映画『カラーパープル』が2月9日(金) から公開になる。本作は全世界で読み継がれている名作小説が原作で過去に映画化されたこともあるが、2024年の“現在”を生きる観客に向けたメッセージと情熱がギッシリとつまった作品になった。

物語の舞台は20世紀の初頭から中頃だが、本作が描く題材は極めて現代的で、その視線はいまと“未来”に向けられている。それまでの価値観や世界のあり方が大きく変わりつつあるいまだからこそ響く、未来への一歩を踏み出したくなる作品と言えるだろう。

主人公セリーはアメリカのジョージア州で暮らす穏やかな少女だ。彼女は虐待を繰り返す父に怯え、望まない結婚をした相手に怯え、唯一心を許せる妹と離ればなれになる。しかし、彼女はそんな状況を“仕方ない”と受け入れている。

昔ながらの価値観に縛られ、暴力にさらされているセリーの人生は苦難の連続だ。しかし、彼女は、相手が男であろうと物怖じしないパワフルな女性ソフィアや、自らの歌声で富と名声を手にしたシュグらと出会い、さまざまな経験をする中で自らの手で自由を掴もうとする。

ポイントは、セリーが現在の環境から“逃げ出す”のではなく、いま自分が暮らしている“この場所”で自由を見つけ出そうとする姿が描かれることだ。彼女は修行したり、特別な経験を積んで成長するのではなく、すでに最初から持っていた気持ちや才能を“掘り起こして”自由を手に入れていく。

そもそも彼女は何も悪いことをしていない。誠実に生きてきた。しかし、女性だというだけで、黒人だというだけで虐げられてきた。でも、そんな時代はもう終わろうとしている。自由を手に入れるために脱出する必要はない。ここにいればいい。変化すべきはセリーではなく社会や周囲だからだ。

確かにセリーの人生は過酷なことの連続だ。それでも本作は暗い物語として描かれない。セリーの前には多くの仲間や友人や愛すべき家族が現れ、彼女は自由を求めて一歩一歩、着実に進んでいく。そしてセリーと仲間たちの心の奥にある感情がソウルフルな歌唱と、スクリーンいっぱいに広がる華麗なミュージカルシーンによって表現される。

セリーが人生の中で出会った仲間たちのように、映画『カラーパープル』は観客が映画館で出会う“最高の仲間”になるだろう。そこで描かれるドラマと、鳴り響く歌声はきっと観る者を勇気づける。

映画『カラーパープル』はいまこそ観たい、この先も新たな観客と出会い続けるであろう傑作だ。

『カラーパープル』

2月9日(金) 公開

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