その刑務所には少年たちの「心の荒れ地」を耕す奇跡の教室があった……。前作『空が青いから白をえらんだのです』に続く詩集、待望の続編が新潮文庫2月新刊として刊行。受刑者に寄り添い続けた作家が出会った宝石のような言葉たち。

■奈良少年刑務所と「社会性涵養プログラム」

少年院とは異なり、強盗・殺人・レイプ・薬物違反などの重い罪を犯した17歳から26歳未満までの男性が服役している奈良少年刑務所。この刑務所では特にコミュニケーションに難がある少年ら10人を対象に、半年かけて行われる授業、通称「社会性涵養プログラム」が2007年から2016年まで開講されていました。このプログラムの目的は、受刑者たちの心の扉を開き、自己表現を出来るようになってもらうこと。そうすることで他者とのコミュニケーションが取りやすくなり、結果的に再犯を防ぐことを大きな目的としています。

■「物語の教室」

いくつかの科目に分かれたプログラムの一つに、本作の編者である寮美千子氏とその夫、松永洋介氏が講師を務める「物語の教室」がありました。「物語の教室」は絵本と詩を使った月に一コマ(一時間半)のプログラムで、少年たちと教官2人が参加します。前半二回は絵本を使った朗読劇、後半四回は「詩の教室」を行うのだが、この教室を通して少年たちは大きく変わっていきます。彼らはモンスターなどではなく、傷ついた心を抱え、様々な鎧をまとった子どもたちでした。そして鎧が外れた少年たちから出てくる、まるで宝石のような言葉たち。

奈良少年刑務所の廃庁まで9年間講師を続けた作家が出会った少年たちの多くの感情。それを編んだ奇跡のような98編を収録しました。刑務所の教育専門官に聞く「子どもを追い詰めない育て方」を付録。

少年たちが紡いだ詩

・「時流」(本書p. 44-45


・「言葉」(本書p. 56-57)


・「地図」(本書p. 20-21)


■著者略歴

1995(昭和30)年、東京生れ。千葉に育つ。 ‘86年、毎日童話新人賞を受賞し、作家活動に入る。2005(平成17)年、『楽園の鳥』で泉鏡花文学賞を受賞。’06年、奈良に移主し、’07年より’16年まで、奈良少年刑務所で「社会涵養プログラム」の講師を担当。児童文学からノンフィクションまで幅広い著作がある。著書に絵本『エルトゥールル号の遭難』(絵・磯良一)ほか、『空が青いから白をえらんだのです』(編者)、『あふれでたのはやさしさだった』、『なっちゃんの花園』など。

■書誌情報

【書名】名前で呼ばれたこともなかったから―奈良少年刑務所詩集―(新潮文庫刊)

【編者】寮美千子

【発売日】2024年1月29日、電子書籍も同日配信開始

【定価】649円(税込)

【ISBN】978-4-10-135242-8

配信元企業:株式会社新潮社

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