芸人として活躍しながら、小・中学生向けの補修塾を経営する笑い飯の哲夫。子どもの教育に悩む親たちからの相談に答えていく。(著書『がんばらない教育』より。初公開2023年6月7日の再配信)

◆落ち着きがなく飽きっぽい娘の将来が心配です

相談者◉39歳女性・会社員(夫、娘8歳)

 小学校3年生になる娘は、落ち着きがなく注意力散漫。忘れ物が多く、飽きっぽく、習い事も続かず、何事もすぐラクをしようとします。発想力は豊かなタイプだと思うので、褒めて伸ばしたいとは思いつつ、どうしても「何でそんなこともできないの!」「将来ロクな大人にならないよ」と厳しい口調で怒ることが増えてきました。

 先日は連絡帳に親のサインをもらうのを忘れ、私の字体をマネして偽造していました。うまく書けていて感心しましたが、私文書偽造です。このままでは将来甘言に乗せられて変な高額バイトに手を出したりしないか心配です。

 こういう子どもをどのように指導していけばいいでしょうか。

◆哲夫のアンサ

 ではまず、ご相談くださったお母さんの理想の娘像を、相談文を反転するかたちで羅列していきたいと思います。

 落ち着きがあり、注意力に長け、持っていったものは必ず持って帰り、興味を持ったことは末永く興味を持ち、習い事は習い終わるまで続け、何事も苦労を惜しまずに行動する、そういうものに、娘を育てたいという感じですね。

 雨にも負けなそうでいいと思いますが、しんどくないですか。ここまで仕立て上げるには躾の量が多すぎて、お母さんも大変だし、それを取り入れなければならない娘さんも大変ではないでしょうか。

◆短所は捉え方を変えれば長所に

 ということで、お母さんが思う娘さんの短所を捉え方の転換によって長所にしてみましょう。

 常にフットワークが軽く、常にあらゆる方面に注意を向けていて、自分のものだけに固執することなく、一つの事柄だけに縛られることなく、習得している知識や技術の適性を素早く見抜き、何をするにしても要領を踏まえて体を労る行動ができる、そういう娘さんなのですね。

 とても長所が多い娘さんだと思うのですが、相談文にはまだあきらかな長所が書いてあります。発想力が豊かなタイプだと書いてあります。またそれだけではなく、親が感心するくらいに文字を真似るのがうまいと挙げられています。

◆考え方の転換で新たな特技を一緒に見つけてみては?

 習字は、基本的に先生のお手本を真似して書きます。そしてよりよく真似ができていると、朱色の丸をもらえます。つまり娘さんは、習字の初歩をマスターしていることになります。

 そこに発想力が乗っかってくるわけですから、「ありがとうございます」のひらがなを使って、漢字の「感謝」みたいな字体に仕立てるような、書道アートを教えてあげてはいかがでしょうか。

 ぜひ、「あまいことばにのせられて」のひらがなを使って、漢字の「犯罪」みたいな字体になるよう練習させてあげてください。気がつけば、成功するまで何度も試みる努力家になっているかもしれません。「おかあさんのことばづかい」のひらがなを使って、漢字の「怒声」みたいにしても楽しいと思います。

 完成した「犯罪」や「怒声」の文字をトイレに貼り付けて、日々自分を戒めましょう。

★短所を長所として捉え直せば見えてくるものがあるはず

笑い飯・哲夫】
’74年、奈良生まれ。関西学院大学文学部哲学科卒業。’00年に西田幸治と漫才コンビ・笑い飯を結成。『がんばらない教育』『えてこでも分かる笑い飯・哲夫訳 般若心経』など著書も多数