「TOKYO XR・メタバース&コンテンツビジネスワールド」が2024年1月26日から1月28日の3日間、東京ビックサイトで開催された。ビジネスに繋がる話からコンテンツの体験、人との出会いもできた多様性に溢れた3日間だった。本稿では、映像業界に関わりの深い出展ブースをピックアップして紹介していきたい。

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1日目の会場の様子

「バンジーVR」で絶叫体験。リアルなバンジージャンプをVRで再現

「配信」ゾーンの注目ブースから紹介しよう。

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展示会場でもっとも面白かったコンテンツは、ロジリシティブースの移動式VRアトラクション「バンジーVR」だ。SNSでも話題のアトラクションが無料体験できるとあって、ブースにはいつも行列ができていた。

体験してみると、想像以上にリアルで現実に近い没入感に驚いた。現実の場所を3Dのマッピングで再現しており、「3、2、1…バンジー!」の掛け声に合わせて飛び降りた瞬間、思わず「うわっ!」っと声が出てしまった。体験装置で体が垂直になるので、実際に重力が頭にかかる。映像と身体で体験できるのは面白い。

バンジーVRは、2021年に東京タワー、2022年にあべのハルカスでスタートして、現在も開催中。両会場とも土日祝日、展望台フロアで体験可能だ。さらに2023年より、PayPayドームドーム内でバンジージャンプをする「PayPayドームバンジーVR」がスタートした。平日および土日祝日に体験可能。地域のお祭りや企業の社内イベントに出張するサービスも行っているという。

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共同テレビが手掛けたカラオケサウンドバー「KARA×KARA」展示

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テレビ制作プロダクション最大手の共同テレビがカラオケを展示? 一瞬自分の目を疑った。説明を聞いてみると、共同テレビが開発したカラオケサウンドバーの展示で、名称は「KARA×KARA」。大手カラオケ会社「JOYSOUND」のカラオケボックスで使用されている音源を使用。共同テレビは音響技術者によるチューニングの部分で協力しているという。ブースでは実際に歌うことも可能で、多くの人が実際に体験をしていた。

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共同テレビジョンのブース。実際に歌うことが可能になっていた

A+plus、iPadをトラッカーとして使用したバーチャル合成を展示

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映像制作会社A+plusは、バーチャル合成とモーションセンサーを展示。その中でも注目したのはバーチャル合成の方で、カメラに乗せたiPadでトラッキングを実現するデモは興味深かった。iPadは、Z軸、Y軸、振りの情報を取得し、Unreal Engineに伝達する。iPadをトラッカーとして使用できるなんてびっくりだ。

カメラを操作すると、カメラの振りに合わせ背景CGイメージも追従する。カメラの前後の動きも対応可能だ。トラッカーはRedSpyやmo-sysなどが多く使われているが、価格は高額でセッティングに時間がかかる。同システムは、iPadをセットしてアプリを起動させるだけで使用可能。若干遅延はあるものの、金額的には「0」を2桁ぐらい減らしたコスト感でバーチャル合成を実現できるという。

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iPadでZ軸、Y軸、振りなどのカメラ情報を取得し、その情報でUnreal Engineで仮想空間を構築
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Ultimatteで実写とCG背景を合成

もう1つ、ブースの中にグリーンバックのバーチャルスタジオセットを使ったバーチャルキャンプ場のデモが行われていた。モニターの映像を見た第一印象は、「抜けがきれい」だ。無限の背景もちょっとボケた感じがよく、違和感を感じない。CG合成には、Blackmagic Ultimatteを使用しているという。リアルタイムに昼間、夕方に変更が可能なのも特徴だ。夕方に変更すると、背景と同時に人に当たる光の色味も変わる。この時間の演出はUnreal Engineで実現している。3台のカメラは切り替えが可能で、カメラ位置と背景に矛盾がないのも特徴だ。

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スタジオの様子
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CG背景と実写を合成した映像。朝7時の時間帯を再現
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夕方の時間帯を再現

