第96回アカデミー賞では作品賞を含む11部門にノミネートを果たした「哀れなるものたち」(公開中)では、登場人物たちの存在感を一層際立たせる華麗で大胆な衣裳が注目されている。このほど、アカデミー賞ノミネートデザイナーの手腕が光る特別映像(https://youtu.be/avZvuojXDyM)が公開された。

「女王陛下のお気に入り」のエマ・ストーンとヨルゴス・ランティモス監督が再タッグを組んだ本作は、"生まれたての女性"という前代未聞の設定を持つベラ(ストーン)の空前絶後の冒険を描いたもの。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られて身を投じたベラ。ヨーロッパ横断の旅は激動の果てにどんな結末をもたらすのか――。第80回ベネチア国際映画祭では金獅子賞、第81回ゴールデングローブ賞では作品賞(ミュージカル/コメディ部門)と主演女優賞(エマ・ストーン)の2部門で受賞している。

本作で衣裳デザイナーを務めたのは、今期のアカデミー賞にもノミネートを果たしたホリー・ワディントン。映像では、ストーンが撮影中の衣裳合わせを振り返りながら「ホリー(・ワディントン)の案はどれもすばらしい」と話し、ランティモス監督は「いわゆる歴史映画ではないので通常では見られない華麗な衣裳を使った」と衣裳コンセプトのこだわりを明かしている。

ランティモス監督の言葉を裏付けるように映し出されるのは、マンゴーイエローと淡いホワイトで統一されたオリジナリティ溢れる2着のドレス。それらのドレスは、ともに肩に大胆なリボンが施されている。

ワディントンが「この時代のドレスは肩を膨らませることで、女性らしい線を強調した」と説明するように、彼女は時代背景を組み込みつつも、各キャラクターに合わせて、他にはない唯一無二のコスチュームを作り上げていったようだ。

また、男性キャラクターの衣裳もこだわり尽くされており、色男の弁護士・ダンカンを演じたマーク・ラファロは「ヴィクトリア朝時代の男は派手好きだ。衣裳合わせは15回ほど。全部オーダーメイドだ」と洗練されたスタイリングの数々にご満悦な様子。最後にストーンは「彼女のアイデアはどれも挑戦しがいがあり、考え抜かれていて、見事に作り込まれてるわ」とワディントンのデザイナーとしての手腕に賛辞をおくっている。

ワディントンは衣裳にその時々のベラの知性、社会的立場なども反映したようで、ロンドンのバクスター家では、ヴィクトリア朝風のブラウスを着ていても、昼には子どものようにその大半を脱いでしまっているというアイデアが取り入れられた。

一方、ダンカンと共に乗り込んだ豪華客船では、ベラはアレクサンドリアの貧しいスラムの住人たちを目にすることになる。この時、彼女は上流階級に扮しているため、作中で最もフォーマルな衣裳を着ている。このようにベラの衣裳にはすべて意味があるのだ。ストーンは「ホリーが使用したカラーパレットや素材は、ベラが経験したことや、どのように成長しているかにインスピレーションを得たものです」と補足している。

衣装デザインを担当したホリー・ワディントンの“仕事”に注目! (C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.