2023年を振り返ると自動車業界にとって悪夢のような出来事が相次いだ! 日本におけるEVの遅れも気になるポイント

この記事をまとめると

■2023年の自動車業界で起きたさまざまな事象を振り返る

■EVの分野では引き続き海外メーカーに遅れをとるような形となっている

■自動車メーカーや大手販売店などの不正問題が数多く露呈した

2023年の自動車業界は荒波に揉まれた年だった

 2024年になってしばらく時間が経過したが、いまいちど2023年の自動車業界をふりかえってみたい。

 まずは業界の動向から。2023年に入ったころには、コロナ禍や半導体不足の影響が残っていたが、時間の経過とともに徐々に改善されて、年末を迎えるころにはほぼ気にならない程度となった、各メーカーの生産と販売が回復し、対前年比を大きく上まわった。

 これにともない、納車が遅れる問題もずいぶん解消した。ただし、トヨタを中心に一部の車種では依然として続いている。それはコロナ禍や半導体とは別の要因のほうが大きいようだ。

荒波に揉まれた自動車業界が目指すべき未来とは

 5月には、まさかの日野自動車三菱ふそうの経営統合が報じられたことには関係者の誰しもが面食らった。ライバル同士で、しかもそれぞれ親会社がトヨタダイムラーであるにもかかわらずだ。引き金となったのは、前年に明るみになった日野自動車の不正であることは想像にかたくない。

 10月には三菱自動車が中国生産の撤退を決めた。これについてはネガな報じられ方もしているが、筆者は英断だと思っている。

荒波に揉まれた自動車業界が目指すべき未来とは

 市場では、2022年春ごろから始まった円安がさらに加速し、秋口のピーク時には1ドル約152円という歴史的な水準に達した。これを受けて、輸入車の価格が軒並み少なからず上昇した。1年間のうちに複数回、価格の見直しを行なった車種も少なくない。

 一方で、日本のEVの遅れがより顕わになった1年でもあった。めぼしい新しい動きとしてレクサスRZやマツダのMX-30 Rotary-EVの登場こそあったものの、続々とニューモデルを導入した海外勢の勢いとは比べるべくもない。良いかどうかは別として、すでに海外には数多くあるような高性能BEVが日本には存在しないことも、それを象徴している。

荒波に揉まれた自動車業界が目指すべき未来とは

 なかでもいまや電動車の世界最量販を誇る中国のBYD日本上陸が印象的だった。日本勢をはじめBEVを手がける他メーカーにとっても少なからず脅威となるに違いない。

 また、海外では自国の産業を守るために補助金のあり方などで何らか政策面で手を打っているのに対し、日本はあまりにも無策すぎるのも、なんとかする必要があると思わずにいられない。充電施設の普及も思ったよりも進んでいない。とにかく日本はEVに関していろいろ遅れている。

荒波に揉まれた自動車業界が目指すべき未来とは

悪夢のような出来事も

 秋には改名して初となる「ジャパンモビリティショー(JMS)」が開催された。2年前にはコロナ禍で中止をよぎなくされ、その前はオリンピックの準備のため規模を縮小して開催されたこともあり、来場者は目標とされていた100万人を大幅に超え、評判も概ねよかったように感じている。

 相変わらず輸入車ブランドの出展が少ないのは残念ではあるが、国内メーカー各社は、往年の華やかだったころの東京モーターショーを思わせるような、ワクワクさせる内容が多く見られたように思う。

荒波に揉まれた自動車業界が目指すべき未来とは

 印象的な不祥事も多々あった。夏頃からはビッグモーターと損保ジャパンらによる保険金不正請求問題が大々的に報じられた。この問題では、保険料や自賠責などで間接的に我々も影響を受けていることになる。全容の解明と再発の防止は必須である。

 さらには、ダイハツの認証に関する不正も、年末から年明けにかけて大きな展開を迎えたのはご存じのとおりだ。

 4月に海外向け4車種の側面衝突試験の認証について発表があったときには、ここまで根が深いとは誰も思っていなかっただろうが、翌5月には国内向けモデルやOEM車でも不正があったことが明らかになった。

 事態を重く見たダイハツの依頼を受けて第三者委員会が調査したところ、じつに1989年から174件もの不正行為があったことが年末に発表された。これによりダイハツは全車種出荷停止という前代未聞の事態となってしまった。

荒波に揉まれた自動車業界が目指すべき未来とは

 さらに年が明けて、インドネシアで生産される商用車3車種の型式指定が取り消されるという非常に厳しい判断が、国土交通省より下された。

 そこで問題になるのは、該当する車種が安全かどうかだ。ダイハツ車ユーザーにとっては気になって仕方がないに違いない。それについては、型式が取り消された車種に関しての今後の発表を待ちたいが、そのほかはダイハツの奥平社長が述べているとおり、問題ないと思ってよいのではないかと思う。

 整理すると、ダイハツが不正を行なった内容が、安全でないものを安全であるかのように装ったわけではない。認証における”安全性の証明の仕方が正しくなかった”ということだ。むしろ確実に試験を1発で合格できるよう、マージンを大きく確保したと思われるケースが多いように見える。

 実際、社外の認証機関による検査や評価でも、ダイハツ車の安全性に関する成績は概ね優秀であることを念のためお伝えしておこう。

荒波に揉まれた自動車業界が目指すべき未来とは

 もちろん不正は言語道断であることはいうまでもないが、ここで思うのは、認証制度そのものに問題があるのではないかということだ。不正を行なって認証を受けた車両が安全性の評価が非常に高いという現実をどう受け止めるべきか。たびたび同様に不正の報じられる車検制度とともに、とっくに見直すべき時期が来ているように思えてならない。

2023年を振り返ると自動車業界にとって悪夢のような出来事が相次いだ! 日本におけるEVの遅れも気になるポイント