異能の音楽家同士の、優雅で贅沢で、シュールで不思議な共演ふたたび。かつて『ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団』『暴虐のからくり人形楽団』の2枚のアルバムを共作した、谷山浩子ROLLYによる共演ライブが決まりました。Shibuya duo MUSIC EXCHANGEの20周年記念公演の一環として開催される「duo 20th Anniversary Live ROLLY & 谷山浩子」は、4月25日(木)、19時開演。久々の共演に向けて盛り上がるふたりによる、出会いのきっかけ、楽曲の分析、創作の秘密、ライブの意気込み等々、いつまでも尽きないトークをどうぞご覧あれ。

――おふたりの初共演は、2008年ですね。そもそものきっかけは?

谷山浩子(以下、谷山) 私が毎年やっている『猫森集会』というコンサートがあって、毎回ゲストをどうするか? という会議があるんです。その時に、レコーディング・ディレクターと、当時のマネージャーが、毎回「ROLLYさんはどうですか?」と言ってくるんですよ。それで私は、本当に申し訳ないけれど、『笑っていいとも』に出ていたギターも弾ける芸人さん? みたいな認識だったので、お呼びしたとして、向こうも私も何をしていいかわからなくて、困るんじゃないか? と思ったんですね。しかもイメージとして、声が大きくて圧が強いという、私のとても苦手なタイプの人を想像してしまったので、何回も却下したんですけど。

2018年猫森集会写真

ROLLY はっはっは。

谷山 音楽を調べもせずに、イメージだけで。でも何回却下しても、毎年言ってくるんですよ。ここまでふたりが言うんだったら何かあるのかな? と思って、世田谷パブリックシアターでやっていた舞台を観に行ったんです。『三文オペラ』を。

ROLLY それはお目が高い。私は、客席に現れて、いきなり暴漢に襲われて、すっ裸にされて、娼婦のジェニーになるという、そういう役でした。

谷山 女性の役で歌を歌って、とても妖艶な感じで、「おおー!」と思って。終わって、楽屋にご挨拶に行って、ノックをしたら、ドアがそーっと開いて、顔が半分出て来て。その時に思ったんですけど、拾ってきたばっかりの野良猫みたいな(笑)。警戒心と、ちょっと興味と、みたいな感じの、内気な人が現れて、その時の風情を見て、“何かできるかも”と思ったんです。そのあと、曲を聴いてもらったんですよね。

ROLLY 僕には姉がふたりいるんですが、二番目の姉が谷山浩子さんを大好きだったんです。オルガンを弾きながら、♪ねこの森には帰れない、と歌っていたのを、横で聴いていました。その後、クイーンの「キラー・クイーン」や「マイ・ベスト・フレンド」を聴いて、クイーンというのは谷山浩子さんみたいな音楽だなと、思ったことがあるんですよ。

2018年猫森集会写真

――言われてみれば。リズムの弾み方が、似ているような。

ROLLY ピアノがね、手のひらに卵がはさまる感じの、気品のある弾き方で。それで、この曲はクイーンのギタリスト、ブライアン・メイっぽく弾いたら合うんじゃないだろうか? と思って、家で弾いているうちに、どんどん面白くなってしまった。最初は、「谷山さんの完成された素晴らしい音楽に、一体自分が何をすべきだろうか?」と、思い悩んだんです。失礼なことになってはいけないと思っていたんですが、あの、アレみたいなもんですね、スペインのどこかの教会の、歴史的な肖像画の修復を、地元のおばあちゃんが描いて台無しにしたみたいな話で(笑)。谷山さんが作られた音楽の世界に、僕がいたずら書きをするというコンセプトで、“ここに髭の生えた変な小僧が立ってるぞ”“ここに人形が覗いてるぞ”って、やっているうちに面白くなってしまった。それを、谷山さんに聴いていただいたんです。

谷山 びっくりしました。「ねこの森には帰れない」は、デビューアルバムに入っている曲で、船山基紀さんがアレンジしてくださって、そのイメージでずっと固定されていたんです。チューブラー・ベルズがカンカン鳴ったりする、ちょっと可愛らしい感じだったのが、すごくかっこよくなって、違う曲に聴こえたんです。今までいろんな人にギターで入ってもらったけど、こんな弾き方をする人は初めてでした。すごいコーディネート力だなと思いました。

ROLLY 一度、いたずら書きの手法がわかったら、どんなものにでもいたずらできるようになっちゃった。それを、ライブという形でお客様の前で発表して、さらに2枚のアルバムにもなって、そしてとうとう、お客様を洗脳することに成功したんです。どうやら(笑)。

