LIFULL HOME’S 総研 副所長/チーフアナリストの中山登志朗さん(左)、タレントの井上咲楽さん(右)

東京都千代田区に本社を置くLIFULLライフル)は31日、2023年における実際の問合せ数からユーザーの「本気」で住みたい街を算出した「2024年 LIFULL HOME’S みんなが探した!住みたい街ランキング」を発表した。チーフアナリストの中山登志朗さんが順位変動の理由などを解説。タレントの井上咲楽さんや、注目の街「橋本」「浦安」の不動産会社社長らとの深掘りトークセッションなども行われた。

首都圏のランキングでは、借りて住みたい街は4年連続で「本厚木(神奈川県)」が1位、買って住みたい街は5年連続で「勝どき(東京都)」が1位となった。

小田急小田原線本厚木駅」から都心へダイレクトアクセス可能な交通利便性の高さ、厚木市の住民に対する支援の手厚さなどが理由で支持を集める本厚木。一方、コスパ良好な街として葛西が初のトップ3入りをしたほか、トップ30県内では都心12駅が順位を上げている

中山さんの分析によれば、借りて住みたい街ランキングは物価高騰の影響やテレワークの継続などの理由から生活コスト重視の郊外エリアに軍配が上がるも、若年層単身者の「都心回帰」の兆しも見られ、二極化しつつあるという。

買って住みたい街ランキングでは、昨今の都内における新築マンションの価格高騰の影響もあり、すでに竣工している「勝どき」の物件が価格・広さ・規模で抜群の優位性を示していることから、五年連続で首位に輝いた。一方で都心回帰の動きは限定的で、割安な準郊外エリアが上位に進出しつつある。コロナ禍を契機に子育て世代の「住」の在り方が大きく変化したと考えられる。

発表会では首都圏版への言及にとどめられたものの、LIFULL HOME’S は近畿版・中部版・九州版のランキングも発表済みだ。

近畿版では「出町柳」駅が「借りて住みたい街」初の首位に躍り出た。京都市内の駅としては初の1位だ。九州版では博多が圧倒的な存在感を示す一方、延伸工事の完了した七隈線の各駅が「買って住みたい街」上位に進出。駅前開発が進んだことでマンションが急増、問い合わせ件数が増加しており、さっそく延伸効果が出ているものとみられる。中部版では岐阜が両ランキングで1位を獲得。名古屋まで快速で20分というタイパ、物価や物件価格の安さが人気の理由と考えられる。

リニア新駅開業控え大注目の「橋本駅」

浦安エリアを担当する明和地所 代表取締役 今泉向爾さん(左)と、橋本エリアを担当する落合不動産 代表取締役 落合健さん(中央)

発表会ではLIFULL HOME’S 注目の街として東京・神奈川・千葉・埼玉の6駅が挙がった。都内屈指のコスパを誇る北綾瀬駅、リニア新駅開業を控える橋本駅、都内に出やすく賃料水準も安価な浦安駅のどかさで便利な八街駅、埼玉一強の大宮駅、都心から近いのにあまり注目を浴びてこなかった蕨駅……中でも注目の「橋本駅」「浦安駅」について、当該エリアの不動産会社2社を交えたトークセッションが繰り広げられた。

明和地所の今泉向爾さんによると、浦安の魅力は「広い街」にあるという。千葉県では小さい街ながら、マンションが集中しており広い部屋も多い。町全体もゆとりがある。たとえば海に伸びるシンボルロードは道路幅がとても広く、両サイドに10メートルの歩道がある。平坦な街ゆえ自転車での通勤・通学者も多いが、すぐ隣を自転車が走っても問題なくベビーカーを押して悠々と通れるほどで、その安全性から子育て世代にも人気が高い。もちろん東京の大手町や虎ノ門へ30~40分程度でアクセスできる交通利便性も高い評価の理由だ。

橋本エリアの魅力はオンとオフがしっかりしている街、と語るのは落合不動産の落合健さん。新宿まで京王相模原線で40分、新幹線が停まる新横浜駅までJR横浜線の快速で30分を切るアクセスの良さもさることながら、休日は道志川沿いでキャンプを楽しんだり、JR相模線茅ケ崎まで行って湘南の海を見たり、あるいは町田まで出てロマンスカーで箱根の温泉へ、といったオフの楽しみも充実している。

もちろん鉄道業界として注目したいのは「リニア神奈川県駅」の存在だ。開業はまだ先の話で詳細なダイヤも不明だが、リニア中央新幹線なら橋本~品川間が5~8分とまるで隣町のような感覚で移動ができると考えられている。「そのうちリニア通勤という言葉も出て来るのではないか」と落合さんは語る。

工事中リニア神奈川県駅(2022年5月時点)

またLIFULL中山さんは、橋本エリアに関して「住宅より先にオフィス需要が出て来るのでは」と言及。「静岡や愛知の企業がサテライトオフィスを持つことは考えられる。発展可能性しかない街。大宮がまさに成功例で、同じことが橋本でも起きるかもしれない」という。

各エリアのランキングや詳細な分析については、LIFULL HOME’Sの特設サイト「みんなが探した!住みたい街ランキング2024」で確認できる。

記事:一橋正浩