木村拓哉ら世界各国の豪華出演者が集結したHuluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」。“宇宙よりも謎が深い”と言われる深海を舞台に、世界の海で起きている不可解な現象を追うSFサスペンスだ。第3話ではシグルヨハンソン(アレクサンダーカリム)がミフネ財団へ訪れる様子が描かれた。本記事では、考察を踏まえながら同話を振り返る。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】クジラによる異常な攻撃行動…大迫力のカット

■“黒い嘔吐”の原因は水道システムへ

第2話で死者を出した“黒い嘔吐”の感染症フランスの大学病院医療センターに勤めるセシル・ローシュ(セシル・ドゥ・フランス)は、高級料理店「ル・サンケ」の副料理長・ジルベルトの血液を調べていた。「ル・サンケ」は最初に黒い嘔吐の症状が報告された店で、ジルベルトは治療の甲斐なく命を落としている。セシルは顕微鏡のプレパラートにジルベルトの血液を塗ると、そこに自分の血液を落とした。

顕微鏡で観察すると、赤血球がなにかにすさまじいスピードで浸食されるようすが明らかに。調べてみると、ジルベルトの血液には血液に触れると毒素を生成するバクテリア「ビブリオ・バルニフィカス」が潜んでいることがわかった。だがこのバクテリアは通常、人間の抵抗力には勝てない。もし感染したとしても、致死率は低いのだ。

だが今回の場合は違う。ビブリオがとんでもない速さで血球を破壊し、速やかに人を死に至らしめた。異常な動きを示すバクテリアについて、セシルは変異株か、新種の発生を疑う。

そしてときを置かずして、事態はさらに深刻化する。洗車サービスを営む店で、若者が黒い吐しゃ物を吐いて緊急搬送されたのだ。彼は「ル・サンケ」の感染元と思われていたロブスターには触れていないし、同店で飲食をしたわけでもない。そして空気感染であれば、被害はさらに爆発的な広がりを見せているはず。

そこでセシルの脳裏によぎったのは、「ル・サンケ」で証言されたロブスターが“どうなったのか”。従業員によれば、謎の液体をまき散らした怪しいロブスターは「ディスポーザー」に捨てられた。ディスポーザーとは生ごみを粉砕処理する装置だが、粉砕した生ごみは焼却処理されず下水へ流される。つまりロブスターが持っていた感染源が、水道システムに触れたということだ。

セシルの推理を裏付けるように、病院ではにわかに搬入患者の数が急拡大していた。黒い嘔吐を招く感染症の原因、そして対抗策は見つかるのか。

レオンシャチの解剖をすることに

トロンヘイム大学教授のシグルヨハンソン(アレクサンダーカリム)は、ホーヴスタッド・エネルギー社が開発を進めている地域で発見された新種のアイスワームの件で忙しく立ち回っていた。新種のワームは周囲のバクテリアとともにメタンハイドレートの層を深く浸食するといった異常行動を見せている。メタンの排出量は小さいため温室効果は危惧しなくてもよいが、代わりに小さな船なら沈めるほどの爆発的な海流を産む。

新種のアイスワームは異常な速度で繁殖していることから、シグルの所属するチームは恐らく同時多発的に他の海域でも同種が確認できたのではないかと考えていた。そこで環境汚染に対処するバイオ技術に投資しているミフネ財団へ協力を求めるべく、ジュネーブを訪問。そこで対応したリク・サトウに、ノルウェー海で見つかったアイスワームの資料を渡しながら、「海運業も大変でしょうね」と探りを入れた。

途端、空気がピリつく。バリア・クイーン号はミフネ財団が所有していた船で、先日大きな海難事故に遭ったばかりだったからだ。「バリア・クイーン号の件ですが…救助にきた船を2頭のクジラが襲ったとか」と深掘りしようとするシグルだったが、「そう聞いています」と言ったサトウは素早く会話を切り上げてしまう。

シグルの資料を受け取ったサトウは、さっそく東京にいる財団の会長アイト・ミフネ(木村拓哉)に連絡を取る。「同じ種か?」と威厳たっぷりに情報を精査するミフネに、サトウともう一人の部下が同じ種であろうと簡潔に結論を述べた。

「アイスワームの見つかった海域から、船を完全に遠ざけておくべきでしょう」サトウが告げると、ミフネの目が厳しく光る。「ホーヴスタッド以外に、誰がこのことを知ってる?」「ヨハンソン博士がいったい誰の利益を守ろうとしているのかが問題だ」ミフネが懸念していること、突き詰めようとしていることがなにかはまだわからない。ただ「彼に嘘をつく理由はないと思います」と見解を伝えた部下に、「同感だ。しかし確認したほうがいいだろう」とだけ告げる。

さまざまな関係者が策謀を巡らせるなか、研究員を乗せたまま沈んだジュノー号が発見された。海に沈んだままだという船を記録した映像を、海洋生物学研究所のシャーロット・“チャーリー”・ワグナー(レオニー・ベネシュ)は師であり上司であるカタリーナ・レーマン教授(バルバラ・スコヴァ)らとともに見守る。船が沈み、同僚が2人も亡くなった原因を、しっかりと究明するためだ。

深海に横たわる船へ、しずかに寄っていくカメラ。船を取り巻く悲痛な静けさに涙を流すチャーリーだったが、映像には奇妙なものが映り込んでいた。いままで見たこともない、モヤのように広がる発光体。研究員メンバーは、言い知れない不安を表情に浮かべながら謎の光に見入っていた。

■わずかな時間で圧倒的な存在感を見せた木村拓哉

木村演じるアイト・ミフネが初登場した第3話。その存在感はさすがの一言に尽きる。

巨大な財団の創立者であるアイト・ミフネは、非常に理知的な印象が目立つ。きっちりと整えられた頭髪、見事に着こなされたスーツ、問題に対しては微に入り細を穿つ慎重な姿勢が、その印象を支えているのだ。役として“大物”という以上に、威厳と重みを感じさせる発声や表情の作り方は海外のトップスターたちに引けを取らない迫力を持っていた。

未知の感染症、海洋生物の異常行動、次々に報告される新種生物など、謎が謎を呼ぶ「THE SWARM/ザ・スウォーム」。まだまだ核心が見えてこない同作の物語において、彼が今後どのような役回りを演じるのかに期待したい。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

木村拓哉“ミフネ”役の出演で光る存在感/(c)Hulu Japan