神奈川・川崎を拠点とする、8人組ヒップホップクルー・BAD HOP。来る2月19日東京ドームでの解散ライブを控える彼らに、最後にやり残したことを清算する機会が与えられた。用意されたのは、共同生活のための一等地のシェアハウス。それに、1週間の時間と、1000万円もの大金。これが、ABEMAにて放送中の『BAD HOP 1000万1週間生活』に関する全貌である。

参考:【写真】スポンサーに土下座?最後まで情報量の多い展開続きに

 以下より、1月27日公開の【#4】から見どころを紐解いていく。細かなネタバレもあるため、ご注意いただきたい。

・Benjazzy&Vingoが見せた"川崎流のおもてなし"「もう俺らのイベントじゃないじゃん」

 達哉、雄哉、幸和、流星ーーT-Pablowはかつて「Mobb Life」で〈昔のあだ名で呼んでる友達 変わらない〉とラップしていたが、今回の番組で初めてBAD HOPに触れた視聴者であっても、さすがにそろそろ彼らの本名をも覚えてしまったのではないだろうか。それほどまでに、メンバーの自然体が映し出される『BAD HOP 1000万1週間生活』。折り返しを迎えた4日目の残金は、なんと180万円。いよいよ笑ってはいられない状況に陥ってしまった。お金が……お金がほとんど残っていない……。

 しかし、朗報があるとすれば、今週の主役はみんな大好き、BenjazzyとG-k.i.dだということ。Benjazzyと、初日の合コン企画で知り合った港区女子・まゆこの進展は次週以降に語るとして、この日はYZERR、G-k.i.d、Vingo、Benjazzyの4名が、朝10時から川崎・ちどり公園に集合。川崎駅から少し距離があり、工場群に囲まれた自然豊かなこの場所で、11月末に主催イベントを開催するのはすでに明かされている通り(これまで共同生活の最終日と言われていたが、実際には共同生活から約1週間半後の開催となったようだ)。かねてから"やってみたかったこと"であり、同時に子どもたちやヒップホップを取り巻く環境をさらによくするために……。地元への還元とシーンへの貢献は、YZERRを筆頭として、BAD HOPが行動する際、常に念頭に置かれてきたことだ。

 とはいえ、現実的にいまの状況でイベントを開催できるかはまったく別の話。昨日、T-PablowとTiji Jojoが韓国のカジノで大金をすり、YZERRからイベント運営の取り仕切りを任されていたはずのBarkも、今日までほとんど行動していなかったらしい。早朝から、Yellow Patoを連れて、滑り込みで書類申請に奮闘。川崎市役所内でも"勝手にイベントを開こうとしている奴らがいる"と問題になっていたらしく、ラッパーらしからぬ丁寧な電話口で大人の話をする姿からは、彼らが2018年11月の日本武道館でのステージを、たった3ヶ月間の短期間、しかもすべて自前で用意しきるなど、数多の荒波をセルフメイドで乗り越えてきた経験値を感じ取ることができた。

 その姿勢は、ちどり公園チームのBenjazzyやVingoにも見受けられたところ。現状、3000名を集客し、1名あたり3000円のチケット代としてところで、集められるのは900万円。少なくとも、照明やスピーカーもなしで、ステージを建てるだけでも1000万円が見積もられる。そこに参加アーティストの出演費なども重なれば、間違いなく資金が立ち行かなくなる。夢のイベント、風前の灯火。であれば、やれることはすべてやるしかない。なにをするかは、もう決まっている。……シンプルに、土下座だ!

 このイベントの頼みの綱。スポンサーとなる、北浦工業の北浦社長を電話で公園まで呼びつける(メンバーの中学時代の後輩の父親らしい)。社長が公園に到着し、メンバーのもとに。するとなぜか、Benjazzyが急に低姿勢を構え始め、社長の接近とともに、Benjazzyの頭も不思議と地面に吸い寄せられていく。まるで、Tiji Jojoのフロウくらいにスムース。「お疲れさまです!」の第一声も、頭が地面に近すぎるせいでこもって聞こえるし、「(頭)上げてもいいんですか?」という確認からも、ただのポーズではない想いが伝わってくる。北浦社長もすぐ、彼らの思惑を察したようだ。シンプルな土下座に、一切の迷いを感じられない極上のお出迎え。これぞ、川崎流の"おもてなし"。

