「どっちにしろ、2ndレグは月末だしね」そんな風に私が自分を慰めていたのは金曜日、コパ・デル・レイ準決勝抽選でアトレティコは、バルサを破ったアスレティック(https://x.gd/w2otG)と対戦が決定。その1stレグが2月7日メトロポリターノで行われるのを知った時のことでした。いやあ、実は今週ミッドウィークのコパ準々決勝セビージャ戦以来、日曜午後9時(日本時間翌午前5時)のバレンシア戦、スペインスーパーカップのせいで順延されていた水曜の兄弟分ダービー、20節ラージョ戦と、ここ1週間、彼らはホームゲームが続き、アウェイゲームは2月4日リーガマドリーダービーまでないんですけどね。

もちろん今季は内弁慶ぶりに一層、磨きがかかっているシメオネ監督のチームとなれば、願ってもない稼ぎ時とはいえ、怖いのはまさにそのレアル・マドリー戦。ええ、コパ16強対決敗退のリベンジとばかりにサンティアゴ・ベルナベウでお隣さんにぶちのめされたりすれば、唯一の2試合制開催となるコパ準決勝1stレグで、12月のリーガ戦でも2-0とあっさり負けてしまったサン・マメスでの2月29日の2ndレグにしゃかりきになる必要のない結果を出すのが難しくなったりしない?

まあ、そんなことはともかく、木曜のセビージャ戦がどうだったか、まずはお話していくことにすると。先週のコパダービー同様、メトロポリターノの沿道を埋める大勢のファンにチームバスが迎えられ、bengala(ベンガラ/発煙筒)の煙に包まれてスタジアム入りしたアトレティコだったんですが、さすがに3連戦目ともなると、選手たちの体力の低下が如実に顕現。それは相手も同じで、更に向こうは当日、セビージャから、この試合の応援に行こうとしていた父と息子2人の乗った車が高速道路で事故に巻き込まれて大破。お亡くなりになったという悲報もあって、キケ・サンチェス・フローレス監督率いるチームは大ショックを受けていたんですが、5人DF制でもっぱら専守防衛というのは、コリセウムで見た16強対決のヘタフェ戦とあまり変わっていなかったよう。

実際、弟分は守備ミスが祟っての1-3負けと、自業自得の面もあったため、だってえ、直前のジローナ戦でセビージャは5-1と大敗していたんですよ。愚かなことさえしなければ、点を取られる可能性はほとんどなさそうでしたし、いつかはアトレティコがゴールを挙げてくれるんじゃないかと、私もダービーとは真逆で気楽に眺めていたところ、来たんですよ。絶好の先制チャンスが前半24分に。そう、エリア内に入ったモリーナがマルコンに引っかかって倒れたのがペナルティとされ、グリーズマンがPKを蹴ることに。

それがまさか、ミートの瞬間に足を滑らせ、ボールを天高く撃ち上げてしまうとは!その時は目が点になってしまった私だったんですが、いやあ、実は前日、このところのとても1月は思えない春のような陽気に誘われて、マハダオンダ(マドリッド近郊)まで、セッションを見に行ったんですけどね。コパダービー延長戦に加え、月曜のグラナダ戦でも皆勤したグリーズマンはアップだけで練習を終了。疲労回復のための負荷調整とプレス担当の職員は言っていたんですが、グラウンドから数分のロッカールームに戻るのにもバギーカーに乗っていたくらいで、歩くのもしんどい程、疲れているのかと心配になったなんてことも。

ただ、0-0のまま入った後半、ゴールにこそならなかったものの、アクロバティックなvolea(ボレア/ボレーシュート)などを披露し、一番、得点に近かったのも彼だったため、PK失敗は単に運が悪かっただけとわかって、ホッとできたんですが、でもこの日のシメオネ監督は勇敢でしたよ。というのも最初にモリーナ、サウールをジョレンテ、バリオスに代えた後、まだ21分なのに、今季2人合わせて36得点しているモラタとグリーズマンを一気にメンフィス・デパイとコレアに代えてしまったから、ビックリしたの何のって。しかもこの試合はコパで、下手したら、延長戦もPK戦もありうるとなれば、その瞬間、場内に不安が走らなかったと言えばウソになる?

