嫁姑がうまくいかないのは、姑にとっては“息子”を、嫁にとっては“夫”を自分のものにしたいという嫉妬心があるからなのかもしれません。


 ここにも、嫁姑問題の悩みを抱えている女性が一人。都内在住の榊原真里さん(仮名・35歳)は、義実家の青森へ帰省したときの話を聞かせてくれました。


◆結婚後初めての帰省で



※写真はイメージです(以下、同じ)



 真里さんは結婚7年目の主婦。夫を育ててくれた義両親とは、できるだけ仲良くしたいと新婚当初から帰省の際は気を遣っていたそう。


「結婚してはじめての帰省では、義母に気に入られたくてなんでも手伝っていました。例えば、買い物や食器洗い、お風呂も私が洗って一番最後に入浴するなど、私が気付く範囲で、徹底的に良い嫁をやってきたつもりでした」


 青森への帰省は年末年始とお盆の年2回。事前に都内の有名なお菓子を用意し、近所への手土産も完璧に用意、義母に何か言われる前に動くよう意識していたといいます。


◆何でもやる嫁が任されたこと
 そのうち、義母から任されることも増えていったそう。


「帰省する度に、義母から『真里ちゃん、これお願い』と頼まれることが増えていきました。その中のひとつに、実家で飼っている3匹の犬の散歩があって……」


 夫の実家では、庭でチワワを3匹飼っています。その3匹のチワワを朝、昼、夕1日3回、散歩をする担当になった真里さん。


 実は、犬アレルギーがあって、犬が苦手なんだそう。


「昔から犬や猫は苦手ですね。突然吠えると怖いし、室内にペットがいると鼻水とくしゃみが止まらなくなるんです。目もかぶれやすいので、帰省中は抗アレルギー薬を飲んでいます」


 それでも、義母からのお願いには全力で応えようと引き受けた真里さん。3度目の帰省でお願いされた犬の散歩は、帰省中の真里さんの日課になったそうです。


◆出産後も続く1日3回の犬の散歩



 その後、結婚4年目で長男が誕生します。


「息子が誕生して初めての帰省の時、息子は生後3ヶ月。ようやく首が据わって、私も少しずつ動き始めた頃でした。長男の誕生を、義両親はとても喜んでくれて抱っこしたりあやしたりしてくれて……、ほっとしたのを覚えています」


 ところが、初孫を抱きながら義母が真里さんに言ったのは「真里さん、そろそろ時間よ」でした。義母は真里さんに、犬の散歩の時間を伝えたそう。


「妊婦での帰省の時も、1日3回の犬の散歩は行っていました。『いい運動になるからね』と義母には言われていたんです。そして、出産して3ヶ月の帰省でも『そろそろ動かなくちゃね、いい運動になるからね』と義母に言われました」


◆息子も連れて散歩に行くように
 これまで義母に気に入られたくてなんでもやってきた真里さんでしたが、産後初めての帰省で犬の散歩をするのはつらかったといいます。


「息子が2歳になると、帰省中の犬の散歩は私と息子が一緒に行くことになりました。息子は外が好きなので、喜んでついてきます。ただ、犬3匹と息子を連れて行くとなると結構大変なんですよね」


 イヤイヤ期ですぐに座り込む息子をあやしながら、犬3匹のリードを握っている真里さんは犬たちの安全も見ないといけません。そこで、犬を1匹ずつ散歩に連れて行こうと実家に戻ったそうです。


◆偶然、聞いてしまった真実とは



「玄関に入ると、居間から義母の声がしました。『あーほっとする! あの子が家にいるとうるさくて酸欠になりそうよ』って。最初何のことか分からずにいましたが、あ、私の事かと理解して気分が落ちました」


 その後の義母の言葉も、真里さんの愚痴ばかりだったようで……。


「しかも、『最近あの子たちは散歩してないのよ。チワワなんて少し庭で遊べば十分に運動できるからね。でも、帰省中だけはあなたとゆっくり話すチャンスが欲しくてね』なんて夫に甘えるように話していました」


◆犬の散歩は自分を夫から引き離す作戦だった
 犬の散歩は大して必要でなくて、自分を夫から引き離す作戦だったのかと胸が締め付けらたという真里さん。


「でもね、自分が息子を産んだ今、いつか息子と2人で話す時間がなくなると思うと義母の気持ちも少しはわかるんです」


 そう言って微笑んだ真里さん。義母が自分のことをわかってくれないと嘆く嫁が多い中、義母の気持ちに寄り添える真里さんは寛容な心の持ち主だと感じました。


<取材・文/maki>



※写真はイメージです