 ここからがすごかった。北浦社長の度重なる苦笑に"これは押せばいけそう"と期待を見出すと、BenjazzyはTikTokで流行ったスリックバック(空中ウォーク)でステージの大きさを測定したり(今回のオンエアで改めて感じたが、どうしてここまでギャグセンの沸点が高いのに、初日の合コンであれほど陰キャになってしまったのだろう)、G-k.i.dがスピーカーと照明費用(ともに推定120万円の大金)をもねだったり。Vingoも「曲がったことできないんで!」と、Benjazzyに次ぐ綺麗な土下座を披露したりと、やりたい放題。それでも……北浦、動きます。BAD HOPがこれまで、川崎を代表し、街を盛り上げてきた信頼が、なんとか実を結んでくれそうだ。

 合計1250万円近い出費を覚悟しながら、北浦社長が帰宅……しかけたところで、メンバーの頭に思い出された、仮設トイレの設置費用。Vingo、全力疾走。おみやげに仮設トイレの80万円の負債を渡したところで、さすがにYZERRも気づいたようだ。「もう俺らのイベントじゃないじゃん。北浦さんのイベントじゃん(笑)」。

・Benjazzy&G-k.i.d、池上町チャリレースで大クラッシュ「210円払ってバスで来なさい」

 ちどり公園チームの4名が、今度は大師公園に。そこに待っていたのは、Benjazzyの希望で番組が購入してきた人数分の自転車。今回は無料イベントということで、多くの小中学生が自転車で来場することを想定し、メンバー自身も同じ目線で"中学生マインド"を思い出し、会場周辺のロケハンをするという(番組オンエアこそ1月だが、イベント当日に巡るべき聖地巡礼スポットも教えてくれたが、これが後のいわゆる"ネタ振り"に)。

 すると「なんか違うな?」という声が。この自転車は借り物ではなく、あくまで購入品であることを確認してから、おもむろにサドルを抜くBenjazzyと、サドルを渡される前からニヤけ面のG-k.i.d。そのまま慣れた手つきで荷台の間にサドルを挟むと、Benjazzyの合図で一気に荷台の後ろ側を捻じ曲げる。もはや阿吽の呼吸。"鬼ハンスタイル "の改チャリが、ものの数秒で完成した。さらに「六角レンチありますか?」「ハンドルの位置、合ってないよ」という、とても20代後半の男子たちが交わす言葉だと思えない会話が飛び交っていたが、一瞬たりとも忘れてはならない。ここは、どこでもない川崎だ。

 そのまま、馴染みの街である川崎大師近辺をサイクリング。(あくまでメンバー同士だが)蛇行運転に煽り運転を繰り返し、この時代らしからぬドラテクをひとしきり楽しんだ後、YZERRがふと「次、左いきます」と一言。間もなく、なにかを察したBenjazzyが「ふざけんな」とツッコミを入れるも、時すでに遅し。もう目指す先は決まっている。

 辿り着いたのは、"ただいま"と"おかえり"の場所。"ただいま"を言ったのは、Benjazzy。映像では、プライバシーの観点からモザイクまみれだったが、なにを隠そうBenjazzyこと石川幸和の実家。つまりは、石川家に到着した(ちなみに二世帯住宅)。「また明日!」「また遊ぼ!」「じゃあね!」「今日の夜、行けたら銭湯行こうよ」「5時くらいでいい?」なんて会話もほのぼのバイブスで、とても首元に数百~数千万円のチェーンを付けたラッパーがしているものとは思えない。頼むから、普段のライブやクラブ終わりにもこんなトークをしていてほしいと願うばかりだった。愛しすぎる。なお、石川家は疲れたら寝泊まりくらいは許してくれる模様。川崎区で石川家を探して、みんなも転がり込んでみよう!

