山川の人的補償として和田の名前が挙がったことでファンが紛糾した(C)Getty Images

 いろいろあったプロ野球のシーズンオフ。中でも最もインパクトが強かったのが、この話題でしょう。

 西武からソフトバンクへFA移籍した長距離砲・山川穂高。その人的補償として提示されたプロテクトリストの28人から、「和田毅」の名が漏れており、一度は西武側からソフトバンク側へ獲得の意向が通達された-といわれる“事件”です。

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 ホークスレジェンドとも言うべき42歳のサウスポーが、まさかの移籍と言うこともあって、発表前に『日刊スポーツ』がこの一件をスクープ。すると両チームのファンを中心に「山川の人的補償に和田は是か非か」と大論争に発展しました。最終的に「人的補償甲斐野央」が発表され、事態は収拾した形です。

 スポーツ紙のデスクが言います。

「この経緯について両チームの編成担当者は『墓場まで持っていく』ことが義務づけられています。しかし、人間だからそうもいかず、様々な舞台裏を含めて報道されているのが実情です。その中で『人的補償制度があるから、このような悲劇が起きてしまう』との声も出ており、SNS上では様々な議論が巻き起こっています」

 スポーツ各紙の報道によれば、人的補償については巨人の原辰徳前監督が早くから撤廃論を展開しているほか、このほどプロ野球選手会もあらためて廃止の必要性を主張。「和田の悲劇」が再び起きないよう、プレーヤーズファーストの見地から訴えています。

 しかし、これらの報道には失われがちな視点があります。

 FAで「奪われる側」、すなわち選手を見いだし、育てながらも他球団に「持っていかれる」側の声です。

 12球団で最多の21名が「FA流出」した西武のファン(40代男性)は、こう語気を強めます。

「『悲劇』と言いますが、トレードでも普通に『あの球団に行ってくれ』という例はあるわけですよね。FAに限ってのみ、球団の都合で選手が動くことが『かわいそう』と言われることが納得できません。そして何より、我々西武ファンは毎年夏を過ぎると、『今年もいなくなるのか』という恐怖に怯え、秋になると実際にいなくなるわけです。FAは選手の権利であることは、頭では分かっています。しかし、選手を失う側からすれば戦力の補充という点において、人的補償はなくてはならないものだと思います」

 今回も山川を失ったことは痛手でしたが、補強ポイントの中継ぎに甲斐野が加わったことで、西武ファンの「傷心」はかなり癒やされた形になります。

 前述のファンはこう締めくくるのです。

「確かに所沢には都心から通うと遠いですし、春先は寒く、夏は暑い。密閉式のドーム球場に比べるとハードな環境だと思います。でもファンはあたたかく、選手個々を強く愛してくれます。甲斐野投手も熱烈に迎えたいと思いますね」

 新天地は「住めば都」となるか。勝負の2024年シーズン、開幕が待ちきれません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

人的補償はやっぱり必要? 無視できないFAで「奪われる側」の声