コナン・ドイルによって創作された『シャーロック・ホームズ』シリーズに登場し、ホームズが心得ているという設定の架空の武術「バリツ」のルーツとなったとされる護身術を解説する教本が発売される。

エドワードバートン=ライトによる著作の翻訳版として、邦題は『シャーロック・ホームズ護身術 バリツ』となる。平凡社から3月8日(金)に刊行予定だ。翻訳は田内志文氏、監修を殺陣師の新美智士氏が務める。

バリツ」の記述は短編『空き家の冒険』で初登場した。宿敵・モリアーティ教授との滝での死闘の末死亡したと思われていたホームズだが、のちにワトソンの元に帰還する。ホームズは「バリツ」の心得があったためにモリアーティを撃退し生還することができたのだ、と語る。

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(画像はwikipedia「バリツ」より)

「日本の武術である」と言及されているものの、「バリツ」の詳細な描写は本編中にはない。それがどういった類いの武術であるのか、ファンや研究者の間でも解釈が別れている。「柔道である」という説や「武術(bujitsu)」である説など、バリツをめぐる議論はホームズを語るうえで非常にポピュラーな題材となっている。

バリツの正体をめぐる議題のうち有力な説のひとつに、19世紀イギリスで創始された武術「バーティツ」に由来するものであるというものがある。バーティスは柔道をルーツとする護身術であるため、作品内での表現とも合致するものとなっている。

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(画像は田内志文氏Xアカウントより)
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(画像はwikipedia「バリツ」より)

本書の著者のバートン=ライトは「バーティツ」の考案者だ。日本で柔道を学んだのち、イギリスで独自の護身術としてバーティツを作り上げた。素手による攻防の技術のほか、コートやステッキ、傘などの日常的な道具を用いた戦闘術なども存在するとされる。

本書ではバートン=ライトによるバーティツについての記述や当時それの鍛錬に勤しんでいた習得者の写真などを交え、詳細な解説を行うものだ。ホームズファンだけでなく、護身術や19世紀イギリスの文化に興味がある読者にとっても興味深い書籍となっていそうだ。真相は謎に包まれた「バリツ」を理解するための手段のひとつとして、熟読してみるといいだろう。

なお、ホームズがバリツを使用したとされる、モリアーティとの死闘が描かれた短編『最後の事件』は全集『シャーロック・ホームズの思い出』などに収録されている。

バリツを学び、いざというときも紳士的にピンチを潜り抜けてみよう。

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