StudioTech、Aximmetryを使ったバーチャルスタジオの構築を展示

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仮想スタジオ・3Dグラフィックスソフトウェア「Aximmetry」を取り扱うStudioTechも出展していた。ブース内にバーチャルスタジオを構築し、AximmetryとPTZカメラを組み合わせた使い方を紹介。カメラ映像とCG空間を違和感なく合成し、カメラ映像で撮った製品の大きさを変えたり、移動できる様子を実演していた。

すでに車の部品の実写と車体のCGを合成して、「この部品はこの箇所に使われています」といった開設映像に使われているという。Aximmetryは「アプリケーションのみ」と「ターンキーシステム」の2種類で提供中とのことだ。

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左のモニターは合成後の様子。右はAximmetryの編集画面

プロ機材ドットコム、照明やアクセサリーの新製品を展示

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プロ機材ドットコムは、モデルの撮影会や機材の展示を行っていた。ブースのLEDライトを組み合わせて使ってモデル撮影が可能で、照明の効果が体験できるようになっていた。

展示機材の中でももっとも興味を引いたのは、カリフォルニアに拠点を置く「Aparo」の照明だ。エアソフトボックスを特徴とする照明ブランドで、とても柔らかい光を実現していた。

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台湾のアクセサリーブランド「Skier 」のLED照明も個性的だ。160wのLED「SUNRAY スポット160w LED」は筐体がコンパクトで、3灯を1ケースに収めたセットも発売中とのことだ。

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SUNRAY スポット160w LED
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1ケースにSUNRAY スポット160w LED3灯とスタンドを1ケースにまとめたセットも販売中

もう1つ気になったのは、テーブルやデスクに挟み込めて場所を取らない「テーブルトップスタンド」だ。三脚みたいに足が広がらないので場所もとらない。これまで家で配信などを行う場合に「場所をとらないスタンドはないのか?」と悩むことがあったが、これなら解消してくれそうだ。

トップ部に16mmオスダボがついたポールに挟み込む雲台が付属しており、照明をつけて使うことも可能。雲台は32cmのポール上で上下にスライドして動かすことができる。耐荷重1.5kgの雲台なので、重いレンズをつけた一眼カメラの固定にも対応しそうだ。

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テーブル中央のスタンドに注目。デスクに挟むことが可能で、場所を取らない。小型のPTZカメラならば、搭載可能だ

東京国際工科専門職大学、バーチャルとリアルの融合を展示

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東京国際工科専門職大学の展示は、企業やプロダクションとの共同研究や共同開発を展示。学生の発表に思えないほど高度な技術を使った内容を紹介していた。メインステージは、「XRダンスパフォーマンス」「カフェライブトークショー」「ステージAIアバター」を企画。さらにミニ展示として、AR、バーチャルプロダクション、ホログラムなど盛りだくさんの内容だった。

取材時は、バーチャルプロダクション使ったカフェライブトークショーが行われていた。ステージでは、ボリュメトリックビデオを使ったステージも予定していたが、トラブル発生とのことで、残念ながら観ることはできなかった。

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東京国際工科専門職大学ブースはミニ展示も充実しており、その中でも車の模型はリアルで背景がバーチャルの「XRホログラム」の展示はひときわ注目だった。実際にミニカーが走っているように見えて面白かった。

オブジェクトはリアルで背景がバーチャルの逆転の発想で実現している。木箱の中にはターンテーブルに乗ったミニカーがあり、モーターの回転値を算出。その数値のデータをUnreal Engineに受け渡しし、ミニカーの前後の映像をハーフミラーにリアルタイムに表示する仕組みで実現していた。

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東京国際工科専門職大学のミニ展示「XRホログラム」。木箱はハーフミラーを搭載し、天井にモニターを搭載

HIKKY、バーチャル空間を作れる「My Vket」を展示

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自分の部屋を設定して、家具などを配置可能だ

HIKKYは、スマートフォンやPCで簡単にバーチャル空間に入れるメタバースサービス「My Vket」を展示していた。My Vketを簡単に言うとVRのホームページが作れるサービスだ。VR空間にポスターを貼ってその場所にURLを仕込み、スマホのSNSにポストすれば即、空間に入ることが可能。アプリの追加インストールなしですぐに飛べるので、SNSとの相性の良さが特徴としている。自分の部屋を設定可能で家具を配置したり、壁に自分の気に入った絵や写真を飾ることも可能。説明を聞いていると、自分でも部屋を開設して遊びたいと思った。さらに「Vket Cloud」を使えばUnityを使って展示会場やワールドを再現することも可能としている。

