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 新たな研究によると、周囲を驚嘆させるギターの超絶テクニックは、同性に自分の力を見せつける威嚇の意味合いが強いのだという。

 女の子にモテたくてギターを始めた。これは男性ギタリストのあるあるだ。そして実際、エクストリームメタルのような超絶テクニックを身につける男性は、性的な欲求が強いようだ。

 だが『Evolutionary Behavioral Sciences』に掲載された研究によるなら、女性とお近づきになる手段としてギターは間違っているかもしれないという。

 それでも意味がないわけではない。なぜなら圧倒的な速弾きができれば、同姓の仲間内から一目置かれることになるだろうからだ。

【画像】 優れたギターの腕前は女性を魅了するか?

 そもそも一部の男性はモテるために音楽を始めるのだと言われている。というのも、音楽のうまさは性的な魅力をアップさせるだろうからだ。

 この仮説が正しいかどうかは不明だが、こうした視点に立つと音楽に関するいくつかの疑問を説明することができる。

 たとえば、歴史的に見て男性の作曲家の方が多いのは、男性(の異性愛者)は子孫を残すためのパートナー獲得競争が熾烈であるからと言えるかもしれない。

 また音楽家の創作のピークが20代半ばなのは、ちょうど子作りの適齢期だからと考えることができる。

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 しかしギターが上手いと女性にモテるかどうかは微妙なところだ。

 たとえば、エクストリーム・メタルのような超テクニカル速弾きで女性が魅了されるかというと、そんなことはないように思える。

 ではなぜ男性は一心不乱にギターの練習に打ち込むのか?

 この疑問に答えるため、自身もバンド経験があり、エクストリームメタルの大ファンだというオークランド大学のポスドク研究者タラ・デレッチェ氏らは、男性ギタリストを調べてみることにした。

 はたしてギターが上手いと本当にモテるのだろうか? そうでないとしたら男性はなぜギターを練習するのだろうか?

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ギターがうまくてもモテるわけではなかった

 この研究では、最終的に集められたエクストリーム・メタルの男性ギタリスト44人を対象に、ギターや音楽、ほかの男性とのライバル意識、女性経験といったさまざまなことを質問している。

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 質問の一例を挙げるなら、「カジュアルセックスについてどう思うか?」「付き合った女性の人数」「ギターの練習時間」「コードと単音、どちらの練習が多いか?」「どのくらいの速さで弾けるか?」といったことだ。

 さらには参加者の音楽の好みやギターのプレイスタイルを知るために、伝統的なヘヴィメタル曲(ブラック・サバスの『Iron Man』)と、より難易度の高いエクストリーム・メタルの曲(リングス・オブ・サターンの『Shards of Scorched Earth』)のどちらが好きかといった質問もあった。

 その結果、ギターのコードをよく弾く人は、モテたいという欲求が強いことが判明した。そうしたギタリストは、カジュアルなセックスにより肯定的だったからだ。

 ところがだ、生憎なことに必死にギターを練習して腕前を上げたとしても、現実に女性にモテるわけではなかった。

 ギターがうまくても、たくさんの女性とお付き合いできているわけではなかったからだ。

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女性にはモテなくても同性にマウントをとれる

 モテたくてギターを始めたはずなのに、理想と現実の間には大きなギャップがあるようだ。

 だが、この研究では、もう1つ重要なことが明らかになっている。

 それはギターの速弾きテクニックは、むしろライバルである男性にマウントを取るためのものである可能性があることだ。

 というのも、エクストリーム・メタルのギタリストは自分よりも下手なギタリストに対して優越感を感じて、いい気分にひたっていたからだ。

 音楽や芸術のような文化的な表現は、異性を惹きつけるためだけでなく、仲間内での立場を強くするなど、いくつかの社会的機能があると考えられているが、どうやらギターもまた同じであるようだ。

 デレッチェ氏がPsyPostに語ったところによると、エクストリームメタルの男性ギタリストは、女性にモテるためにギターを弾くのではなく、むしろ「男性を威嚇する」ために懸命にテクニックを磨いていると言えるのだそう。

 モテたいギタリストの意外な事実に光を当てた今回の研究だが、サンプル数が少なく、エクストリームメタルというジャンルがかなりニッチであるため、この結論を一般化するのは難しい。

 また調査対象となったギタリストが、ただのアマチュアである点も注意が必要だ。もしかしたらプロのギタリストなら、また違った結果が出る可能性はある。

 なお今回の研究では、調査対象として意図的に女性を除外したわけではないとのこと。

 参加者を募集しても、女性メタルギタリストが1人しか集まらなかったのだそう。やっぱりスゴすぎるギターが弾けても、女性にモテはしないのかもだ。

References:Extreme metal guitar skill: A case of male–male status seeking, mate attraction, or byproduct? / Extreme metal guitar skills linked to intrasexual competition, but not mating success / written by hiroching / edited by / parumo

 
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メタルギタリストの超絶テクニックは同性を威嚇するが女性にモテるようになるわけではない