 公園で昔話に花を咲かせてしばらく。最後の聖地巡礼スポットは、活動初期の楽曲「B.H.G」やYouTubeチャンネル「VICE Japan」のインタビューなどに登場してきた“あの橋”を見上げる場所。池上町公園の近くで、かつてメンバーが飛び込んでいた橋というエピソードを書けばピンと来るだろうか。忘れもしない、彼らの10代の頃の溜まり場である。ここで、YZERRの提案から始まったのが、池上町チャリレース(ロードバイクに乗っている点で、ほかメンバーに比べて有利な条件下にあることに言及しないのが、さすがYZERR)。この旧・溜まり場を起点に周囲を一周し、ビリになったメンバーは、自転車で30分以上の距離にあるちどり公園まで自力で戻らされるという最悪のルールだ。

 スタート時こそ、G-k.i.dのフライングがあったものの、途中時点でYZERRとVingoのビリ回避は確実。残すは、BenjazzyとG-k.i.d。ゴール前にはかなりの競り合いを見せたが、もつれにもつれてこれ以上ないデットヒートに。ここで、G-k.i.dがBenjazzyの自転車のハンドルに設置されたカメラを握り、彼の方に体重を寄せる。するとどうなるか? 当たり前ながら、待ち受けるのは大転倒だ。

 あまりの画力に、オンエア前から話題となっていたこのクラッシュシーン。雑感を並べれば、そもそも仲間を想う気持ちがないのか? 撮影だと忘れていないか? 腕の骨折など心配ではないのか? 東京ドームでの解散ライブやラストアルバムへの影響を考えないのか? さすがにバカな中学生すぎない? など、色々と感じるところはあるが、何度でも言いたい。ここは、どこでもない川崎だ。

 転倒時にチェーンの音が"カシャン"と鳴る国内有数の貴重なクラッシュは、3つのカメラで多角的に捉えられているため、ぜひ見逃し配信でご覧いただくとして、結果はそもそもG-k.i.dが失格。さらに、先にゴールインしたのもBenjazzyで、文句なしのビリ確定である(フライングまでしたのに……。G-k.i.dの幼少期もたぶんこんな感じだったのだろう)。だが、この結果に不服なG-k.i.d。本気の不機嫌で自転車を漕ぐこと30分間。ようやく辿り着いたちどり公園での嘆きの一言は「210円払ってバスで来なさい」だった。あまりにも大人の悟り。この数時間のすべてが無に帰す、身も蓋もないオチとなった。

・Benjazzy、今度は根性でワサビを抹茶アイス味に「先生、行かせてくださいっ!」

 地元周遊からの帰宅後、昨日朝にお手製の豚汁で自慢の料理スキルを発揮したBenjazzyと、父親がレストランのシェフだという期待の料理マン・Vingoが夕食作りに。出来上がったコリアンタウンごはんに舌鼓を打っていると、ここでシェアハウスに異様な来客が(今週の東京ドーム告知は、このタイミングで挿入された。相変わらずシュール)。登場したのは、"閃光の催眠術師"こと、十文字幻斎。多くのメンバーが希望した人生初の催眠術を、特別に出張バージョンで体験させてくれるという。

 このパートでもハイライトを残したのは、やはりBenjazzy。序盤から催眠術にほとんど掛からず、「あ~すいません」という申し訳ない表情を連発。自身の力及ばなさに打ち勝ち、逆にどうしても催眠術に掛かりたい。そこで志願したのが、チューブ入りのワサビが、甘い抹茶アイスの味になるという催眠だった。

 メンバーのなかで最も掛かりやすいと判断されたVingoは、この催眠術にもあっさり適応。「先生、行かせてくださいっ!」。ほとんど根性で志願してきたBenjazzyに、十文字も応える。口に放り込まれる、大量のワサビ。それを舐めた瞬間、血走りながら涙を零すBenjazzyのピュアな瞳。ワサビだらけの口からこぼれてくる、次の楽曲のヒントにもなりそうな宇宙語。そして「めっちゃ、甘いです……」という渾身の強がり。周囲のメンバーからも「どっちなんだよ!」とツッコまれたが、渡されたティッシュに対して即座に舌をなすりつけていたのが、すべての答えだった。ちなみに出張催眠術の費用、15万円なり。

 その後、T-PablowとTiji Jojoが韓国から帰還。オンエア終盤、T-Pablowから衝撃の決意が述べられ、番組の構成作家を務める鈴木おさむの"漢気"、そして彼のパートナーである森三中・大島美幸の生活費が間接的にBAD HOPに流れるまでを観られるなど、最後まで情報量の多い展開続きだったが、その詳細はまた来たるタイミングで振り返るとしよう。

(whole lotta styles)

(C)AbemaTV,Inc.