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「リンク埋め込み機能」を使えばSNSから自分のRoomに飾った作品や家具に飛ぶことが可能だ

京王グループ、VR映像のバーチャルツアーを展示。京王電鉄若葉台工場内の見学

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VRゴーグルをかけてツアーを体験

旅行業の展示だ。外出に不安のあるご高齢の方や福祉施設の中で、バーチャルな旅行をVRを使って360°映像のコンテンツを楽しめるVRバーチャルツアーを展示していた。普段は観られない京王電鉄若葉台工場内の見学や運転士の目線での乗車体験や高尾山VRツアー、サンリオピューロランドVRツアー、KAWAIIスポットVRツアーなどを施設で楽しむことができる。車両基地ツアーを体験させてもらったが、車両列車が頭の上を走っていくシーンや運転席からのアングルなど、普段体験できない位置から電車を楽しめる貴重な内容となっていた。

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京王電鉄若葉台工場内を見学
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運転席の視点から洗車のシーンを体験

パロニム、ライブ配信内のアイテムにタッチすると商品情報を表示したり購入したりできる「Tig」

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動画内にリンク先の導線を設計可能

インタラクティブ動画テクノロジーを開発・提供するパロニムは、同社サービス「Tig」を展示。「Tig」は動画内の気になる部分にさわると情報にアクセスできるというサービスだ。

見せて頂いたのは、スマートフォンを使ったライブ配信中の様子。動画にトリガーとなるリンクが出てきて、感覚的にタップが可能。ライブ配信中にアプリのインストールやアカウント登録の手間なしに商品購入の訴求ができるところは、優れたサービスだと思った。また、ライブ配信後のアーカイブをECサイトで掲載することで、商品だけでなく配信者や店舗に興味のあるユーザーの来訪が見込めるという。今、ライブコマースやビデオコマースを始めたいという企業に最有力なサービスなのではないだろうか。

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動画から商品ページに飛んだところ。導線を設定することが可能だ

TREE Digital Studio、アース製薬の体験型VRコンテンツ「Guardian of The Earth VR」を展示

TOKYO XR・メタバース&コンテンツビジネスワールドブースレポート説明画像TREE Digital Studioが手掛けたVRゲームコンテンツを展示

TREE Digital Studioといえば、映像制作でお馴染みのプロダクションだが、ARやVRを活用した企業のプロモーションや商業用のデジタルコンテンツの企画や制作も手掛けている。今回の展示会では、クライアント向けに開発したアース製薬株式会社のオリジナルの「Guardian of The Earth VR」展示していた。体が小さくなってしまった世界で襲いかかる害虫をひたすら害虫用の武器を使って撃退するというVRゲームコンテンツだ。

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迫りくる害虫を倒して無事に生還を目指すシューティングアドベンチャーゲーム

ローランド、ビデオキャプチャー付きオーディオミキサー「BRIDGE CAST X」初公開

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同じ東京ビックサイト南ホールで行われていた「東京eスポーツフェスタ2024」にローランドが出展。2024年1月23日に発表されたビデオキャプチャー付きオーディオミキサー「BRIDGE CAST X」の実機を初公開していた。

BRIDGE CAST Xの特徴は、配信をシンプルにできることだ。これまでは音声用の出力デバイスとビデオキャプチャーデバイスを個別でつなぐことが多かったが、そのあたりを1つにまとめてシンプルなコンテンツ制作の実現を特徴としている。「音が収録されていなかった」というトラブルも減りそうだ。また、新たにHDMIから入力された5.1チャンネルや7.1チャンネルのサウンドをバーチャルサラウンドとして楽しめる点も特徴としている。

「TOKYO XR・メタバース&コンテンツビジネスワールド」ブースレポート。会場を盛り上げたソリューションやサービスを紹介[TOKYO XR・メタバース&コンテンツビジネスワールド]