AFCアジアカップカタール2023・決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)が28日に行われ、タジキスタン代表とUAE代表(アラブ首長国連邦代表)が対戦した。

 今大会でグループAに入ったタジキスタン代表は、中国代表との第1節をスコアレスドローで終えると、第2節では開催国のカタール代表を相手に0-1で敗れたが、第3節でレバノン代表に2-1で勝利。勝ち点「4」を積み上げ、カタール代表に次ぐグループAの2位に入り、AFCアジアカップ初出場ながら決勝トーナメント進出を決めた。

 一方、UAE代表はグループCに組み込まれていた。第1節で香港代表を3-1で破ると、第2節では退場者を出しながらパレスチナ代表との一戦を1-1のドローに持ち込んだ。最終節ではイラン代表に1-2で敗れたものの、3戦全勝のイラン代表に次ぐ2位でグループステージを突破。3大会連続の決勝トーナメント進出を果たしていた。

 荒木友輔主審が笛を吹いてキックオフを迎えた一戦は、UAE代表が良い入りを見せる。2分、敵陣中央でフリーキックを獲得すると、ファビオ・リマが左足で鋭いキックを放つが、ここはGKルスタム・ヤティモフのセーブに阻まれる。

 その後もUAE代表が両サイドの幅を使った攻撃でタジキスタン代表ゴールに迫る時間が続くが、待望の先制点を挙げるには至らない。すると13分にアクシデントが発生。自陣中央からボールを持ち運ぼうとしたアブドラ・ラマダンが負傷し、プレー続行が不可能に。アブドゥラ・ハマドとの交代でピッチを後にした。

 序盤は劣勢を強いられたタジキスタン代表だったが、時間の経過とともに徐々に流れを引き寄せていく。30分には左コーナーキックを獲得すると、エソン・パンジシャンベが放ったキックはニアサイドで跳ね返されたが、セカンドボールを回収して2次攻撃へ。ペナルティエリア右でボールを収めたゾワール・ジュラボエフが深い位置から浮き球のクロスボールを送ると、ボックス内で競り勝ったヴァフダット・ハノノフがヘディングシュートを沈めた。タジキスタン代表が先手を取っている。

 1点ビハインドとなったUAE代表は、終盤にかけて猛攻を披露。7分間のアディショナルタイムの中でも幾度となくチャンスを作ったが、こじ開けることはできず、前半はタジキスタン代表の1点リードで終了した。

 後半に入ると、前への姿勢を強めたUAE代表に対して、タジキスタン代表はロングボールを用いたシンプルなカウンターアタックでゴールを脅かす場面を増やす。55分にはペナルティエリア手前で前を向いたパンジシャンベが右足を振り抜くも、コースを狙ったミドルシュートはGKハーリド・イーサに弾き出される。60分にはカウンターの場面で、パンジシャンベからのスルーパスでアリシェル・ジャリロフがペナルティエリア左へ侵入。飛び出してきたGKイーサの位置を見て、左足で冷静に転がしたが、シュートはゴールカバーに入っていたバーダー・ナセルにブロックされた。

 さらに70分、タジキスタン代表は右サイドへ大きく展開すると、走り込んだシャハロム・サミエフが寄せてきた相手を振り切ってのボールを持ち運ぶ。中央へグラウンダーのボールを入れると、走り込んだジャリロフがダイレクトで合わせたが、シュートはジャストミートせずに枠を外れた。

 UAE代表は敵陣へ押し込みながらも、攻撃時に精彩を欠く場面が目立つようになる。90分にはペナルティエリア手前でセカンドボールを拾ったヤヒヤ・アル・ガッサニが右足でミドルシュートを放ったが、カーブのかかった一撃はファーポストに嫌われた。

 このままノーゴールで終わるかと思われた後半アディショナルタイムUAE代表は敵陣左サイドフリーキックを獲得。途中出場のアリ・サレーが右足でインスイングのボールを供給すると、スピードのあるボールはボックス中央で待っていたハリファ・アル・ハマディの頭にピタリ。ヘディングシュートがゴールに吸い込まれ、土壇場でUAE代表が試合を振り出しに戻した。

 試合は劇的な形で延長戦に突入。延長戦では両チーム明らかに疲労の色が見えるようになり、フィニッシュまで持ち込むシーンこそ作り出しながら、決定的な勝ち越しゴールは生まれない。最終的に1-1のまま120分間とアディショナルタイムが終了し、決着はPK戦に委ねられた。

 先攻のタジキスタン代表、後攻のUAE代表ともに1人目のキッカーは成功。タジキスタン代表は2人目のハノノフが落ち着いて決めると、対するUAE代表はカイオ・カネドのゴール右下を狙ったキックがGKヤティモフに完全にコースを読まれて阻まれる。その後は4人目まで両チーム全員が成功。迎えたタジキスタン代表5人目のアリシェル・シュクロフは、GKイーサにコースを読まれながら、ゴール左下隅に魂の一撃を叩き込んだ

 この結果、アジアカップ初出場のタジキスタン代表が、グループステージ突破に続いて、準々決勝進出を決めた。一方のUAE代表は2大会連続でベスト4入を果たしていたものの、今大会はまさかのベスト16敗退で終わった。

 タジキスタン代表の準々決勝は2月2日の14:30(日本時間20:30)にキックオフイラク代表対ヨルダン代表の勝者と激突する。

【スコア】
タジキスタン代表 1-1(PK戦:5-3) UAE代表

【得点者】
1-0 30分 ヴァフダット・ハノノフ(タジキスタン代表)
1-1 90+5分 ハリファ・アル・ハマディ(UAE代表)

タジキスタン代表がUAE代表を破る [写真]=Getty Images