冬になると、天気予報やニュースで時々見かけるこの方…そう、冬将軍です。この冬将軍とは一体何者なのか、なぜそう呼ばれているのか、気になった人もいるのではないでしょうか。
冬将軍の意味と由来、そして天気予報で「冬将軍」を見聞きした時にはどんなことに注意をしたら良いのかについて、気象予報士が詳しく解説します。


冬将軍とは?

毎年冬になると耳にする「冬将軍」という言葉。天気予報気象予報士が解説する際、天気図に兜や鎧を身につけた将軍が描かれているのを見たことがある方も多いと思います。

冬将軍」とは、冬の厳しい寒さのことで、特に日本の場合はシベリア高気圧がもたらす強い寒気を表します。冷たい空気が蓄積されてできたシベリア高気圧から、季節風やジェット気流の蛇行によってたびたに日本付近へ南下してきます。
シベリア高気圧が勢力を強める11月〜3月頃にかけて、冬将軍天気予報に登場するようになります。強い寒気が流れ込んでくると予想された時には「冬将軍が襲来する」、寒気が日本付近からなかなか抜けていかないようすを「冬将軍が居座る」といったように、擬人化した表現が使われます。

ただ、「冬将軍」という言葉について、気象庁による明確な定義はありません。このため、解説をする気象予報士によって基準や使うタイミングは若干異なるのが事実です。例えば、上空1500m付近で-6℃以下の寒気は平地で雪、-12℃以下だと大雪の目安となるため、それらを目安として使う人もいれば、数年に一度レベルの寒気やそのシーズン一番の強さの寒気に限定して使う予報士もいます。
ですが、いずれの場合にも共通しているのは、私たち気象予報士は、特に気象状況に気をつけていただきたい時に「冬将軍」という言葉を使うようにしているということです。日本に冬将軍がやってくると、西高東低の冬型の気圧配置が強まって厳しい寒さとなり、日本海側を中心に大雪となる可能性があります。


冬将軍の由来

冬将軍」の言葉の由来は、200年以上前にまで遡ります。1812年、フランスの皇帝ナポレオン率いるフランス軍がロシア遠征を行った際、ロシア軍の焦土作戦にあい、物資や食料の調達、休憩場所の確保が不可能となりました。その状態の中、ロシアの冬の厳しい寒さが兵士たちに追い討ちをかけ、フランス軍は撤退に追い込まれたといわれています。このことを、イギリスの新聞が「ナポレオンはGeneral Frost(厳寒将軍・霜将軍)に負けた」と報じました。日本では「冬将軍」と翻訳され、ヨーロッパで最強とも言われたナポレオンを打ち破るほどの冬の厳しい寒さを、そのように呼ぶようになったのです。


冬将軍がやってくる時は大雪に注意・警戒

冬将軍は毎年のようにやってきますが、時には人災や大規模な交通障害、停電などの災害をもたらすほどの大雪になることもあります。日本海側を中心に注意・警戒が必要です。

近年では、2020年12月中旬と2018年2月上旬に、非常に強い寒気が1週間近く日本の上空にとどまったため、日本海側の地域で記録的な大雪となりました。いずれの事例でも除雪中の事故が相次ぎ、国道や高速道路では大規模な車の立ち往生も発生しました。

大雪により福井県内の国道8号で発生した車の立ち往生(2018年2月)

大雪により福井県内の国道8号で発生した車の立ち往生(2018年2月)

また冬将軍の強さや攻め込むルートによっては、日本海側だけではなく、太平洋側でも大雪になることがあります。それは、雪雲をせき止める脊梁山脈の間を通り抜けたり、寒気の吹き出しが強く脊梁山脈を乗り越えたりしてしまうようなときです。
例えば2022年12月下旬には、西から非常に強い寒気が回り込んだため、雪雲が関門海峡の間をぬって四国地方太平洋側まで流れ込みました。高知市で観測史上1位となる積雪14cmを記録するなど、四国の平地でも大雪となりました。
冬将軍がやってくるときの冬型の気圧配置では「太平洋側は晴れる日が多い」ものの、例外もあるため、太平洋側の地域にお住まいの方も油断は禁物です。

大雪が予想された時の備えについて、詳しくはこちらのページをご確認ください。
知る防災「大雪が発生したときは」

発達した雪雲が四国地方に流れ込むようす(2022年12月)

発達した雪雲が四国地方に流れ込むようす(2022年12月)


厳しい寒さによる水道管凍結にも要注意

冬将軍がもたらす厳しい寒さは、水道管の凍結や断水を引き起こすこともあります。
2016年1月下旬は、奄美大島で115年ぶりの雪が観測されるほどの強烈な寒気が日本付近に南下しましたが、この時は九州など西日本を中心に水道管が凍結、50万世帯以上で断水が発生しました。また2018年1月下旬、東京都心で48年ぶりの記録となる最低気温-4℃を観測した寒気がやってきた際にも、関東〜中国・四国の3万世帯以上で水道管凍結による断水が発生しています。

日最高気温0℃未満の真冬日が続いたり、最低気温が−4度を下回ったりするようなときには、水道管凍結に注意が必要です。特に東日本や西日本の普段それほど冷え込みが強くない地域では、水道管凍結に対する意識が薄く、対策方法を知らないという方も多いです。不慣れであるからこそ、早めの対策が必要という意味でも注意しましょう。

水道管凍結の対策方法については、詳しくは以下の記事で解説していますのでチェックしてみてください。
「マイナス4度で水道管凍結?凍結防止の「水抜き」とは?」

天気予報でよく聞く「冬将軍」とは? 意味や由来、注意すべき天気のポイント