コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“白いシチューの誕生秘話”を描いた漫画『白いシチュー』(※『戦争めし』より)をピックアップ。

【漫画】“白いシチュー”誕生秘話が感慨深い…生徒たちのために奮闘する教師の姿に「努力の賜物」「感謝」と反響の声続々

作者である漫画家の魚乃目三太さんが、2023月12月15日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、7400件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事では魚乃目三太さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

■脱脂粉乳を克服するために生み出された“白いシチュー

本作は「ヤングチャンピオン・コミックス」の『戦争めし 8』(秋田書店)に収録されている『敗戦と学校給食と白シチュー』というエピソード。“日本のシチュー”がなぜ白くなったのか、その背景が描かれている。

1945年8月15日の敗戦直後、長く暗い戦争は日本に飢餓をもたらし、年間1万人もの餓死者がいたと言われている。そんな状況の中、日本はアメリカ政府から食糧支援をもらい、集められた救援物資は幼子や小中学校の子供たちへ優先的に支給。そして小中学校の再開は、進駐軍の管理する小中学校の管理下で行われていた――。

当時学校の給食では、牛の乳を乾燥させて粉にしたものを、もう一度水分に戻した“脱脂粉乳”がパンと共に配られた。そして大半の子供たちは“牛乳”を飲んだことがなかったため、脱脂粉乳の味や臭いに慣れず、苦手な生徒たちが続出してしまう。中には、脱脂粉乳を一切口にせず、パンを喉に詰まらせる者も…。

見かねた教師たちは、子供たちのために“脱脂粉乳を使った給食の献立”を考え始める。そして軍から送られてくる食糧支援物資の「小麦粉」と「脱脂粉乳」を使い、出来上がったのが“白シチュー”だった。具材として肉を少々、野菜を多めに入れ、脱脂粉乳独特の臭みと苦味を消すことに成功。さらに小麦粉を混ぜてとろみを付けることで、腹持ちも良くなった。

そしてこの“白シチュー”を食べた生徒たちは「美味しい」と大絶賛。瞬く間に“白シチューのレシピ”が全国の小中学校に行き渡ることとなる。こうして脱脂粉乳が苦手な生徒たちのために開発された“白シチュー”は、後に“クリームシチュー”と名前を変え、現在も多くの生徒たちから受け入れられる人気メニューとして、確固たる地位を築いたのだった。

普段から何気なく食べている“白いシチュー”のルーツが描かれた本作。ネット上では、「白シチューって日本食だったんだ!」「面白くて勉強にもなった」「先生たちの愛情と努力によって生み出された食べ物だったとは…感慨深い」「子供たちのことを考えて頑張ってくれている人達に感謝」「大好きな白いシチューにこんな物語が隠されていたなんて…」「先生たちの努力の賜物ですね」など、反響の声が多数寄せられている。

■作画の際には「下手くそだけど一生懸命描く…それしか考えていません」

――『白いシチュー』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

『戦争めし』という作品では、「知らないことを知ってもらう」を元に描いています。そこで日本の食事を調べていくのですが、その中の1つとして、洋食であるシチューの歴史を調べたときに、“日本だけがシチューが白い”ということがわかったのです。そこでどんどん調べていき 話を深く掘り下げて『白いシチュー』というお話が出来上がりました。

――本作では、“白いシチュー”誕生の瞬間が非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

日本には、「軍事教育である教科書を黒く塗った」という歴史があります。その黒塗りの教科書の存在は知っておりましたが、“進駐軍の方針に反して多くの教師が辞めた”という事実は、「白いシチュー」について調べるまで知りませんでした…。そのため『白いシチュー』の物語では、そういう背景があったことも知ってもらいたくて話に入れたので、ぜひ注目してほしいです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

最後のアイリッシュシチューの説明のシーンを何度も文章を直して書いたので、何度も読み直してしまいます(笑)。

――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?

「知らないを知る」「面白い」「興味がわく」「前向きに生きる」など、そういった思いを持ちながら話を考えています。その人にはつらい人生かもしれませんが…どうしても応援したくなるような人物を描きたいと思っています。

――魚乃目三太さんの作品では、キャラクターの言動や、リアルに描かれた食べ物の描写など、魅力的な要素がたくさん詰め込まれている印象を受けました。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?

たくさんの作品を今後も出していきたいと思っています。だからこそ作画には力を入れたいと思います。下手くそだけど一生懸命描く…それしか考えていません。

――今後の展望や目標をお教えください。

“食”を通じて“戦争”を知ってもらうことが『戦争めし』という作品でしたが、次は“戦争”を通じて“歴史や人物”を知ってもらえるような作品が作れたらなぁと思います。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

いつもたくさんの感想やメッセージありがとうございます!全部目を通させていただいております。お返事できませんが、皆様のお力添えいただいたおかげで漫画が描けます。これからもより良い作品を描き続けるように頑張っていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

白いシチューの誕生秘話を描いた『白いシチュー』が感慨深い…/(C)魚乃目三太(秋田書店)2015