谷山 そうなんですよ。だから、ROLLYさんのいないところで「さよならDINO」とか、「KARA-KURI-DOLLWendy Dewのありふれた失恋~」とかを歌うと、「ROLLYさんの声が聴こえる」ってアンケートに書かれる(笑)。

ROLLY いなくても聴こえてくる、それはミュージシャン冥利に尽きます。僕もたまに、あのアルバムたちを聴きます。すべての曲が好きですけど、中でも「さよならDINO」は忘れられない、思い出のある曲ですね。

2018年猫森集会写真

谷山 エンディングで、「リボンの騎士」のテーマを弾いてくれたんですよね。ちょうど、コードがハマったので。「リボンの騎士」、大好きだったので、「うわぁー!」と思いました。

ROLLY 僕が、谷山浩子さんと演奏していると聞くと、みなさん「え?」って驚かれるんですよ。でもね、やってみてわかったことは、すごく手塚治虫風と言いますか、SFで乙女ちっくで、冒険があって、その世界観は非常に気持ち悪くて、ほかのアーティストの方には決してない世界なので。僕は、「あたしの恋人」という曲を聞いた時に、「これは羽根がふたつある飛行機で、たぶん恋人は曲芸飛行をやる人で、ヒューヒュー! アイラブユー! って、拍手喝采で」と思いました。それが、ある日のこと、ヒュー、スポーン! と落ちて、ぼーっと燃えて、死ねばよかったのにね……死ななかった。そして今、あたしの横にいて、汗びっしょりでうなされているわけです。手も足もなくて、目も鼻も、穴が開いてるだけで、四角い箱が置いてあって、首で……。

谷山 なんか、前よりも妄想が育ってます。

2018年猫森集会写真

ROLLY 『ジョニーは戦場へ行った』ですね。そういうふうに感じたんです。僕は、谷山さんのどの曲を聴いても、必ずそういうものが浮かびます。「あやつり人形」は、安部公房の『砂の女』のラストシーンに近いですね。あやつり人形は、悪い男に操られて生きているんですが、最後に男がいなくなって、逃げてもいいんです。もう操る紐もないのに、ひとりでずっと踊り続けている。『砂の女』のラストも、砂の底に閉じ込められた男が、逃げられるのに、もう少しここにいてみようと思ってしまう。60年代とか、子供の頃に見た映画の後味の悪さと、美しさと、現代の音楽に忘れ去られたロマンと、すべてがありますね。谷山浩子さんの歌には。

谷山 ありがとうございます。

ROLLY 谷山さんの発想の素晴らしさというのは、“よもやそんな変なことが起きるとは”というもので、「たんぽぽ食べて」もそうですが、すべての曲がそうですね。だから特別なんです。

谷山 言ってたもんね。ROLLYさんは、“LINEの既読がつかない”とか、そういう歌詞が嫌いだって(笑)。普通のラブソングみたいな歌詞だからって。

ROLLY はっはっは。

谷山 この間、海外ドラマの『glee/グリー』をちょっとだけ見たんですけど、歌がいっぱい出てくるドラマなんですが、“LINEの既読がつかない”的な歌詞ばっかりで。これ、わざとやってるのかな? と思うぐらい。

ROLLY 既読がつかないという現象に対して、もっと違う切り込み方ができるはずなんですけどね。でもね、違う切り込み方をすると、お客さんがついてこれない。

谷山 ごく一部の人しか、いいと思ってくれないのは確かですよね。

2018年猫森集会写真

ROLLY でも、作っている本人は、最高にイケてるものを作っているつもりなので、最高にイケてるわけです。谷山さんは本当に、日本を代表する特殊音楽家だと思います。そして、どんな曲を歌っても谷山さんの楽曲にしてしまう、その声。そして、それを盛り上げる石井AQさん。AQさんは、『サイボーグ009』に出てくる赤ちゃんの、001のようです。

谷山 似てるよね(笑)。私も思ったことがある。

ROLLY 漫画っぽいけど、全部が好きな感じ。僕は谷山さんのカプセル怪獣なんです。『ウルトラセブン』のモロボシダンのように、使いたい時だけひょいと出してくれたら、いつ何時でもやりますよと、そのように言っています。

谷山 私、ギターのことはわからないんですが、今までも、全然違うアプローチのほうに行く人はいたんです。ちょっと前衛っぽい感じとか。でもROLLYさんは、ポップの王道なんだけど、「この曲がこういうふうになるんだ!」と、すごく意外な演奏をしてくれて、さっきコーディネート力と言いましたけど、たぶんそれだと思います。だからね、うれしいんですよ、一緒にやっていて。

ROLLY 先日、谷山さんに、『浩子の宅録』というアルバムを送っていただいた時に、これにもいたずら書きをしようと思って……。

谷山 「春のさけび」という曲に、ギターと声がついて戻ってきたんです。何もお願いしていないのに。

ROLLY それをラジオ (YouTubeチャンネル「谷山浩子のSORAMIMIラジオ」)でかけてくださった結果、お客様が気に入ってくださって、その結果、今回久しぶりにこのふたりでのライブが実現したと。

谷山 え、そうなんですか?

