この春、放送が始まるテレビアニメ「鬼滅の刃」待望の新シリーズ「柱稽古編」に先立ち、ワールドツアー上映『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』が本日より劇場公開される。140以上の国と地域での公開となる本作は、刀鍛冶の里での竈門炭治郎(声:花江夏樹)と上弦の肆・半天狗(声:古川登志夫)との激闘の決着、禰豆子(声:鬼頭明里)の太陽克服を描いた「刀鍛冶の里編」第十一話と、来たる鬼舞辻無惨(声:関俊彦)との決戦に向けた“柱稽古”の開幕を描く「柱稽古編」1時間スペシャルの第一話を劇場鑑賞用にまとめたものだ。

【写真を見る】迫力満点!新たに手にした刀で半天狗の頸を斬ることに成功した炭治郎

すでに上弦の陸、伍、肆を倒した鬼殺隊の隊士たち。“鬼の始祖”にして、頂点である鬼舞辻無惨との戦いが近づき、物語はますますヒートアップしている。数々の熾烈な戦いを経験した炭治郎も、新たな刀を手にし、目覚ましい戦闘能力を開花させてきた。そこで本コラムでは、これまでの物語を振り返りながら、今後物語の“カギ”となりそうな3つのキーワードを紹介する。

炭治郎の新たな日輪刀と受け継がれる煉獄杏寿郎の遺志

刀鍛冶の里編」で、刃こぼれしてしまった刀に代わる新たな日輪刀を受け取るため、刀鍛冶の里へと向かった炭治郎。そこで出会ったのが、300年以上前に作られたという戦闘訓練用の絡繰人形、縁壱零式の中に収められていた戦国の世を生きた剣士の刀だ。これは炭治郎が訓練中、渾身の一撃を振るって人形の頸を斬った際に見つけたものだが、刀を抜いてみたところ錆だらけ。それを刀鍛冶の鋼鐵塚(声:浪川大輔)が、代々伝わる日輪刀研磨術で磨き上げてくれることになる。

エピソードの終盤、炭治郎はこの刀を使って、半天狗本体の非常に硬い頸を斬り落とすことに成功する。鋼鐵塚によると、本来刀の研磨には3日3晩かかり、この時点ではまだ第一段階までしか研いでいない“未完成”の状態だったにもかかわらず、だ。もともと戦国時代の鉄はとても質がよいとのこと。半天狗との戦いのあと、一級の腕を持つ鋼鐵塚が納得するまで研ぎ上げた刀がどれだけの威力を放つのか、期待は高まるばかりだ。刀を研いでいる最中、鋼鐵塚に深い感銘を与えた、刀身に刻まれる“一文字”にも注目したい。

そしてもう1つ、炭治郎の新しい日輪刀で忘れてはならないのが、無限列車での激闘の果て、200名の乗客と後進の炭治郎たちを守り抜き、誇り高く散っていった炎柱・煉獄杏寿郎(声:日野聡)の日輪刀の鍔だ。煉獄の弟である千寿郎(声:榎木淳弥)から「受け取ってほしい」と、炎の形をした鍔を形見として託された炭治郎は、これを新しい刀に付けてもらうために刀鍛冶の里に持参していた。「きっとあなたを守ってくれます」との千寿郎の言葉どおり、亡き煉獄の鍔は、刀につける前からパワーを発揮。里の少年、小鉄(声:村瀬歩)が上弦の伍・玉壺(声:鳥海浩輔)が生みだす化物に鳩尾を刺された際、腹部に入れていた鍔が防具となって、彼の命を救ってくれたのだ。煉獄の熱い想いが形を変えて受け継がれていく様に胸が熱くなる。

■太陽を克服した禰豆子

鬼を倒すごとに成長を遂げていく炭治郎たちと同じように、鬼と化した禰豆子もまた、数々の戦いを通して、様々な特殊能力を開花させてきた。まず、下弦の伍・累(声:内山昂輝)との戦闘中に会得したのが、自身の血を燃やし、爆ぜさせ、鬼本体と鬼が生みだしたものを燃やす血鬼術”爆血”。遊郭での戦いでは、興奮状態によって鬼化が進み、額には鬼の象徴ともいえる角も現れて、上弦の陸の妹、堕姫(声:沢城みゆき)を上回るほどの戦闘力と回復再生速度を見せつけた。

