「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められていますか?

年齢によって「年金受給額」に大きな差が開く

国税庁令和4年分 民間給与実態統計調査結果』によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は458万円です。令和3年度は443万円でしたから、15万円分、数値を上げています。

1年を通じて勤務した給与所得者の平均賞与は72万円で、令和3年度の67万円から5万円上がる結果となりました。

平均給与458万円ですと、ボーナスなどを含めない場合、月の収入では38万円ほどになります。前年の収入によって多少の差はあるものの、手取りはざっと30万円ほど。子どもを抱える世帯などには貯蓄が難しいことは容易にうかがえる金額です。老後の生活資金を貯めるのは二の次という家庭も多いことでしょう。

ならば年金暮らしで…と考えたいところですが、厚生労働省令和4年 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給者は3,598万人で、受給者平均年金は月額約14万4,982円。「年金+α」での生活が求められていることは間違いないといえましょう。

今後もさらなる先細りが懸念される年金ですが、今現在の受給者は月額でいくらほどもらっているのでしょうか。厚生労働省令和4年厚生年金保険・国民年金事業の概況』を見ていきます。

同調査では「年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額」を調査しています。厚生年金・老齢年金については、受給権者数は全国に1,600万人。平均年金月額は14万3,973円です。下記が年齢別の平均年金月額になります。

【60代】

60歳・・・9万4,853円

61歳・・・9万1,675円

62歳・・・6万1,942円

63歳・・・6万4,514円

64歳・・・7万9,536円

65歳・・・14万3,504円

66歳・・・14万6,891円

67歳・・・14万5,757円

68歳・・・14万3,898円

69歳・・・14万1,881円

【70代】

70歳・・・14万1,350円

71歳・・・14万212円

72歳・・・14万2,013円

73歳・・・14万5,203円

74歳・・・14万4,865円

75歳・・・14万4,523円

76歳・・・14万4,407

77歳・・・14万6,518円

78歳・・・14万7,166円

79歳・・・15万8,877円

【80代】

80歳・・・15万1,109円

81歳・・・15万3,337

82歳・・・15万5,885円

83歳・・・15万7,324

84歳・・・15万8,939円

85歳・・・15万9,289

86歳・・・15万9,900円

87歳・・・16万732円

88歳・・・16万535円

89歳・・・15万9,453円

なお、厚生年金の受給額のボリュームゾーンは「9~10万円」「10~11万円」でそれぞれ約112万人。次いで「17~18万円」が約106万人、「16~17万円」が約104万人と続きます。

約半数の高齢者が「年金だけ」で暮らしている現実

日本の年金制度は厚生年金国民年金の2階建てですから、この金額にプラス数万円の基礎年金を受給している状況が見て取れますが、それにしても月の収入としては厳しいもの。貯金を切り崩して生活せざるを得ないといえましょう。

しかし日本人、貯蓄ができるほどの資金的余裕はあるのでしょうか。

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査の概況』によると、世帯主の年齢階級別に1世帯当たり平均所得金額は「50~59歳」が742万1,000円で最も高く、「40~49歳」が728万5,000円、「30~39歳」627万2,000円と続きます。最も低いのは「29歳以下」の377万5,000円。

上記はあくまで世帯主別の金額。1人あたりの所得金額ではまた違った様相がみえていきます。

先ほどの国税庁の発表によると、20代前半の1人あたりの平均年収は273万円、20代後半で389万円です。都内暮らしの場合、家賃やら何やら日々の出費でカツカツ……となってもおかしくない金額です。貯蓄なんてとても考えられる状況ではありません。

厚生労働省の調査より世帯人員1人当たりの平均所得金額をみると、最も高いのは「50~59歳」で291万9,000円、「60~69歳」が259万7,000円、「40~49歳」が239万5,000円と続きます。最も低いのは「70歳以上」の194万6,000円です。

70歳以上の所得の大部分は公的年金。公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のなかで「公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯」は24.9%となっており、多くの高齢者世帯が、年金以外の収入がない状態で生活していることが見て取れます。今ですら、月十数万円の年金だけを頼りに生活している高齢者が4分の1を占めているのです。

■貯蓄ができないのなら「生涯現役」しかない?

人生100年時代となった今、60歳をもはや定年とは捉えず、「生涯現役」でいることを国が推し進めています。高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの定年引上げや継続雇用制度の導入などが始まりました。就業期間の延長にともない、年金受給開始時期について、上限も75歳に引き上げられています(令和4年4月から適用)。

年金は諦めるほかないのでしょうか。厚生労相のホームページには次のような言葉が記されていました。

「若い世代は年金を受け取れない?」への抽象的な回答

“Q.少子高齢化が進行すると、若い世代の年金額は減ってしまうのではないでしょうか?

A.年金制度は、5年に一度、健康診断のような形で行う「公的年金の財政検証」によって100年先までの見通しを検証しており、令和元年の財政検証では、若い世代が将来受け取る年金は、経済成長と労働参加が進むケースでは、引き続き、将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込みです。年金制度が破綻している、若い世代は年金を受け取れない、といったことは全くありません。”

「経済成長と労働参加が進むケースでは」という限定的なシチュエーションにおいて、「若い世代は年金を受け取れない、といったことは全くありません」。

一方内閣府のホームぺージには「現状のままでは2040年代以降マイナス成長に」との発表がありました。具体的に見ると「人口減少が継続し、生産性が停滞した場合には、2040年代以降マイナス成長となると見込まれる」と明確に危機感を表しています。厚生労働省には、希望的観測だけでない説明が求められているといえましょう。

(※写真はイメージです/PIXTA)