現在開催中のCRYAMY全国ツアー「人、々、々、々。」。同世代の戦友から先輩まで、まさにCRYAMYにしか呼べないメンツで日々熱いライブが繰り広げられているわけだが、その中でもとくに親交が深い先輩バンドがAnalogfishだ。当時飲み屋の店員だったCRYAMYのフロントマン・カワノとその店の客という関係で出会ったAnalogfish・佐々木健太郎。CRYAMY前夜の時代から彼を知る佐々木だからこそ知っているエピソードも続出した対談からは、バンドマン同士というよりも人間同士で深くつながっているふたりの絆を感じることができた。Analogfishは3月15日(金)の神戸・太陽と虎(こちらはKING BROTHERSも交えたスリーマン!)、翌16日(土)の高松TOONICEの公演に出演する。

── この対談する前にふたりでちょっと一杯やってきたそうで。

カワノ 渋谷のガード下のあたりでちょっと飲んできました(笑)。

── いい感じで話していただければと思います。佐々木さんとカワノさんの仲は存じ上げているんですが、どういうきっかけで知り合ったんですか?

佐々木 僕、世田谷の経堂に12年くらい住んでたんですけど、経堂って朝までやってる居酒屋ってあまりないんですよ。でも農大通りの先に朝5時までやってる居酒屋ができたんですよね。そこが経堂の治安を著しく落としてるんですけど(笑)。その「浜焼太郎」で出会ったんです。

カワノ 僕がそこでバイトしてたんです。20歳ぐらいの頃。

佐々木 まだCRYAMYをやる前だったよね。そこに客としてよく行ってたんですよ。

── お客さんと店員という出会いだったんですね。

カワノ そうです。僕はAnalogfishを知っていたから、「うわ、東京だ、有名人いるな」って思ってました。で、初対面のときに……これ、カットしたほうがいいかもしれないですけど(笑)、僕がホールスタッフをやってたんですよ。そしたら健太郎さんが来て、「新しく入ったのか、よろしくね」って気さくに話しかけてくれて。「ありがとうございます」って言ってたら、泥酔した健太郎さんが突然「トイレでクロスおしっこしよう」って(笑)。

佐々木 そう。だからバンドで知り合うっていうよりは、もう全部見せてるんですよ。

カワノ 常連のおじさんじゃないですけど、それが出会いでした。

佐々木 その居酒屋はTHE VOLTSっていうパンクバンドのギターのギースってやつが店長をやってて。バンドマンなんで、気持ちよく酔わせてくれる店なんですよ。

カワノ あの店だけが異常に治安が悪いというか。結構ひどいところだったから、我々も対抗じゃないけど、パンチ見せていかないとっていう。

── なるほど、そういう文化だったと。

佐々木 そこに今回のCRYAMYのツアーにも出てるJIGDRESSのメンバーがいたりと。

カワノ tacicaの小西(悠太)さんがいたりとか。

佐々木 PK Shampooヤマトパンクスとかね。

カワノ そういう魑魅魍魎が集まってた。12時過ぎるとどこも閉まっちゃうから、そこに行くしかないんで、みんな集まってくるんですよ。いろんな人、いましたね。

佐々木 説明するの難しいんだけどね、濃い人ばっかだったな。

カワノ そこで僕は3、4年ぐらい働いてたんですけど、夜中も更けてくると従業員も酔っ払ってきて、半ば職務放棄みたいな感じになるんです。けどお酒は飲みたいから、僕はよく健太郎さんに「ちょっと今日お酒奢ってよ」みたいな。

佐々木 あと、店長ギースの方針として、従業員が自分で注ぎ出したら終わりだから、お客さんに買ってもらえっていう方針なんですよ。

カワノ それで売上を立てるんです。

── なるほど、ガールズバースタイルだ(笑)。

カワノ そう、それで朝方まで飲んで、僕は朝から現場のバイトがあったし、健太郎さんも土木のバイトもやってたので、ふたりしてグロッキーになりながら駅まで行って違う現場に行くっていう。そういうのが多かったな。東京で初めてできた直系の先輩みたいなのが健太郎さんで、一番面倒見てくれました。焼肉とか奢ってもらいましたからね。「ご飯食べてんの?」って言われて。