ROLLY わからないです(笑)。でも僕はいつでもやりますよと。僕はとても、谷山さんのやってらっしゃることにシンパシーを感じるし、できる限り参加したいと、常にうずうずしていたという話です。

2018年猫森集会写真

――おふたりの、久々の共演ライブ「duo 20th Anniversary Live ROLLY & 谷山浩子」は、4月25日(木)、duo MUSIC EXCHANGE にて。タイトル通りに、duoの20周年記念公演の一環として、今回のライブが実現しました。

谷山 20周年おめでとうございます。長く続けていらして、素晴らしいと思います。これからも頑張ってください。呼んでください。

ROLLY duo MUSIC EXCHANGEを応援してくださるあなたへ。私、ROLLYも、ずいぶんとお世話になりました。20周年おめでとうございます。20年と言わず、30年、40年、50年、60年、そして100年を目指して、お互い頑張りましょう。

――最後に、ファンの方々へ、意気込みや抱負を、ぜひ。

谷山 ええと、まだなんにも決まってないです(笑)。

ROLLY もちろん、お客様が聴きたい曲もあるでしょうし、ローリング・ストーンズで言うところの「サティスファクション」のように、絶対やらなきゃいけない曲というのはあるわけですが。ここで「意気込みは?」と問われて、「今回は全曲新曲で」と言われたら、お客様も困りますよね。

谷山 それはちょっとね(笑)。まだ聴いたことのない人は、ROLLYさんのギターをぜひ聴いてほしいなと思います。私にとって、理想のギタリストです。

ROLLY ありがたいです。

谷山 アレンジは、けっこう変わると思います。ふたりだけなので。

ROLLY たとえば、(原曲が)ゴージャスなアレンジのものを、この研ぎ澄まされた2名だけでやる時に、物足りないんじゃないか? と、ついつい思いがちなんですが。頑張って分厚くしようと思わずに、シンプルなピアノとエレキギターでやった方が、物事の芯の部分が見えてくる感じもあるかもしれませんね。僕はギターシンセサイザーを取り付けてますんで、けっこう幅広くできるんですけど、幅広くしなくても、2名の歌声と、ピアノとギターだけでも十分に、物語の本質は伝わるんじゃないか? と思います。そうであってほしいなと思います。

2018年猫森集会写真

Text:宮本英夫 Live Photo:能美潤一郎

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<公演情報>
duo 20th Anniversary Live ROLLY & 谷山浩子

2024年4月25日(木) 18:15開場 / 19:00開演
会場:Shibuya duo MUSIC EXCHANGE
出演:ROLLY / 谷山浩子

料金:前売7,000円(税込) ※入場時ドリンク代が必要
★ぴあアプリ先行実施中。詳細はこちら

<アルバム情報>
ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団』

発売中

ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団』ジャケット

【収録曲】
01. ROLLY谷山浩子のからくり人形楽団
02. パラソル天動説
03. 公爵夫人の子守唄
04. ハートのジャックが有罪であることの証拠の歌
05. さよならDINO
06. 素晴らしき紅マグロの世界
07. ねむの花咲けばジャックせつない
08. Elfin
09. KARA-KURI-DOLLWendy Dewのありふれた失恋~
10. 第2の夢・骨の駅
11. 第5の夢・そっくり人形展覧会
12. ヤマハ発動機社歌
13. あたしの恋人
14. ねこの森には帰れない
15. 哀しみのからくり人形楽団
16. カズオくんと不思議なオルゴール

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『暴虐のからくり人形楽団』

発売中

『暴虐のからくり人形楽団』ジャケット

【収録曲】
01. ウミガメスープ
02. ハサミトギを追いかけて
03. 意味なしアリス
04. 人魚は歩けない
05. 手品師の心臓
06. 歯ぎしりがとまらない
07. KARA-KURI-BOY
08. 楽園のリンゴ売り
09. しっぽのきもち
10. からくり人形楽団ソレントへ
11. ある楽団員の回想
12. 王国
13. あやつり人形
14. キャンディー
15. 不眠の力

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関連リンク

谷山浩子 公式サイト:
https://www.taniyamahiroko.com/

ROLLY 公式サイト:
https://www.rollynet.com/

ROLLY & 谷山浩子