でも大丈夫。24分に最初にコレアのパスからデパイが決めたゴールはあからさまなオフサイドだったため、スコアに挙がらなくても仕方なかったんですが、その10分後、この2人がやってくれたんです!そう、ジョレンテからボールをもらい、右サイドからエリア内に入ったコレアはマルコンをかわし、セルヒオ・ラモスの股間を通すパスでゴール前のデパイにアシスト。これが虎の子の1点になってくれたとなれば、シメオネ監督が「Soy afortunado de que los futbolistas que entran/ソイ・アフォルトゥナードー・デ・ケ・ロス・フトボリスタス・ケ・エントラン(自分は交代選手にツキがある)」とニンマリしていたのも当然だったかと。

それでも、前日練習でセットプレーの攻撃をシメオネ監督が入念に稽古させていたのは、プレス公開の15分間が終わり、敷地を追い出されて、グラウンドの外から伺っていた時にわかったんですが、守備の方もやらなかったのが片手落ちでしたかね。その後はセビージャにCKから、ラモスがゴール前から撃ち上げてしまうというチャンスも。それどころか、ヘタフェ戦で2ゴールを入れたイサークもすでにラメラと交代し、エン・ネシリをまだアフリカ・ネーションズカップのモロッコ代表に拘束されているキケ監督が最後の希望を託し、ラファ・ミールを入れていた後半ロスタイム、ほとんどその5分が終わりかけていた50分に最大のピンチが訪れるとは!

そう何と、自陣エリア近くでオカンポスに追われ、逃げようとしていたバリオスがパスをラメラに出してしまったことにパニくって、ゴールに向かおうとした相手の足元に猛タックル。主審にペナルティの笛を吹かれてしまったからですが、だってえ、その瞬間、せっかく今週のコパは延長戦のストレスなしで家に帰りたいという、ファンの願いが風前の灯となったんですよ。アトレティコのゴール前ではラモスがPKゴールを決めてやろうとボールを持って待っているし、私も絶望的な気分になったんですが…そこに天からの助っ人が現れたんです。

ええ、リーガ前節のマドリーvsアルメリア戦で次から次へと主審のジャッジを正したエルナンデスエルナンデス審判がその日もVAR(ビデオ審判)ルームの担当で、お隣さんだけにいい顔をするのは不公平と思ったんですかね。ヒル・マンサーノ主審をモニターに呼びつけ、バリオスはボールを蹴っていたから、ペナルティではないと説得してくれたとなれば、いえ、GKオブラクなど、「Desde atrás he visto que le saca el balón/デスデ・アトラス・エ・ビストー・ケ・レ・サカ・エル・バロン(ボクは後ろから、彼がボールをクリアするのを見ていた)。だから落ち着いていたよ。はっきりしたプレーだったからね」と言っていたんですけどね。

とはいえ、主審は最初、ペナルティにしていたんだし、そんなのいつもいつも、VAR注進が入るとは限らないため、本当にラッキーだったと思いますが、その後はほとんど時間もなく、試合は1-0のまま無事終了(https://x.gd/s6Ig5)。今季は1部残留争いの真っ只中にあるセビージャリーガに専念させてあげる傍ら、アトレティコは2017年以来のコパ準決勝を果たすことに。おかげでシメオネ監督も最後のドッキリを「Es una jugada que le servirá a Pablo/エス・ウナ・フガダ・ケ・レ・セルビラ・ア・パブロ(バリオスのためになるプレー)。若さ故、ボールをピッチ外に蹴って逃げるのはカッコ悪いと思いがちだが、必要のない危険を犯さないためには大事なことだ」と20才のMFのミスを笑って赦していましたが、いや、ホント、良かったですって。

というのもその日は丁度、移籍決定直前だった、アトレティコにしては珍しく、18才の新鋭、ベルギーボランチのフェルメーレン(アントワープ)がメトロポリターノのパルコ(貴賓席)で観戦していたからで、ええ、これでうっかり、逆転敗退などしていたら、チームメートに幻滅して、逃げちゃったかもしれませんからね。幸い彼とは2030年までの契約を翌金曜に締結することができ、早ければ日曜午後9時のバレンシア戦から、ベンチに入れることになりますが…要求の高いシメオネ監督がそう簡単にデビューさせてくれるかは疑問かと。