佐々木 それも経堂だったね。赤堤通りの「からし亭」。

カワノ これもよくないですけど、バイト先は飲食店なんでいろいろ食材とかいっぱいあるじゃないですか。お金がないからそれを盗み食いしてたんですよね。店長にバレないように。

── むちゃくちゃですね(笑)。

佐々木 むちゃくちゃなんですよ。

カワノ で、俺勝手に食ってたら店長から怒られちゃって。「食ってもいいけど言えよ」みたいな。「黙って食うな」って。で、申し訳なくなって。そのときは本当に無一文だったんで、公園の水で麦茶作ってみたいな生活だったんです。それを見た健太郎さんがやつれ方がすごいから行こうって言って焼肉に連れていってくれて。死ぬほど食べました。

── 命の恩人じゃないですか。

佐々木 江ノ島行ったりもしたね。ヤマパンと3人で。

カワノ ヤマトと一緒に飲んでて、朝5時に店が閉まるから帰るかって言って、その帰り際に松屋で牛丼を食べてたんですよ。そしたら健太郎さんもなぜか店に入ってきて。その日SCOOBIE DOとAnalogfishのツーマンが新代田FEVERであったとかで。

佐々木 2019年だね。そのライブの打ち上げが終わって帰ってきたところだったんですよ。

カワノ それで「ソールドアウトだったしギャラも入ったから、お前ら江ノ島連れてってやるよ」って。

佐々木 小田急線なんでね。

カワノ そのまま江ノ島に行って、しらす丼とか食べて。

佐々木 楽しかったよね、今思うと。

カワノ でも最悪なのが帰り、健太郎さんがベロベロに酔っ払って使い物にならなくなって。僕とヤマトは、「健太郎さんももう大人だし帰れるだろう」ということで──。

佐々木 置いてかれたんですよ。

カワノ でもその日の夕方にまた飲みましたから。1回家に帰って寝て、夕方からまた浜焼太郎でバイトだったんで起きて「行くか」と思って準備してたら、健太郎さんから電話がかかってきて。

佐々木 「置いてくなよ! 今から飲み行くから」って。

カワノ そういう繰り返しでしたね。

── そこから2021年に『CRYAMY (red album)』のツアーファイナル、渋谷クラブクアトロでツーマンやるというのにつながっていった。

カワノ そうです。初めての全国ツアー、コロナ禍だったんですけど、ファイナルはAnalogfishが絶対にいいっていうので、FEVERでライブがある時に楽屋まで直談判しに行って。

佐々木 俺が酔ってなかったから「絡みづらい」とか言ってたな。

カワノ ライブ前だったので、初めてぐらいのシラフの健太郎さんだったんですよ。楽屋に入っていって「健太郎さん!」っていつものテンションで言ったら、健太郎さん、もう目も合わせないで「ああ、カワノ久しぶり」って(笑)。飲んでないとこっちか、と。でもそれで快諾していただいて。

── そこがバンド同士としては初めてですか?

カワノ 初めてですね。イベントも被ったこととかなかったので。そのとき、健太郎さんに怒られたの覚えてます。

佐々木 『red album』のツアーなのに、長いMCで「このアルバムは失敗だった」って言ってるんですよ。こんな、ソールドアウトしたファイナルでなんてこと言うんだよ、お前はって。だけどね、ライブはめちゃくちゃよかったんだよ。

カワノ よかったのかなあ。

佐々木 あのMCさえなけりゃ本当によかった。それは言ったね、確かに。

カワノ それは怒られましたね。でも、それが終わって楽屋でみんなと喋ってるときに(Analogfishのドラム・斉藤)州一郎さんからも声をかけてもらって。すごい優しい言葉遣いで、すごい端的に言うと、自分を追い詰めて無理してガッてやるっていうのはあると思うんだけど、これを長く続けようとか、持続させようとかは思わなくていいからねって。

佐々木 そんなこと言ってたんだ。

カワノ 別に長くやるとか、いいストーリーを組んでいくとか、そういうことを目指してやるものではないと思うから、苦しいだろうけど思うままにやっていってっていうことをすごい言ってくれて、それはすごく腑に落ちて励まされましたね。僕は頑張んなきゃ、頑張んなきゃってやってたんですけど、それが途切れるんだったら、それはそれでいいんじゃないかって。長く続けてる先輩からそういう言葉が聞けたっていうのはうれしかったですね。

佐々木 そんなやり取りがあったとは。

カワノ 逆に言うと、Analogfishはここまで25年ずっと一丸となってやってるっていうのもあったかもしれない。

佐々木 まあ、1回ドラム抜けてるけどね。(ドラムの斎藤が病気療養の為2008年脱退するが2009年に復帰)

── そうそう、Analogfishはいろいろ経験されてるじゃないですか。メジャーもやってるし、自分たちでやるっていうこともやってるし。そういうのって見ていてどうですか?

