婦人科系の病気にはさまざまな種類がありますが、その中には、妊娠・出産の経験の有無によってリスクに変化がみられる病気があるようです。妊娠・出産の経験が「ない」女性の方が高リスクと考えられる病気には、どのようなものがあるのでしょうか。産婦人科専門医の本多釈人さんが解説します。

エストロゲン」にさらされる期間の長さが関係

 妊娠・出産経験が「ある」女性より、「ない」女性の方が高リスクな病気はいくつか存在します。それぞれの病気の症状は、次の通りです。

【子宮内膜症】

本来、子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜が、子宮以外の場所(卵巣や腹膜など)で増殖・剥離を繰り返すのが子宮内膜症です。卵巣の中で子宮内膜が発生した場合、血液がたまって卵巣が腫れてきてしまいます(チョコレート嚢胞)。

【子宮筋腫】

子宮の筋肉の一部が変化してできる、コブ状の良性腫瘍です。それ自体が生命を脅かすものではありませんが、放置していると10キログラムを超えるような大きさになってしまうこともあります。筋腫の影響で、ぼうこうや直腸に圧迫が及ぶ場合もあるため、注意が必要です。

【子宮体がん】

2種類ある「子宮がん」のうち、妊娠・出産の経験がない人がかかりやすいのが子宮体がんです。生理周期とともに体内で分泌される女性ホルモンの一つ「エストロゲン」にさらされている期間が長いほど、発症リスクが高まります。自覚症状が現れにくく、不正出血が起こるなど、症状が進行しないと気付かないこともあります。

PMS(月経前症候群)】

月経が始まる3~10日前にイライラ、倦怠(けんたい)感、憂鬱(ゆううつ)、情緒不安定睡眠障害、顔や手足のむくみ、乳房痛、下腹部痛といった心身の症状が現れる疾患です。ホルモンの急激な変動によって起こります。

【乳がん】

子宮体がんと同様に、乳がんもエストロゲンの影響を受ける状態が長いほどリスクが上昇します。妊娠・出産経験がない人や回数が少ない人、また初潮が早かった人も注意が必要です。

子宮内膜症や子宮筋腫、子宮体がん、乳がんは、エストロゲンにさらされる期間が長くなっていることがリスク上昇の原因と先述しましたが、これには、女性が初潮を迎える年齢が昔より早くなっていたり、第1子妊娠・出産の平均年齢が30歳を超えていたりと、現代の女性が一生涯のうちに生理を迎える回数が増えたことが関係しているとされています。

サインや注意点は?

 これらの病気のリスクが高いと考えられる女性は、次のようなサインに要注意です。何よりも「早期発見」することが大事なので、年に1回、婦人科検診を必ず受けるようにしましょう。

【子宮内膜症】

月経時に強い痛みを伴います。しかし本来、加齢で生理痛がひどくなる可能性は低いです。単に「生理痛の症状が変わった」と考える人もいると思いますが、何か原因があると考えて専門医に相談しましょう。

【子宮筋腫】

月経時の出血量が増えますが、経血量は他の人と比べにくく、気付くのが遅れてしまうこともあります。昼用のナプキンが1時間もたない人は注意しましょう。

【子宮体がん】

主な症状は不正出血です。ただし、おりものに血が混じる程度の症状であるケースもあります。閉経後に不正出血がみられる場合は、早めに専門医へ相談しましょう。

PMS(月経前症候群)】

ケースによってはうつ症状につながることもあるので、放置しないようにすることが大切です。「いつもと生理前の様子が違った」と感じたら、専門医に相談してください。

【乳がん】

乳房のしこりや、形の変化などが症状です。日頃からセルフチェックや観察をして、いち早く異変に気付けるようにしましょう。

オトナンサー編集部

妊娠・出産経験「なし」でリスクが上がる病気とは?