弁護士ドットコム株式会社が2023年に行ったアンケート調査によると、煽り運転を行った加害者の約6割は「後悔していない」と回答している。巻き込まれる側からすると、たまったものではないが、そういった人々が存在する以上は常に危険を察知しつつ運転する必要があるだろう。

 永作瞳さん(仮名・29歳)は、近所に出現した危険運転ドライバーを地域住民総出で排除した経験を持っている。

◆タワマン建設現場で迷惑トラックが続出

「自宅周辺は、都心への通勤に便利なエリアで、ここ数年新築のタワーマンションが多く作られるようになりました。トラックや工事車両の出入りが激しくなって、地元でも困っていたんです。とはいえ、マンションを作っている会社にクレームを入れても取り合ってもらえないし、仕方がないと諦めていました」

 ただ、工事業者との対決を余儀なくされることになる。「子どもたちの通学時間にトラックがよく通り、あまりにも危険だった」ことに起因する。

「子どもが危険な目に逢っていることに加えて、私自身がトラックにぶつかりそうになったことで堪忍袋の緒が切れてしまい、管理する不動産業者に連絡したんです。でも、工事担当者はノラリクラリとクレームをかわしているような姿勢で、改善は全く行われませんでした

◆母親も“被害者”の1人だった

 そんな時、近所に住んでいる母から聞いた話がきっかけで、永作さんは完全にブチ切れモードに突入した。

「高齢の母は安全運転を心がけています。私も乗せてもらう時に遅いなと感じることもありますが、それでも下手な運転をしているわけではありません。しかし、最近良くトラックにあおられると言うんです。後ろからピッタリとつけてきて、威嚇するような運転をしてくるとか。心配になって、急遽ドライブレコーダーを買って母の車に設置しました。その映像を確認すると、たしかに煽り運転をしているトラックが。『怖い』と叫んでいる母の声も入っていて、かわいそうで涙が出てきました

◆抗議に行くも、数か月間放置され…

 永作さんは夫にも相談して夫婦で対策に取り組んだそうです。

レコーダーの映像にナンバーが映っていたので、旦那と平日に休みを取って近所のマンションの工事現場に出入りしているトラックをチェックしたんです。そうしたら、ドンピシャで該当するトラックの姿が。そのトラックは狭い道路もスピードを出して走り、前に車がいるとぴったり車間を縮めて煽り運転していたんです。どうも、被害者は母だけではなかったようで。工事現場に乗り込んで事情を説明したのですが、『確認次第、返答します』と言われたまま数か月間放置され……。警察にも相談したのですが、注意やパトロールを強化すると言ったきり状況が改善されることがありませんでした

 その後も、住宅地で危険な運転を繰り返すトラックが後を絶たなかった。下手すれば、子どもたちが巻き込まれる危険もあるため、永作さんは自治会長に相談して騒動の解決に乗り出すことに。

自治会の人たちに現状を報告すると、『煽り運転された』という人が続出。力を合わせて証拠を集めようということになり、みんなでドライブレコーダーの映像を共有しあいました。なかには、後ろからクラクションを鳴らされて威嚇されているシニアドライバーも。この映像を、自治会として警察に提出してもらい改善に協力するように正式に要請すると、さすがに無視できなかったのか、時間を決めてしっかりと監視するということになったんです

◆警察の目の前で迷惑運転をした結果…

 傍若無人な運転で、地域の住民を悩ませていた工事現場のトラックドライバー。永作さんがすでにクレームを入れていたのに、共有されていないのか警察が見張っている時にも、懲りずに危険運転をしたそうです。

警察が監視しているのにもかかわらず、例のごとく車間距離を極端に詰めるトラックが現れました。警察も目視で確認し、我々もしっかりとスマホで撮影して言い逃れできなくしました。すぐにパトカーが追いかけて、そのドライバーは事情聴取を受けることに。われわれからの告発もあったので、警察は厳しく『車間距離の不保持』として取り締まりました。さらに、その上で自治会からクレームが入っているということも、管理会社に通達されたと自治会長に連絡が来たそうです」

 ここにきてようやく不動産事業者、工事業者との話し合いが持たれたそうです。

「工事現場の責任者は、ノルマがきつくて急いで運転した結果、危険なことになってしまった』と釈明していました。ただ、そんなのは理由にならないですし、また同じようなことがあったら、自治会として民事で訴えると通告しました。次の日からは、パッタリとトラックによる危険な運転はなくなりました。一件落着ではありますが、そもそもはじめからきちんと安全対策やスタッフの管理をしろよと思いましたね」

 自宅近くでの出来事だっただけに、その場を我慢すれば収まるというわけにもいかない。日常生活を守るためにも、毅然とした態度で立ち向かう姿勢が必要不可欠なのだろう。

<TEXT/高橋マナブ>

【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている

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