カワノ 俺はできないなと思います。

佐々木 できるよ。

カワノ やっぱ今でさえしんどいですから。

佐々木 大丈夫。俺もたぶん、カワノぐらいのときはしんどかった。一番メンバーの仲も悪かったし、若いし。そこを乗り越えたのか、それしかなかったのかわからないですけど。

カワノ さっき話してたんですけど、今僕が27歳で、健太郎さんが27歳のときって、エピックとの契約が切れるか切れないかっていうときだったって。

佐々木 うん、わりとバンドの歴史の中でも一番苦しい時期だった。でも2020年に独立したんですけど、それで、メンバー同士向き合わざるを得なくなった。年齢も40になって、体力の衰えじゃないですけど……体力がある時って気持ちもみんな立ってて、メンバーのエゴもすごいから揉めると思うんですけど、40くらいになってくると体力もなくなってくるから、「揉めるのめんどくさい」みたいな感じになるんですよ(笑)そういう意味では良い意味でいい加減になってるっていうか、そういう意味では楽になってきましたね。

── そこまでたどり着けるバンドって本当に一握りですもんね。大体その前に壊れちゃうバンドが多い中で、やっぱりAnalogfishは曲がりなりにも続いているっていうか。それはすごいことだなと思います。

佐々木 でもフラワーカンパニーズとかSCOOBIE DOとか怒髪天とかを見てるからっていうのはでかいですね。先輩を見てるから。

── CRYAMYの最新アルバムはお聴きになりましたか?

佐々木 聴きました。さっきカワノにも言ったんですけど、今度は広さというより深度、深さのほうにいったなと思って。ファストコアのバンドを聴いているみたいだった(笑)。でもやっぱりCRYAMYっていうバンドのアティテュードっていうか、本当にスティーヴ・アルビニと仕事をしたいって自分で舵取りしてやったこととか、マジかっこいいと思うし、そういう生き方ですよね。絶対カワノは今これをやりたいんだろうなと思うし。たとえばエレファントカシマシが『生活』っていうアルバムを作ったじゃないですか。あれがないと今の宮本(浩次)さんの動きはないわけで、その深さってアーティストのポテンシャルなんですよ。だからすごくいいアルバムだと思う。

── Analogfishにもそうやって深いところにいっていた時期ってありましたか?

佐々木 うちらはどうしても「売れたい」って色気づいちゃうから。

カワノ そんなことないと思いますけど(笑)。でもよく一緒に飲んでた時期、2018年とかにちょうど出た『Still Life』は深みを感じましたね。じっくり聴きたくなるアルバムだなって。その後の『SNS』はまたちょっと開けたというか。

── また浮上してきている感じがしますよね。

カワノ そうですね。まなざしがすごく外に向いていて。ポップな曲も多いですし。

佐々木 そうだね。でも僕はカワノみたいに自分で舵取りして前に進むとか、そういうモチベーションはないんです。メンバーがいて、メンバーに何かアイデアがあってっていうところがないと進めないんで。だからこうやって突き進んでいく人を見ていると……居酒屋で一緒にバカ騒ぎしてる時は、こんなに野心があるやつだって思わなかったんですよ。作品を出してそれが世間の目に触れて評価にさらされていくたびにメキメキ成長していくのが如実に分かって、「人ってこうやって成長していくんだ」っていう。きっとたぶん、あのとき居酒屋にいたみんなも応援してるし、みんな感じてると思いますよ。あの濁り水の中から成功してほしいって(笑)。

── 濁り水(笑)。そう言われて、カワノさんはどうですか?