爆血には、その応用として、解毒薬が効かない鬼の毒による負傷者を治癒する力があるが、「刀鍛冶の里編」ではさらなる新たな力も判明。炭治郎半天狗の分裂体と戦っていた時、禰豆子炭治郎の刀を素手でギュッとつかみ、滴り落ちる爆血を刃に纏わせることで、刃を燃やすという驚きの行動に出る。燃えることで刀の温度が上がり、赤色へと変色した“爆血刀”は、血鬼術の威力が加わって、攻撃力が格段にアップ。赤く染まった刀を目にした炭治郎の脳裏には、耳飾りの剣士が持つ漆黒の刀が戦う時だけ赤くなっていた…という先祖の記憶が甦る。

さらに、炭治郎半天狗を追い詰めるなか、夜が明けて朝日が昇り、日の光の下、禰豆子が戦いを終えたばかりの兄と対面する。日光を浴びた当初は、ジュウジュウと身体が焼ける音を出し、煙が立ち上っていた禰豆子だったが、最終的には塵になることなく、炭治郎に歩み寄り、「お、お、おはよう」と鬼になって以来、初めての言葉まで発したのだ。禰豆子の血の成分を研究し、その秘めたパワーに驚いた珠世(声:坂本真綾)も予測していた“太陽の光の克服”が現実になった瞬間だった。

そもそも鬼を倒す方法は、”太陽光を浴びせる”、”日輪刀で頸を斬る”の2つのみ。上弦の鬼たちにも脅威を与える存在として君臨し、事実上の弱点といえば太陽の光だけだった無惨にとって、太陽の克服は千年以上にわたる悲願だ。

日光に当たっても死なない身体になるため、無惨は太陽に負けない特殊体質の者と、日の光を克服できる秘薬“青い彼岸花”を探すことを最優先としてきた。禰豆子が太陽を克服したことを知ったいま、もはや青い彼岸花を探したり、むやみに鬼を増やしたりする必要はなく、ただ禰豆子を捕らえ、喰らい、体内に取り込むだけでいい。禰豆子の太陽の克服は、喜ばしい出来事であると同時に、彼女が無惨のターゲットになってしまったことを示している。

■痣の発現

刀鍛冶の里編」で印象的だったのが、霞柱の時透無一郎(声:河西健吾)と恋柱、甘露寺蜜璃(声:花澤香菜)にそれぞれ発現した不思議な痣。炭治郎の額にも痣があるが、これは生まれつきのものではなく、かつて弟が火鉢を倒した際、弟を庇ってできた火傷の痕。最初は薄い色だったこの傷痕は、最終選別でのケガのあとに濃い色に変わり、その後、上弦の陸・妓夫太郎(声:逢坂良太)の頸を斬ろうと渾身の力を出した際、くっきりとした炎のような形の痣へと一時的な変化を見せた。

記憶を失っていた無一郎が玉壺との戦闘中、亡き双子の兄が死ぬ間際に残した「無一郎の無は“無限”の“無”。お前は自分ではない誰かのために無限の力を出せる、選ばれた人間なんだ」という言葉を思い出し、全身に力がみなぎった時に、額と両頬に痣を出現させている。このあとの無一郎は、深手を負っているとは思えないほど、急激に強さを増し、玉壺を一人の力で打ち倒す。

蜜璃も、半天狗の分裂体である憎珀天(声:山寺宏一)との戦いで、自身のパワーを高めるため、心拍数を上げて、血の巡りを速くするように努めた結果、首もとに花のような独特な紋様の痣を発現させる。炭治郎無一郎、蜜璃の3人の痣は、どれも上弦の鬼との戦いで追い詰められた末、想像を超える戦闘能力を発揮した時に浮かび上がっているのが特徴だ。

思い返せば、これまで上弦の鬼たちが無惨の細胞の記憶として見ていた耳飾りの剣士の額にも、炭治郎と同じような痣があった。果たして剣士と炭治郎たちの痣にはどのような関係があるのか?炭治郎に遺伝する“先祖の記憶”として話に出てきた、戦う時に赤く変化する刀、“赫刀”とはいったいどんなものなのか?そして、無惨にねらわれる禰豆子の運命は―?ここで紹介したキーワードに注目しながら、これから始まる炭治郎たちの物語の新章を楽しんでほしい。

禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正式表記

煉獄杏寿郎の「煉」の漢字は「火+東」が正式表記

※鬼舞辻の「辻」の部首は「いってんしんにょう」が正式表記

文/石塚圭子

新たな刀を手にし、煉獄杏寿郎の遺志も受け継いだ炭治郎/[c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable