくれる友達が周りにいなかったので、ツイッターで相方を募集して(笑)、トリオを組んで、準決勝まで行きました。

――すご!

おの 僕は文化祭で1回だけ。

――高校生の頃からお笑い経験があるんですね。そして大学に入学し、どうしてお笑いサークルに?

ホリ 実は、高校生のときから、今所属している早稲田大学お笑い工房LUDOに入りたいと思ってて、そのために早稲田大学を目指したんです。

――高校時代からサークルのことも知っていたんですか!?

ホリ YouTubeでお笑いの動画をあさっていたときに存在を知って。ひょっこりはんさん、ハナコの岡部(大)さん、アンゴラ村長さんらを輩出しているサークルだ、と。最近は入る前から知っていたという人が多いですよ。

おの 僕は出身が仙台なんですけど、大学お笑いがやりたいというのもあって東京の大学を目指しました。YouTubeで学生お笑いの大会の動画とかも見ていましたし。中でもLUDOは規模が大きいので、お笑いが好きな友達がいっぱいできるかなと思って入りました。

――規模はどのくらい?

ホリ 年にもよるんですけど、新入生は100人くらい入りますね。その後徐々に減って4年生になる頃には学年30人くらいになります。

――その中でおふたりが組んだきっかけは?

ホリ もともと仲がいい集団の中のふたりで。大学お笑いはいろんな人と複数コンビを組むのが普通なんですけど、1年生の頃はおのおの別で組んでて、2年生になるくらいのタイミングで「そういえば僕らふたりでやってないね」って組んだ感じです。

おの 組んだときは特に目標とかはなかったです。そしたら意外と結果が出て。

ホリ 本当に小さな学生お笑いのライブですけど、1位になったりとかね。

おの 学生お笑いって、出るのも見るのも学生芸人っていうのが基本なんですけど、最近は、普段プロのライブを見てるような人たちも学生お笑いを見に来るようになってきています。

ホリ ライブを見て、ほかの学生芸人やサークルを知り、学生お笑い全体のファンになる方が増えている印象です。

もともとサークルで仲のいいグループの中のふたりだったが、コンビを組んだのは2年生になるとき(写真は当時の頃のふたり)
もともとサークルで仲のいいグループの中のふたりだったが、コンビを組んだのは2年生になるとき(写真は当時の頃のふたり)

――昨年の『M-1』で学生お笑い出身の令和ロマンが優勝しましたが、見ていてどう思いましたか?

ホリ 僕らが所属しているLUDOと令和ロマンさんが所属していた慶應義塾大学お笑いサークルO-keisは仲がいいので、めちゃくちゃ応援していました。トップバッターで名前が呼ばれたときは「ああ......」って思っちゃったんですけど、そこから優勝して。ネタも、どこか学生お笑いっぽさがあるというか。僕らは今まさに学生お笑いに身を置いているので、あの舞台に立ちたいな、とより強く思いました。

おの 僕、人生で夢があるとしたら「『M-1』の決勝に行くこと」っていうのがずっとあったので、見ながらすごくアツくなりましたね。

ホリ 僕も一緒です。あっちから『M-1』を見てみたいって。

――今、大学3年生の冬で、周りは就活モードですよね。

ホリ 周りは就活してますね......。僕は就活してないですね。できないです。お笑いが楽しすぎます。ウケたときのブワーッて感じがやっぱりたまらないんですよね。

おの たぶん僕、一般企業に入ったら死んじゃいます。お笑いサークルに入った時点で終わりなんです。今はライブに出るのが就活です。

――確かにライブに出て、事務所に声をかけられるのは、ある意味で内定ですからね!

おの 内定もらえたらうれしいね。

ホリ そうだね(笑)。
おのはら「人生で夢があるとしたら『M-1』の決勝に行くこと」ホリコシ「僕も一緒です」
おのはら「人生で夢があるとしたら『M-1』の決勝に行くこと」ホリコシ「僕も一緒です」

撮影/鈴木大喜

昨年の『M-1グランプリ』で活躍したナユタのふたり。左はおのはら(22歳、東京大学経済学部3年)、右はホリコシ(20歳、早稲田大学文学部3年)