カワノ どうだろう。当時のほうがむちゃくちゃではあったんですけどね。当時はそれこそバンドやれるのかやれないのかぐらいの時期でもあったんで。メンバーもいないし、とりあえず東京出てきたはいいけど、結構当時からやけくそだったなって。「成長してる」って言ってくださってるのはもちろんうれしいんですけど、あの当時からずっと変わってないのが、どこかやけくそなんですよね。アメリカ行くっていうのを急に決めるのもそうだし、今度のライブの回り方もそうだし、どこかで「もうどうにでもなれ」じゃないですけど、自分のことなのに乱暴に扱ってしまうみたいなところがあって。逆にそれがあったから、あの濁り水から這い上がって来れたのかなって(笑)。

佐々木 でもみんな応援してると思うよ。

カワノ それはすごい感じます。あの当時かかわった人間はみんな、なんやかんや言いながらも思ってくれてる。

佐々木 だからこういう知り合い方でよかったなと思うし、あらかじめ全部見せ合ってるんで。

── そして今回のツアー、改めてAnalogfishと対バンということになったわけですけど、一緒にやるのもそれこそクアトロでやって以来ということですか。

カワノ そうですね。

── 神戸はKING BROTHERSも入れてスリーマン、高松ではツーマンですね。

カワノ 結構成長したところは見せられるんじゃないかな、と個人的には思っていて。それこそ数年前にクアトロでやったときは、僕がまだ幼いというか、人間的に成熟しきってなかった時期だったんで。今回はすごいどしっとやれる気もしてるかな。そういうところを出せたら、健太郎さんにもかっこいいところを見せられるんじゃないかなと思います。あそこから少しずつ前進はしてきたつもりではあるので。

佐々木 CRYAMYぐらいの若手で勢いのあるバンドだったら、うちらを呼ぶメリットなんてないんですよ。ないけど、だけど「好きだ」って言って誘ってくれるこいつの心意気に応えたい。今回のツアーのメンツ見ても、若者のバンドが呼んでる感じじゃないんですよね。本当に好きなバンド呼んでる感じがして、それもこいつのすごくかっこいいところだし、アティテュードをしっかり出して好きなことをちゃんとやる。誰の言うことも聞かない、自分の信じたことをやるっていうのを感じるんで、応えたいです。ここで言っちゃうけど、カワノが俺たちの聴きたい曲10曲ぐらいリクエストしてくれないかな? と思って。

カワノ いいんですか?

佐々木 下岡の曲が9曲で俺のが1曲でもいいから(笑)。

カワノ いやいや、どっちも好きなんですよ! でも本当にいいんですか? 今晩帰って考えます。

Text:小川智宏 Photo:小境勝巳

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<公演情報>
CRYAMY WORLD TOUR 2024 『人、々、々、々』 ※終了公演は割愛
1月28日(日) 大阪・Yogibo META VALLEY w/a flood of circle
2月10日(土 )愛知・名古屋CLUB UPSET w/pavilion、突然少年
2月11日(日) 京都・磔磔 w/Helsinki Lambda Club、Hammer Head Shark
2月24日(土) 広島・4.14 w/カワノ(弾き語り)
2月25日(日) 岡山・CRAZYMAMA 2nd Room w/天国注射
3月2日(土) 福岡・LIVEHOUSE CB w/LOSTAGE
3月3日(日) 熊本・Django w/LOSTAGE
3月15日(金) 兵庫・神戸太陽と虎 w/Analogfish、KING BROTHERS
3月16日(土) 香川・高松TOONICE w/Analogfish
3月20日(水・祝 )福島・club SONIC iwaki w/時速36km
4月6日(土) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE w/w.o.d.
4月7日(日) 石川・金沢van van V4 w/w.o.d.
4月14日(日) 北海道・札幌SPiCE w/時速36km
料金:前売4,000円/当日4,500円
※オールスタンディング、入場時ドリンク代が必要
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-tour/

CRYAMY特別単独公演『CRYAMYとわたし』
6月16日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
料金:全席指定2,500円
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-yaon/

<リリース情報>
CRYAMY 2nd フルアルバム『世界/WORLD』
発売中
価格:CD 3,000円、カセット 3,500円(税別)

■収録曲
1.THE WORLD
2.光倶楽部
3.注射じゃ治せない
4.豚
5.葬唱
6.待月
7.街月
8.ウソでも「ウン」て言いなよね
9.天国
10.人々よ
11.世界

CRYAMY 2nd ALBUM Digest Movie

関連リンク

■CRYAMY公式サイト:http://cryamy.tokyo/
■Analogfish公式サイト:https://www.analogfish.com/

左から)CRYAMY・カワノ、Analogfish・佐々木健太郎