意味がわかると怖い4コマ
『意味がわかると怖い4コマ』(湖西晶/双葉社)

 怖くなるとわかっていても、ホラーを読みたくなる人はいるものだ。いきなり殺人鬼が飛び出してきてスプラッタはじまるような胸おどる展開のものから、じんわりねっとりと展開していく嫌らしさがたまらない話もあり、ホラーはやめられない。

『意味がわかると怖い4コマ』(湖西晶/双葉社)は、ホラーにミステリー要素も加わり、漫画サイトのPV数が185万を超えた人気シリーズだ。本書は、普通の何気ない日常を描いているようにみせかけている。しかし、考えながらじっくり読んで見てほしい。全てのコマの意味をよく考えると、ゾッとその怖さに気付くタイプのホラー短編だ。

意味がわかると怖い4コマ

 同音異義語は、同じ発音でも漢字で書くと違う意味を持つ言葉のことだ。例えば、“くも”は「雲」と「蜘蛛」、“にる”は「煮る」と「似る」だ。その意味の違いから起こる怖い話もある。いじめられっ子が用意した「いつか あとで かならずしぬ」と書かれた呪いのお札。その札は、いじめっ子にみつかってしまうが、彼らは「人間だれでもいつか死ぬからw」とバカにして笑い飛ばして終わる。しかし、その「いつか」とは、「いつなのかわからない未来」と「5日後」のどちらの「いつか」なのだろうか……。数日後が恐ろしい。

意味がわかると怖い4コマ

 この話は、健康法をテーマにしている。健康法とは身体を健康にするために行う食事や運動、習慣のことであるが、それが間違っていたらどうなるだろうか。しかし、全ての病気を防げるとしたら、何だって試してみたいと思う人もいるだろう。母親は、ゴミ袋1枚で全ての病気を防げると、娘にすすめている。ゴミ袋は、「水も空気も つまりバイ菌も通さないから 被って寝れば何の病気にもかからなくなる」とのことだ。それを娘は実践してしまう。結果は4コマ目で察してほしい。健康法は、テレビで紹介していたとしても、きちんと正しいか確認しないと、時に危ないということもあり得るようだ。母親はテレビの言うことを何も考えず信じた天然なのか、わざと害を加えようとしているのか、考えると恐ろしい。

意味がわかると怖い4コマ

 病院や美容院、レストランを利用する時、どうやって選ぶだろうか? スマホからレビューサイトでチェックし、高評価の場所を選ぶこともあるのではないだろうか。今回の話は、とある村おこしの依頼でレビュアーが名物料理を食べに行く。その料理に当たってしまい、吐き戻してけいれんを起こしてしまうが、悪評が立ってしまうことを恐れた村人たちは、とある病院に運ぼうとする。その病院の評価は良く、「先生がよく言うことを聞いてくれます!」「地域密着!」「ゆうずうがききます!」とあり、レビュアーは安心する。一方で、村にとってはレビュアーが生き残って悪評をバラまくと困るはず。地域密着型の病院は、誰にとって融通が利くのだろうか。レビュアーの運命やいかに……。

 ご紹介したように、少し立ち止まって内容を消化すると日常が非日常に変化する、その恐ろしさがジワジワとやってくる秀逸な話ばかりだ。2023年12月には新刊も発売されたばかりで、話数も多く読み応えもたっぷり。その恐怖を見逃すことがないように、じっくり堪能してほしい。本書は、4コマの次ページにレビューがあるため、より理解も深められる。寒い冬はホラーで背筋まで凍えるくらいに寒くなってみてはいかが。

文=山上乃々

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「ゴミ袋をかぶって眠れば病気にならない!」母が勧める謎の健康法の真意とは? 『意味がわかると怖い4コマ』