タワーマンションの高騰が年々、とどまることを知らない。都心の物件価格は過去10年間で69%上昇。昨年3月には新築マンションの平均価格が初めて1億円を超えた。だが、一方ではバブル終焉は近いとも言われているのだ。
◆今が天井なのか?高値で売り抜ける人も続出中
タワマン価格が上がり続ける一方、「暴落説」が語られて久しい。管理費が異常に高い、相場が上がりすぎて売れない、不便が多いことが知られて買い手がいない……などとマイナスなイメージが喧伝されているが、実際に売った人の話はほとんど出てこない。
そんななか昨年の11月末、経営コンサルタントで起業家の田端信太郎氏がXに次のように投稿した。
「2013年に7400万円で買ったマンションが、この秋に1億2000万円で売れました」
◆「この10年でタワマンを買った人は大体儲かっている」
’13年はアベノミクスや黒田バズーカが話題になり、これから景気が良くなるという空気が醸成されていた頃だ。田端氏に聞いた。
「昨年の春に不動産屋と相談したときは1億1000万円が適正価格だと言われた。その時点で同額だったので、売ることを考え始めました。居住用不動産を売却した場合、3000万円まで利益が控除される制度が’23年度で終わるため、昨年中に決着をつけたいと思ってたんですよ。正直な話をすると7400万円のうち700万円しか頭金を入れておらず、残りは住宅ローン。税引き後でざっと考えれば、700万円が6000万円に化けたわけです」
素晴らしいリターンだが、世間でタワマンで大儲けした話を聞かないのはなぜか。
「語る人は少ないですが、この10年でタワマンを買った人はだいたい儲かっていますね」
実際、タワマン価格と販売戸数は約10〜20年間にわたり上昇の一途を辿っている。
◆日銀の金融緩和終了とともに暴落が訪れる!?
不動産評論家の榊淳司氏は、タワマン価格の上昇はコロナによる景気対策費200兆円(事業規模)が不動産市場に流れたためと、中国人富裕層の影響があると見ている。
「大規模なコロナ対策が行われたのは’20年と’21年。ところが2年間で200兆円も事業規模を膨らませたのに、当時の日本のGDPが560兆円に対し現在はほとんど変わっていない。本当なら600兆円を超えてもいい」
つまり、消えてしまった200兆円が不動産市場に流れ込んだのだという。
◆下がり続ける日本人の平均年収「ローンがギリギリ」
「GDPは付加価値に対して発生する。土地や中古マンションをいくら売り買いしてもカウントされないんです」
200兆円は五輪以降、下がると言われていたタワマンの価格を逆に引き上げることになった。一時期は一般人のタワマン購入者も多かった。夫婦共働きが増え、世帯収入が上がったためだ。だが、昨年下半期よりマンションの成約価格、販売価格ともに横ばいとなっている(REINSマーケットデータより)。
「日本人の平均年収はここ10年で下がり続けているため、今はローンで買えるギリギリの水準といえる」
◆中国人の「タワマン爆買い」もそろそろ終わる?
“異次元の金融緩和”もそろそろ終わりそうな空気もある。
「植田和男総裁がゼロ金利政策を終える可能性が取り沙汰されています。市場では株価が下がり、為替は円高に振れつつある。いずれにしろ短期金利は上がるでしょう。連動する住宅ローンの変動金利が上がっても最初は0.1%程度でしょうが、消費マインドに与える影響は大きい」
中国人富裕層による買い占めも噂になっていたが、それも終わりそうだという。
「豊洲や港区のタワマンの3割ほどは、数十億円の資産を持つ中国の富裕層が買っていました。しかし今は中国の不動産も値下がりしています。そうなると現金化するために一斉に売却する可能性がある」
◆売りたい人はタイミングを見極めて
さらに今年、リーマンショック級の経済危機があるとタワマンは一気に暴落する可能性があると榊氏は指摘する。
「これから買おうという人は’24年前半は様子見で良い。売りたい人はタイミングを見極めたほうが良いと思う」
タワマン神話崩壊のXデーはいつになるのか。
◆今から買う場合に押さえるべきポイントは“土地柄”
物件購入においては、土地も大切な要素。都内で開発余地がある場所はどこも上がっているなか、可能性がある場所を探すには?
「どこでも良いわけではなく、地理が重要。たとえば立石も再開発がなされていますが、利便性が良くなるわけではない」(榊氏)
交通網が整備されつつある陸の孤島も良い。
「大江戸線や南北線に加えて山手線の新駅が近くに出来た高輪は港区の中では比較的安く買えるエリア。庶民には十分高いのですが」
◆「タワマンが建つと周りの中古物件も上がる」
一方、今注目されているエリアでも注意が必要だ。
「大型商業施設や物販店があってもオンラインショッピングが主体の今、数十年後には衰退する可能性もある。そういう意味では豊洲も有楽町線しか入っていないし、盤石ではないと思います」
田端氏は、タワマンに手が出なかった場合でも、周辺の物件に注目することを勧める。
「タワマンが建つと周りの中古物件も上がる。新築のおよそ8掛けの値段で売り出されます。今は土地の値段だけでなく資材、原材料も上がっており、新築の値段にその値動きが一番反映されるんです」
榊氏も、「発展可能性があり、自然と地価が上がっていくような土地であれば、タワマンの存在が起爆剤になることはよくあります」と話す。じっくり吟味したい。
【実業家・田端信太郎氏】
ZOZO広報担当執行役員を経て独立。経営者の発信強化を軸に広報やマーケティングコンサルティングを行う。毎週水曜22時InterFMでラジオ生放送中
【住宅ジャーナリスト・榊 淳司氏】
榊マンション市場研究所主宰。主に首都圏のマンション市場に関するさまざまな分析や情報を発信。『激震! コロナと不動産』(扶桑社)など著書多数
取材・文/週刊SPA!編集部 写真/WAWA Faula Photo Works
―[[タワマン神話]崩壊が始まった!]―
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