ええ、昨夏に入ったばかりだったハビ・ガランはもうレアル・ソシエダへとレンタル移籍しちゃいましたし、ソユンチュも近日中にフェネルブフチェに行くようですからね。シメオネ監督も「Es difícil ponerse en el lugar de Ángel/エス・ディフィシル・ポネールセ・エン・エル・ルガール・デ・アンヘル(コレアの状況にいるのは難しい)。あれだけの年月、ずっとゲームの起爆剤で、大事な選手だが、ほとんどいつも交代出場というのはね」と理解を示していたコレアだけはまだ、サウジアラビアからのオファーを受けるのか、微妙なんですが、実際のところ、この先も連戦は当分続くため、あまり選手は減らさない方がいいのでは?

そして週末のマドリッド勢のリーガの予定も見ておくことにすると、土曜はまず、弟分のラージョがまた午後2時から、今度はサン・セバスティアンでレアル・ソシエダと対戦。相手は先週末から、リーガでも、この火曜のコパ準々決勝でもセルタに連勝して(https://x.gd/x1Xjk)、準決勝では意表を突いて、ジローナを下したマジョルカ(https://x.gd/sZK56)と顔を合わせることになったんですが、実はかなりの人員不足に悩んでいるようでねえ。そう、アジアカップの日本代表に出向中の久保建英選手は仕方ないんですが、それ以外にも負傷者多発で、今回はミケル・メリーノも出場停止に。おかげで早くも入団ほやほやのハビ・ガランの先発が予想されているって、かなり凄くない?

とはいえ、ラス・パルマスに負けた前節から、中6日空いて、休養十分なラージョも未だにベベ(カーボベルデ)とパテ・シス(セネガル)がアフリカ・ネーションズカップから戻らず。懸念されているゴール日照りも解消されていないため、白星を持ち帰るのはなかなか難しいかもしれませんが、彼らには来週ミッドウィークメトロポリターノでのアトレティコ戦もありますからね。未だに降格圏に近づく心配はないものの、取れる時に勝ち点は取っておかない手はありませんって。

そのラージョの試合の後、同じ土曜の午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、弟分のリベンジを果たすべく、ラス・パルマスに乗り込むのがマドリーで、ええ、彼らもコパなしで今週はゆとり日程でしたからね。ただ、こちらの負傷者はもう、ヒザの靭帯断裂で長期リハビリ中のGKクルトワ、ミリトン、アラバしかいませんから、特に選手が増える訳ではないんですが、とりあえず、連戦疲れは解消されているかと。唯一、アルメリア戦で5枚目のイエローカードをもらったベリンガムが出場停止となるのだけがちょっと気になるとはいえ、その代役にはブライムやホセルがいますしね。

いくら、シーズン前半戦のベルナベウ対決では丁度、ミッドウィーク開催リーガとなり、ほぼほぼ試合を捨ててきたピエンタ監督がホームゲームの今回、折しもチームは8位と好調。いい機会だから、マドリーに一泡ふかしてやろうと画策しているとしても、あまり心配することはない気がしますが、さて。そうそう、金曜の記者会見でアンチェロッティ監督はこの試合のスタメンにルーニンを指名。何か最近、本当にケパとどちらが正GKなのか、わからなくなってきましたが、これって、4月ぐらいにクルトワが戻って来るまで続くんでしょうか。

そして日曜にアトレティコバレンシアを迎えた後、月曜試合となるのがもう1つの弟分ヘタフェで、こちらは今週月曜に兄貴分に0-1と負けたグランダとコリセウムで対戦することに。相手は降格圏の19位とあって、この1月に6人も補強して乗り込んで来るんですが、ボルダラス監督のチームも来週ミッドウィークマドリー戦が控えていますからね。ここはホームのファンの力を借りて、その前に勝ち点3を溜めておきたいところかと。ちなみにメンバーの方では前節、3-2と競り負けたオサスナ戦で出場停止だったマタとラタサが戻るんですが、新たにルイス・ミジャとカルモナが累積警告でお休みに。ダミアンも処分の2試合目消化となるため、少々、人で不足の感はあるものの、そこは気合で何とかしないといけませんよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。